文=鈴木栄一 写真=B.LEAGUE

大苦戦を強いられた入替戦、耐える展開を作り出す働き

5月27日、富山グラウジーズは熊本ヴォルターズとのB1・B2入替戦を88-85と競り勝ち、辛くもB1残留を決めた。一発勝負は普段以上に試合の立ち上がりが大事となってくるが、富山はともにオン・ザ・コート「1」の第1クォーターを20-23と、B2からの下克上を目指す熊本に勢いを与える結果となってしまった。

しかしオン「2」となり、オン「1」で対応に苦しんだ熊本の日本人ビッグマン中西良太による高さの不利がなくなった第2クォーターに入ると、富山は本領を発揮。このクォーターで22-15と上回り、前半を42-38で終える。その後、第3クォーターでは劣勢に立たされるが、再び第4クォーターで上回ったことで富山が勝ち切った。

振り返れば第2クォーターでしっかり盛り返せたことは、富山にとって後半にたとえオン「1」の第3クォーターを耐えれば第4クォーターで勝ちきれるという手応えを与えたはず。そして、この第2クォーターに光ったのは大塚裕土で、3ポイントシュート2本成功を含む10得点を記録した。

後半は粘り強い守備で奮闘。「マンツーマンの時には、自分がつくという前提でスカウティングしてきました。いろんなシューターにB1でついてきたので自信をもって対応しました」と、東海大学の先輩である熊本のシューター小林慎太郎を3得点と抑えるのにも貢献した。

「僕も直輝も必死に耐えようと言い続けました」

「喜びたい気持ちもありますが、ほっとしたのが一番です。熊本のB1に絶対上がりたいという気持ちは、ブースターさんからも伝わってきましたし、その辺は最後までリスペクトして戦っていました」

試合後、大塚はこのように語り、まずはチームをB1に残留させたことへの安堵感を強調する。そして、中西にゴール下で大暴れされたオン「1」の時間帯について「第3クォーターのファウルトラブルはかなり厳しかったです。本当はヘルプに寄りたかったんですけど、それで3ポイントをやられてしまったら追いつけないと思ったので、我慢して寄らずにいました」と振り返る。

「オン1の時、僕も(宇都)直輝も必死に耐えようと言い続けました。オン2になれば(中西のところの)ミスマッチは関係なくなる。やっぱり我慢した試合だったと思います」。大塚がそう強調した『我慢』は、レギュラーシーズンで苦労した部分。それをこの崖っぷちの大一番で発揮できた要因は、やはりB1で戦っていたプライドではないだろうか。

入替戦を迎える前、大塚は次のように語りチームメートを鼓舞したと明かす。「選手だけでミーティングを行い、そこで『天皇杯は宇都がいない時に秋田に負けてしまって、もうB2のチームに負けることは許されないと思う。相手をリスペクトしながらも全力で戦うことが大事』と発信させてもらいました。個人的にはそういったところを出せて、競った中でも最後まで集中できた。レギュラーシーズンだったら、こういう展開で負けてしまうことがあったので、そこは少しでも改善されたのかなと思います」

「苦しい時に頑張れないヤツが次に頑張れるはずがない」

大塚個人として今シーズンを振り返ると、サンロッカーズ渋谷でベンチを温めていた昨シーズンから一転、主力として1試合30分以上プレーするステップアップの1年となった。この活躍をもたらしたのは、どんな時でも努力を怠らない姿勢と、チャンスがきたら絶対にモノにするという強い反骨心だ。

「昨シーズンはSR渋谷でプレータイムが全然なくて、本当に苦しい思いでした。ただ、次の年は他のチームに行って活躍するということを目標において取り組んでいました。そういう苦しい時に頑張れないヤツが次に頑張れるわけがないと思ってやってきて、こうやって結果がついてきたので、自分を信じてやって良かったと思います」

盟友である宇都への感謝も強調している。「宇都との関係性でスタッツが伸びたって部分はあります。彼との組み合わせがかなりうまくいったと思います」

3ポイントシュート成功率はリーグ2位、B1の舞台で活躍できる実力があることを証明した大塚。来シーズン以降のさらなる飛躍を大いに期待できる1年となった。