文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

中西良太が大暴れ、踏みとどまる富山の息詰まる攻防

2017-18シーズンを締めくくるラストゲーム、B1・B2入替戦の富山グラウジーズvs熊本ヴォルターズは、両チームの意地と意地がぶつかり合い、ラスト1秒まで分からない白熱した試合となった。

第1クォーター途中に熊本が7点のリードを奪ったものの富山がすぐに逆襲して第2クォーター開始早々に逆転。その後はほとんどの時間で1ポゼッション差の緊迫した展開が続いた。

どちらかと言えば、狙った展開に持ち込んだのは熊本だった。日本人ビッグマンの中西良太がインサイドでパワフルなプレーを披露。オン・ザ・コート「1」の時間帯でマッチアップする青木ブレイク、小原翼の2人から次々とファウルを誘発。第3クォーター残り1分の時点で2人ともファウルアウトに追い込むとともに、試合を通じてフリースローも15本中11本を決めて、両チーム最多の25得点と大暴れした。

だが、ここで富山も踏ん張る。日本人ビッグマン2人が退場となった第3クォーターの終盤、見事なボールムーブから小林慎太郎に3ポイントシュートを決められ5点のビハインドを背負うも、次のポゼッションで上江田勇樹がタフショット気味の3ポイントシュートを決め返して、不利なオン「1」の時間帯を64-66と2点差で踏みとどまった。

チャップマン、ウィラードが勝負どころで貴重な得点

勝負の第4クォーター、富山はオン・ザ・コート「2」の強みを生かす。サム・ウィラード、クリント・チャップマン、デクスター・ピットマンと得点力のある外国籍選手を擁することが熊本に対する強みとなった。特にチャップマンはラスト10分間で10得点。熱くなりやすい選手だが、闘志を前面に押し出しつつも冷静さを保ち、勝負どころで大仕事をやってのけた。またウィラードは3本のシュートをすべて沈め、特に残り35秒ではアウトサイドからの難しいシュートをきっちり決めて85-82とし、勝利への道筋を作り出した。

それでも熊本もあきらめない。残り20秒で決まれば同点だった古野拓巳の3ポイントシュートはリングに嫌われたが、ファウルゲームからテレンス・ウッドベリーがタフな3ポイントシュートを決め、残り7秒で85-86と1点差に詰め寄る。それでも熊本の最後の攻めを富山がしのぎ、88-85で勝ち切った。

試合後に振り返っても、何が勝敗を分けたか断じるのが難しいほどの大接戦。富山のキャプテン水戸健史は「最後にリバウンドだったりルーズボールだったり、気持ちの面でウチが強かったのかと思います。また富山から大勢のファンが来てくださって、その応援が僕たちに力を与えてくれました」と、B1残留に懸ける気持ちの強さ、ファンへの感謝を語った。「1部のチームと2部のチームの試合ということで、勢いがあるのは下から上がってくるチーム。そういう意味で飲まれてしまった部分はありました。でも自分たちがやるべきことをしっかりやって、ハドルを組んで『やろう』と話して、本来の自分たちのプレーができたと思います」

昇格を逃した熊本、キャプテンの小林「僕たちの力不足」

負ければ降格、そうなればチームも経営方針も大幅に変わらざるを得ない。そんな重圧を宇都直輝は「僕自身も昨日の夜はあまり眠れなかったり、試合までも緊張がありました」と語る。その結果、かなりの苦戦を強いられたが、踏ん張ってB1残留を勝ち取った。「僕らは試合が主な仕事なので、最初は入りが固かったとしても仕事を全うする上で集中していたので。最初はディフェンスをかなりアグレッシブにしてファウルを取られていたんですけど、そこからアジャストできたのが良かったです」

その宇都は24得点12アシスト9リバウンド。トリプル・ダブルにわずかに届かなかったが、プレッシャーを見事に力に変えて、チームを勝利へと導いた。

一方、B2で相応の成績を収めながらもB1昇格のミッションは2年連続で失敗となった熊本。キャプテンの小林は次のような言葉で試合を振り返った。「降格圏に来るようなチームではない富山が相手でしたが、最後10秒までどちらに転ぶか分からない試合ができました。僕たちがやりたいバスケットを最後にやれなくて、やれなくてというかオープンのシュートを決められず、勝ち切ることができなかったのは僕たちの力不足。また練習して来シーズン頑張りたい」

本来であれば優勝を決めるファイナルでシーズンが終わるのが『美しい形』だろうが、富山も熊本も死力を尽くした戦いで、長いシーズンを見事に締めくくったと言える。ポストシーズンも含めたB1、B2の年間入場者数は250万2931人(前年比+11.8%)だった。