文=丸山素行 写真=鈴木栄一

『チームの総合力』を形成する小さな要素を重ねて

琉球ゴールデンキングスとのチャンピオンシップセミファイナルに連勝した千葉ジェッツは、5月26日にアルバルク東京とBリーグ2代目王者を懸けてファイナルを戦う。

ファイナル進出を決めた琉球との第2戦、千葉は72-64と8点差をつけて勝利したが、第3クォーター終了時点で1点ビハインドと決して楽な試合ではなかった。勝利を引き寄せたのは小野龍猛のポストプレーだったが、富樫勇樹が「これまで積み上げてきた結果」と語ったように、チームの総合力で難しい試合を勝ち切った。

チームの総合力を形成するのは、一つのリバウンド、ディフェンスの位置取りやボールへの執着心、アシストといった小さく様々な要素であり、数字だけでは測れない貢献度がバスケにはいくつも存在する。琉球との第2戦での石井講祐が見せたパフォーマンスが良い例だ。

石井は約20分の出場で2得点4リバウンド2アシストと、スタッツとして突出したものはない。それでもマイケル・パーカーやレオ・ライオンズ、ギャビン・エドワーズと同じく、2つのオフェンスリバウンドを奪取した。またチップアウトをしてポゼッションを稼いでもいる。ガード陣のオフェンスリバウンドは相手にとって最も嫌なプレーの一つだ。

「自分が絡んでいない時とか、オフェンスで自分のプレーじゃない時も、オフェンスリバウンドだったり球際のところを競り勝つというのは意識しながらやっています。チップして味方に取ってもらったりすることでポゼッションを稼げたのはすごく良かったかなと思っています」と石井は振り返る。「結構前から意識はしてたんですけど、シュートが飛んだ軌道とかも見ながら、このあたりに来そうだなというところに行くように毎回してました。最近は実際に(予測通り)ボールが来ることが多くなったと思います」

こういった取り組みは、自分を客観的に見ることができる石井らしさが垣間見える。「アキ(チェンバース)は飛べますし、ポジションをとってリバウンドを取れるので。僕はジャンプ力で勝つというよりは、先読みで球際のところに絡めればいいかなと思っています。数字じゃない部分でも貢献できることはたくさんあります」と、身体能力ではなくIQで勝負している。

プレースタイルの変更で広がったプレーの幅

昨シーズンに41.8%(リーグ5位)という高い3ポイントシュート成功率を記録したように、石井の本職はシュートだ。今シーズンも38.2%と高い精度を保っているが、先発出場の機会は減り、それに付随してプレータイムも減少した。それでも石井は昨シーズンよりも成長している手応えを感じている。

「ボールハンドラーになってピックを使ってのシュートが増えたりとか、シュートの種類も昨シーズンとは変わっています。キャッチ&シュートがちょっと減ってたりはするんですけど、自分が成長していく過程の中で変わる部分はどうしてもあると思うんですよね。ずっと上り調子でいかないので、今シーズンに関して言えば得点とかスタッツだけを見れば昨シーズンより落ちているんですけど、決してバスケが下手になったわけではなく、いろんなプレーの幅を広げられたと思います」

「今日もコーナーからのオープンショットを外しちゃったんですけど、怖がらずに自分で勝負を決めるシュートを打ちにいく、その姿勢のところを目標にしています」とシューターとして大事な部分はブレていない。

スタメンを外れるも「ネガティブな感情はない」

今シーズンの千葉は、成長の期待も込めて原修太を先発で起用したり、後半はアキをスタメンに据えるなど2番ポジションの起用法を変え、これまで多くの試合で先発を務めてきた石井はレギュラーシーズンで先発13試合とベンチスタートが増えた。どの選手も先発を外れることは歓迎できないものだが、石井は「ネガティブな感情はない」と主張する。

「大野(篤史)さんと話し合って『もっとシュートを狙う』という意味でのベンチでした。外されたとかそういうニュアンスは感じていないです」

そして、このベンチ起用は石井にまた別の成長を促すことになった。「ベンチから出て流れに乗らせる時もあれば、逆に流れを変える時もあります。ゲームの流れを読むじゃないですけど、そういう考え方はベンチになってから増えました。今どういう流れなのかを俯瞰してゲームに臨めるようになりました

「ベンチに置かれてもスタメンでも、どちらでも貢献できる」ことを石井は自身の強みに挙げた。その柔軟な考え方と対応力は、『てっぺん』を目指すチームにおいて欠かせない戦力だ。

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