NBA方式のサマーリーグを日本にも
Bリーグ開幕まであと2カ月余り。
新シーズンに備えたオフシーズンは、プロとしてバスケットと真剣に向き合い、レベルアップできる大事な時期だ。受験生と同じように、夏を制するものがより充実した状態でBリーグファーストシーズンを迎えることができる。
だが実際は、「練習する環境がない」とこぼすプロ選手は少なくない。Bリーグ開幕を控える今年のオフシーズンにも、そんな声が聞かれる。100%バスケットを生業とするプロこそ、24時間365日トレーニングできる環境整備が必要なのだが……。
日本の場合、企業クラブには自由に使える専用体育館があり、そこで充実したオフシーズンを送っている。アルバルク東京のヘッドコーチである伊藤拓磨がアシスタント時代、前シーズンを分析しながら選手それぞれの課題を浮き彫りにし、ストレングスコーチとともに基礎から叩き直していた。また川崎ブレイブサンダースでは、プレーの幅を広げたい選手がチームメートやコーチを巻き込んで一緒に練習することで、必然的にコンビネーションが向上していく。
日本代表合宿での日々の練習後に、アシスタントコーチの佐藤賢次と佐々宜央の元に自然と選手たちが集い、様々なドリルを行う『補習授業』は恒例行事。プロだからと言って練習しなくていいわけではない。むしろプロだからこそ、常に自身を高めていかなければならない。オフシーズンに十分な練習環境がないことは、選手にとって致命的なマイナスとなりかねない。
成長できる環境が保証されているからこそ良い選手が集まる。「企業クラブがプロクラブよりも強い」というこれまでの図式は、単なるサラリーの差だけではない。練習環境やその量の違いが差となって現れていたのだ。
同じように、環境やスタッフが充実する大学生がオールジャパンでプロクラブを破るケースは、過去5年間で3度ある。NBL勢が敗れたことが2度もあった。
もっとも、旧bjリーグでも練習環境が充実しているプロクラブが増えつつある。Bリーグでプロに貼られた悪しきレッテルを剥がす活躍を期待したいところだ。
サマーリーグで強化・育成
タスクフォース会議が行われていた昨年、新リーグを構想するに当たり、当時の川淵三郎チェアマンは「若い選手が必ず出場できるような、そんなルールが欲しい」と持論を説いた。
若い選手を成長させるには、コーチが2年3年と手塩にかけて指導するのもいいが、やはり実戦こそが最大の機会だ。少ないながらもプレータイムを与え、実戦経験を積ませることには若手にとって大きな意味がある。
一方で、勝敗やヘッドコーチの采配の苦労を考えると、一筋縄ではいかない。プロとして『真剣勝負』をすべきオンシーズンに、若手を起用するのはギャンブルとも言える。レギュラーよりも実力の劣る若手を、ルールで無理に出場させることは、リーグのレベルを下げることにもなりかねない。
そこで提案したいのが、NBAが行っているサマーリーグだ。鳴り物入りでドラフトされたルーキーや将来有望な若手のお披露目の場であり、実戦で試しながら育て、評価する。まだ見ぬ選手にチャンスを与え、トライアウトを兼ねた選手発掘も可能だ。試合の間に設備やトレーナーなど、シーズン中と変わらぬ練習環境が提供されれば、プロ選手の夏の悩みが一つ解消する。
また、若い選手の育成と同じぐらい日本の大きな課題であるコーチ育成の場としても、サマーリーグは機能する。NBAのサマーリーグで指揮を執るのは各チームのアシスタントコーチだ。選手以上に実戦経験の機会を得づらいコーチたちにとって、成長につながる貴重な場となる。過去、NBAサマーリーグには竹内公輔や富樫勇樹といった選手ばかりではなく、ミルウォーキー・バックスのアシスタントコーチとして東野智弥(日本バスケットボール協会・技術委員長)が参戦していた。
サマーリーグは興業としても成立する。NBAサマーリーグは、夏休み期間中の7月にラスベガスやオーランドで開催され、多くの観客を集める。日本でもクラブがまだない避暑地や観光地で開催したり、各クラブのホームアリーナを持ち回りで行っても、バスケットボールファンの夏の楽しみになるはずだ。
B1~B3のカテゴリーを越えた戦いにしたり、大学生を巻き込めば、さらに白熱しそうだ。若い選手たちのガチンコ勝負が、インターハイと並ぶ新たな夏の風物詩になればいい。
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