約9カ月ぶりとなる実戦復帰を果たす
琉球ゴールデンキングスはこのオフに、非凡なオフェンス能力と高い身体能力を備えたウイングの今村佳太、チームへの合流が遅れているが元フランス代表のビッグマンであるキム・ティリなどを獲得した。また、昨シーズンは特別指定として途中加入しインパクトを与えた牧隼利も含め、着実に厚みを増した戦力となっている。
さらに新シーズンの琉球において大きなプラス材料が、田代直希の復帰だ。昨シーズンの田代は、新キャプテンに就任するとシーズン開幕から不動の先発を務めオフェンスの起点を担うなどコート内外でチームを牽引していた。しかし、左足首の故障によって12月15日を最後に戦線離脱、わずか20試合の出場に終わってしまった。
この失意のシーズン終了を経て9月20日、21日に沖縄市民体育館で行われたサンロッカーズ渋谷との公開練習試合で田代は2試合いずれも先発出場し、琉球のファンに約9カ月ぶりとなる元気な姿を披露した。彼が順調に回復しているのは、コロナ禍による入国制限の影響を受け、外国籍選手が不足した状態でシーズン開幕を迎える琉球にとっては心強い。
沖縄では実に2月9日以来となるファンを前にしての実戦を終えた田代は、「先行きが不透明な中でもこうして試合ができたことは、やはりうれしいです。ファンの皆さんの前でプレーできて清々しい気持ちです」と充実感を語る。
そして、2シーズン続けてキャプテンを務めることには自然体を強調する。「キャプテンとしてどう牽引していくのか、そこはあまり意識しない方が自分にとってプラスだと思います。特にこれといった理想のキャプテン像もないです。チームメートを信じているので、みんなの考えを尊重してチームでどう戦えるのかを考えています」
琉球のキャプテンといえば、与那嶺翼(今夏にアカデミーコーチ就任)、金城茂之(仙台89ERS)、岸本隆一とこれまでは地元沖縄出身で、高校まで沖縄で過ごした生粋のホームタウンプレーヤーが務めてきた。主将について各チームで位置付けやとらえ方は違ってくるが、少なくとも琉球においては10年以上の歳月をかけて積み上げてきた琉球の哲学、文化を理解し、体現できることが求められる重いものだ。
そこに千葉出身で、琉球に入団する前までは沖縄とこれといったかかわりがなかった田代が就任することは、チームがどれだけ彼を信頼しているのかを端的に示している。
「プレーメーカーとして今シーズンはやっていきたい」
田代の人柄を一言でいうなら実直で「できないことは口にしない」が信条だ。そんな彼だからこそ、現在のコンディションについても「足の痛みはだいぶ治まっていますが足首の硬さがあったりして、今まで以上にジャンプできない、走れなくなった感覚はあります」とマイナス要素も隠さずに明かす。
ただ、それで現実に悲観し、後ろ向きになっているわけではない。「走れなくなったところは他の部分で補えばいい。なるべくスピードを使わないプレーをしようと心がけていますし、そこは徐々に詰めていけるかと思います」
このように控え目でリップサービスとは無縁の田代だが、その中でも強いこだわりを見せるのが、ボールハンドラーとしてインサイドに切れ込み攻撃の起点となること。「僕がクリエイトして行きたいし、ドライブが得意なのでどんどん中に入ってディフェンスを寄せつけることができればチームメートは楽になります。プレーメーカーとして今シーズンはやっていきたいです」
特にキィム・ティリ、ドウェイン・エバンスと当初予定していた新外国籍選手が合流するまでは、日本人選手がオフェンスを牽引していくことが欠かせない。琉球のシーズン序盤戦は、田代がクリエイト力をどれだけ発揮できるのかが一つの大きな鍵となる。