寺嶋良は昨シーズンの途中に京都ハンナリーズへ入団した。特別指定ではなく本契約だったことからもクラブの期待の高さがうかがえたが、17試合に出場し平均22.7分のプレータイムで9.1得点、2.9リバウンド、2.3アシストと、その期待を大きく上回るプレーを見せた。22歳ながら副キャプテンを任されるなど、チームからの信頼も厚い寺嶋に2年目を迎える心境を語ってもらった。
副キャプテン就任に「衝撃を受けました(笑)」
──大阪エヴェッサとの練習試合を行いました。久しぶりの対外試合となりましたがいかがでしたか?
6人という限られたメンバーでの試合となり、小川(伸也)ヘッドコーチが目指しているバスケをどれだけ表現できるかというのが目的としてありました。4クォーターの合計では負けてしまったんですけど、ブースターには小川さんが目指しているものを見せられたんじゃないかと思っています。
──その目指しているバスケの中で最も手応えを得た部分はどこでしょう?
リバウンドですね。去年はファストブレイクを守るために外国籍選手以外の3人は戻るシステムだったんですけど、今年は積極的にリバウンドに行くスタイルになっています。それはしっかり表現できました。
僕はガードとしてセーフティに行くことを習慣づけていたので、どうしても練習中にセーフティにいってしまう癖があったんですけど、その中で5リバウンド取れたのは意識があったからですね。
──昨シーズンの時点で、ガードなのに積極的にオフェンスリバウンドを取りに行く印象がありました。
僕はもともとリバウンドが好きなので。毎試合オフェンスリバウンドだけでも5リバウンドくらい取りたいです。僕の良さを生かしてくれているって感じますし、しっくりきています。
──開幕まで約1カ月となりましたが、現在意識して取り組んでいることは何ですか?
小川さんが目指すコンセプトは知識としては入っているんですけど、今はまだ5対5ができない状況なので、知識だけになってしまわないようにというのは心掛けています。今回のような練習試合は良い経験になりました。
──人数が少ないことで練習中も大変かと思いますが、副キャプテンとして意識していることはありますか? ちなみに副キャプテン就任のニュースはかなり驚きました。
僕もかなり衝撃を受けました(笑)。練習が始まって1カ月くらいした時に小川ヘッドコーチに「キャプテンは誰がいいと思う?」って言われたんです。内海(慎吾)選手がキャプテンだと勝手に思っていたので、「慎吾さんと永吉さんですかね」みたいな話をした時に「副キャプテンをやってくれ」と頼まれました。永吉さんと他の選手からも寺嶋がいいと言ってくれていたみたいで。
──昨シーズンの結果でチームの信頼を勝ち取ったということですね。東海大でキャプテンを務めていましたが副キャプテンは初めてですか?
若手が多いですし、練習中からリーダーシップを発揮していたのもあるのかもしれないです。高校も中学もキャプテンだったので、言われてみれば副キャプテンは初めてですね(笑)。キャプテンをサポートする側は初めてなので何をしていいかわからないですけど、永吉さんがいない時はキャプテンの仕事をするつもりです。
昨シーズンの13連敗とか、苦しい時はチームがバラバラになるので、そういう時にキャプテンや副キャプテンの存在が必要となると思います。その時に僕らが鼓舞できるかが大事で、僕らの頑張りによってチームの状況も変わると思うので頑張ります。
「どんどん期待してほしい」
──以前、昨シーズンの結果に対して「出来過ぎ」と言っていました。2年目のジンクスの不安はありませんか?
2年目になってある程度相手からも注目され、弱点を突いてくると思うし、長所を出させないよういろいろと試行錯誤してくると思います。でも弱点を知られている時点で先手を打てているというか、相手が僕の弱点を突いてくることが分かり、相手が抑えてくる場所が分かるのは良いことなんです。
これは昨シーズンにアシスタントコーチから言われたのですが、長所と短所が分かるから、こちらとしても相手がどんなことをしてくるか分かると。その分、対策しやすいから弱点があることも良いことで、お前は先手を打てていると言ってくれました。
──なるほど、逆転の発想ですね。
「確かに!」って思いました。僕だったら、右のドライブを警戒してくると思うんですけど、そういうのも分かるのでいろいろと対応できるなって。そういう意味では不安はありません。ブースターからの期待はかなり高いと思いますが、そういった時に頑張るタイプなのでどんどん期待してほしいです。
僕は勝手に自分のハードルを上げちゃうタイプなんです。最初は少しでも試合に出れればいいと思っていたんですけど、点数が伸びていくと1桁得点じゃ満足できなくなって、2桁得点とか5リバウンド以上取りたいとか。今回の大阪戦もスタッツだけ見たら15得点7リバウンドでしたが、全然満足してないです。ずっと向上心はあるのですが、自分で追い込んじゃってます(笑)。
──ジュリアン・マブンガ選手が移籍したことで、新シーズンはコントロールよりも得点力を意識しますか?
コントロールはもちろん大事なんですけど、僕は得点を取ることが強みであり、その強気の姿勢がなくなった時点で大したプレーヤーじゃなくなってしまうことは分かっています。なので常に攻め気は持ってやっていきますし、流れを見てコントロールもしていきたいです。小川ヘッドコーチも僕のそういう部分を引き出してくれると思っています。
すべてのスタッツを昨シーズンよりも伸ばしたいです。勝つことが一番大事ですが、その中で得点は15点から20点は取りたいです。昨シーズンはそこまでアシスト数が伸びていないので、今年はもっとペイントタッチをして外にさばいてアシストもつけていきたいです。それにプラスしてリバウンドも取りたいです。
「ぶつかってないかもしれないですね(笑)」
──ディフェンス力があり、シュート力もあってスピードと高いIQもあります。ポイントガードに求められる資質をすべて持っているように思えますが、理想の選手はいますか?
もともとラッセル・ウェストブルックやデリック・ローズを見るのが好きだったんですけど、身体能力が桁違いなのでお手本にはならないですね(笑)。最近見ているのは(ファクンド)カンパッソです。小川ヘッドコーチや他の選手からも似ていると言われ、スクリーンの使い方とかも意識しています。
──カンパッソは確かに通ずるものがあるかもしれませんね。ウェストブルックなどを見ていたからこそフィニッシュまで持ち込めるようになったとも考えられますね。
トランジションからレイアップに行くまでの気持ちの強さとかは学びましたね。ハーフコートバスケだったらカンパッソのほうが学べることが多いですし、真似してみてたいと思っています。でもこれまでに理想とかお手本にした選手はいなかったですね。
──IQの高さは自然と身に付いた感じですか?
最初は何も考えずにプレーしていましたが、何で今のプレーでヘルプに来なかったんだろうとかビデオを見返すようになりました。KJ(松井啓十郎)がいるほうにドライブに行けば、マークマンが張り付いてヘルプに来ないことが分かったり、それでドライブに行く方向を意識したりするようになりました。大学までは身体能力でどうにかなった部分はありましたが、能力だけじゃダメだと壁にぶつかってから考えるようになりましたね。
──壁にぶつかったようには思えませんが?
ぶつかってないかもしれないですね(笑)。中高は何も考えていなかったですし、大学に入ってから少しずつ考えるようになって、Bリーグに入ってもっと考えるようになりました。昨シーズンは自然にできていましたが、こうしたらもっと上手くなるというのを考えてバスケするようになっています。
──完成されたイメージがありますが、逆に伸びしろがたくさんあるということですね。
完成してると思うかもしれないですけど僕は空っぽで全然まだまだです。昨シーズンは出来過ぎたので、だから向上しようと思いますし、自信と不安が入り混じっている状況ですね。
──ヘッドコーチも代わり、新たな京都の1ページが始まります。あらためてその主軸を担う選手として意気込みをお願いします。
小川ヘッドコーチが目指しているのは気迫のこもったプレーを見てもらってブースターに応援されるチームを作ることです。スタッツの話もしましたが、記録よりも記憶に残るようなプレーをしたいと思っています。
特に子供たちに元気を与えたいなと思っています。東京アパッチ(現東京サンレーヴス)の選手たちが僕の小学校に来て一緒に体育をやったり給食を食べたりしたことがあって、今でも鮮明に覚えています。彼らのようになりたいと思ってプロを目指したので。次は僕が子どもたちに夢を与えられたらなと思っています。
──では最後にをそうした子供たちも含め、ブースターの方たちにメッセージをお願いします。
昨シーズン、僕は途中から参加した形になったんですけど、温かく迎え入れてくれて今でも応援してくれて、京都に何か恩返しがしたいという思いが強いです。楽しんでもらえるバスケがしたいですし、泥臭いプレーを頑張りたい。そして、少しでもチームを引っ張って勝利に貢献できるように頑張るので、今シーズンも応援よろしくお願いします。