文=丸山素行 写真=野口岳彦

指揮官ラマス「譲二はスマートだった」

ニック・ファジーカスと八村塁の2人で49得点を挙げ、アジア最強のオーストラリアを相手に世紀のアップセットを成し遂げた男子日本代表。この勝利は、2人が合流した韓国との強化試合第1戦を思い起こさせた。その時と同様に竹内譲次の存在感が強烈だったからだ。

昨日の試合、竹内は2人に次ぐ8得点を記録した。いずれもファジーカスや八村が止められ、オフェンスが停滞した時にもぎ取った価値のある得点だ。

「むこうが高い位置で当たってきて、ハーフコートでどっしり構えられたらサイズの差があるので、オールコートを使って流れの中で攻めるのが一番効いていました。その中で自分も速攻崩れの段階で1対1で行けるなら、そこは積極的に狙っていこうと試合前から思っていた」と、竹内はアグレッシブなプレーを心掛けていたという。

指揮官のフリオ・ラマスも「譲次はとても良かった」と絶賛した。「ディフェンスではビッグマンを相手にコンテストして抑え、ボックスアウトをしてリバウンドした。塁が来たことで以前よりスペースができ、そのスペースを使ってアタックした。譲次はスマートだった」

互角以上に渡り合ったインサイドの攻防

ラマスコーチが言ったように、竹内の攻守における貢献度は高く、アジア最強のサイズとフィジカルを誇るオーストラリアのインサイド陣を相手に引けを取らなかった。「ゾーンをしっかり練習してきて、それがある程度ハマったのかなと思います」と竹内は謙遜するが、八村とファジーカスのどちらかががいない時間帯でも勝負ができたのは竹内がいたから。

竹内の出来があまりに良く、18分半のプレータイムを得たことで、太田敦也と永吉佑也が割を食う形となり出場機会がなかったが、オーストラリア相手に苦戦が予想された5番4番のポジションを3人で回せたことはチームとしては大きな収穫だ。

日本にとっては『永遠の課題』であるリバウンドも大幅に改善された。「何もないところで跳ばれたらそれは無理なので、接触があるとこで跳ばせば半分くらいは抑えられると思いました。ゾーンの範囲の中で自分からコンタクトをするようにすることを心掛けました」

その結果、Window1のホームでのオーストラリア戦では21-48と大きく差をつけられたリバウンドで、昨日の試合では44-50とほぼ互角に持ち込んだ。「リバウンドの数はWindow1も去年のアジアカップでも大敗していたので。もちろんニックと塁が入って彼ら2人の力もありますけど、しっかりと意識を持ってコートに出せのが良かったと思います」

「声援がルーズボール、リバウンドを後押ししてくれた」

竹内はオーストラリアを相手にしても、臆さず自信を持ってプレーしていた。「この1カ月、練習中から塁とマッチアップしています。もちろんやられますが、年齢に関係なくそこで負けたくないという気持ちがあって、そこで自分が一つ成長できたかなと思います」と八村との練習が起爆剤になっていると明かした。

試合の最終盤、リバウンドを拾った篠山竜青がそのまま持ち込んだレイアップと、比江島慎のリバウンドから八村のダンクにつなげたプレーが勝負を決定づけた。「竜青のルーズボールだったり、本当に欲しい2点がリバウンドから形になりました。周りが頑張ってきた結果、神様が味方してくれたと思います」と、最後まで分からなかった試合を振り返る。

そして、それを生んだのは会場の大声援だったと竹内は言う。「最後、あの声援が篠山のルーズボール、比江島のリバウンドを後押ししてくれたと思います。過去にも何回かアップセットはあったと思うんですけれど、今日は一番大きいものかもしれません。本当に自分たちの持てる力を全部出せました」

日本のゴール下を10年以上守ってきた竹内にとっても、昨夜は最上の勝利となった。文字通り『チーム一丸』ではなく、『日本一丸』でつかんだ勝利だった。