町田瑠唯

富士通レッドウェーブは主力メンバーだった篠原恵と山本千夏が今オフに現役を引退。チームは大卒ルーキーも加わり、町田瑠唯は「本当に若いチームで新チームといった感覚」と話す。チームの絶対的ポイントガードの町田に、キャプテンを務める上で意識していることや東京オリンピックへの気持ちを聞いた。

「もっと練習してもっと成長してオリンピックへ」

──2月にシーズンが中断し、例年以上に長いオフとなりました。どのように過ごしていましたか?

自粛期間中は自宅でできるトレーニングをしたり、広い公園を使ってトレーニングをしていました。時間が経つにつれ人数制限や時間制限をして徐々に体育館を使えるようになりましたが、自粛期間中は体育館に行くことができなかったので、こんなにバスケから離れるのも、2カ月ぐらいシュートを打たなかったのも初めてでしたね。ボールは持っているので外でドリブルをしたりはしましたが、やっぱりリングがないので、正直つまらなかったです。

──ようやく体育館が使えるようになって、シュート感覚はどうでしたか?

鈍っていて、もう全然ダメでした(笑)。届かないとかはないですけど、すごくフワフワしている感じがあって。ボールが手につかないというか、打っている感じがあんまりないというか。自分でもビックリしましたよ。チーム練習が始まってからは感覚を取り戻し、今はいつも通りシュートが打てます。

──考える時間が多かった自粛期間、いろいろ考えすぎてネガティブになったりしましたか?

気持ちを切り替えるのに時間がかかりました。東京オリンピックも延期になってしまい、今までだったらリーグが終わって代表があって、その後にちょっとリフレッシュして、またバスケットに入るという感じでした。でも、それが代表もなくなり東京オリンピックも今年の夏はなくなっちゃって。オリンピックが自分の中では大きかったので、気持ち的に落ちたわけではないですが「また1年か」みたいな感じでした。

──東京オリンピックの1年延期は、「あと1年練習できる」とポジティブにとらえる選手もいれば、年齢的にもパフォーマンス的にも良い状態だから今年やりたかったという選手もいます。町田選手はどちらですか?

気持ち的には2020年のオリンピックに向けてずっとやって来たので、最初はなくなったと聞いて「マジか」みたいな感じでした。でも、その1年をプラスに考えて、もっと練習してもっと成長してオリンピックに行くように切り替えました。それでもオリンピックが来年にあるかもまだ正式には分からない状態なので、そこに対してのモチベーションはちょっと難しくなっているかもしれないですね。それにいろいろな選手の話を聞くと、東京オリンピックが終わったら引退と決めていた選手もいたので、そういう話を聞くとちょっと心が痛いですね。

町田瑠唯

「もっと得点に絡んでガツガツ行きたい」

──間もなく新シーズンの開幕を迎えますが、どんなことを意識していますか?

今オフに引退や移籍した選手が多いので、今シーズンはもっと自分自身の得点を意識して行かなきゃとすごく思っています。それはBT(テーブスヘッドコーチ)からも言われていて、昨シーズンよりももっと得点に絡んでガツガツ行きたいと思います。

自分が攻めることによってみんなを生かせるところもあるので、そこを上手く使いながらやっていきたいです。今までは結構、パスメインでやっていたところを自分がシュートに行ったり。そこのバランスも難しいですが、みんなの能力を生かしたい気持ちがすごくあるので、そこを殺さずに自分も得点に絡んで行きたいです。

──退団した選手はサイズがある選手が多く、新加入した選手は藤本愛妃選手以外、160cm台です。このサイズダウンをどう受け止めていますか?

今シーズンのチームは本当に若いチームでもあり、スモールチームにもなって難しい部分はあると思います。昨シーズンとは同じようにはいかないと思いますが、動ける選手や能力が高い選手も多いので、そこを上手く生かせたら良いなとは思っています。

──若いチームという言葉が出ましたが、精神的にもチームの柱を担っていた篠原選手と山本選手がいなくなったことは大きそうですね。

そうですね。年齢的には昨シーズンの時点で上から2番目なんですけど、あの2人の存在は結構大きかったですね。いなくなってから存在の大きさに気づくではないですけど、2人がいなくなったチームでの練習が始まると、あらためて2人には支えられていたなと感じました。

2人ともチームの雰囲気とかもすごく感じてくれるんですよ。チームが緩くなったり、練習があまり良くない時は気が付いてくれて、一緒に引っ張ってくれていました。ただ、2人がいなくなるとやっぱり緩くなってしまう時がありますよね。でも、今シーズンは篠崎(澪)選手も副キャプテンとしていてくれるので、自分たちはあんまり引っ張ることは得意ではないですけど、プレーと言葉で引っ張っていけるように頑張りたいです。

──「引っ張ることは得意ではない」とのことですが、町田選手はキャプテンとしての経験も豊富だと思います。チームをまとめる上で一番意識していることは何ですか?

言葉で引っ張れないならまずはプレーで引っ張ろう、という気持ちです。まずは自分がしっかりやる、試合だけじゃなく練習からプレーで見せる。あとは喝を入れたり、みんなをまとめて話すよりは、一人ひとりと話してコミュニケーションを取って、それを上手くまとめて行くのが得意なので、そういった自分のやり方でやっています。

リーダーシップがあってキャプテンシーがある選手を日本代表でも見ていますが、同じようなことは自分にはできないと感じることがあったので(笑)。その中で自分に合ったやり方を探すのもアリなのかなと。それでチームを引っ張って行けるならそれで良いので、「これだ」というのはないままやっています(笑)。

「トランジションの速いスピードバスケを40分間展開したい」

──チームとしては2015-16シーズンのリーグ準優勝以来、ファイナルの舞台から遠ざかっています。

そうですね。2018-19シーズンがプレーオフのセミクォーターファイナルで負ける嫌な終わり方だったので、チームとしても昨シーズンは本当に気合いが入っていたし、私は篠原さんや山本さんがラストシーズンだと知っていたので、「結果を出したい」、「また一緒にファイナルの舞台に立ちたい」という気持ちで挑んでいました。それがコロナの影響で途中で終わってしまい、すごく悔しい気持ちでしたね。でも、今シーズンは自分の中では新チームという感覚なので、目標のファイナル進出に向けて頑張っています。

──新チームの注目ポイントを教えてください。

サイズが小さいチームなので、トランジションの速いスピードバスケを40分間展開できるようにやっていきたいです。そこが持ち味であり、注目ポイントですね。1番から5番まで3ポイントシュートが打てるので、そこを上手く使っていきたいです。ディフェンスは激しく守りますが、最終的にリバウンドが取れないと意味がないので、スモールチームとしてはそこが課題です。

──開幕カードは昨シーズンと同様にENEOSサンフラワーズです。

正直、ENEOSもどういうチームになっているか分からないんですよね。今までみたいにサマーキャンプがあるわけでもないし、吉田(亜沙美)さんと藤岡(麻菜美)が抜けて、多分変わらないとは思うけど、どういうバスケをしてくるのかが分かりません。常にチャレンジャー精神でぶつかって行く感じです。

──それでは最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

今はコロナでこういう状況ですが無事に開幕できるということで、いろいろな人に感謝しつつ、試合ができることに感謝し、皆さんに私たちのバスケットで元気と勇気を与えたいです。応援よろしくお願いします。