文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「川村さんが乗っている時だからこそ自分がやるべき」

横浜ビー・コルセアーズは昨日行われ、富山グラウジーズとの残留プレーオフ2回戦を79-76で制し、B1残留を勝ち取った。

終盤に失速する悪癖を改善できず、いくつも接戦を落としてきた横浜だったがこの日は一味違った。第4クォーター残り4分で9点のビハインドを背負ったが、ここから逆転でB1残留を決めた。この逆転劇を演出したのは紛れもなく満田丈太郎だ。

9点ビハインドの状況で決めた3ポイントシュートが反撃のきっかけとなった。「卓さん(川村卓也)さんが打つフォーメーションで、相手もそれを分かってて先読みしてくるんじゃないかと頭の中であって、案の定フリーになったのでそこまでは想定内でした。後は決めるだけで、迷わないで決めきれたのでホッとしました」

川村の動きに2人がつられ、満田はトップの位置でフリーとなった。大事なオフェンスな時こそ、エースを頼る心理が働く。だが満田はその場面で自らのシュートを選択。その思い切りの良さがチームを救った。

その後も満田はボールをプッシュし速攻の意識をチームに植え付け、劣勢をはねのけた。「早い展開に持ち込むと勢いにすごく乗るので」と語るように、満田は細谷将司の速攻をアシストし、残り1分46秒には自らがフィニッシャーとなって、速攻から宇都直輝のファウルを誘発。フリースローを2本とも沈めて同点に追いついた。

さらに言えば、横浜はレギュラーシーズン中に川村に頼りすぎる悪癖をしばしば問題視されていたが、大一番でそれを乗り越えた。「川村さんの外に頼ってしまうところがあり、僕たちがある程度働かないと川村さんが打てないと思うので。僕が走ると外も空いたり、ドライブで寄ってきてキックアウトができるので、川村さんが乗っている時だからこそ自分がやるべきじゃないかって、そういう思いです」

ディフェンスの自己採点は辛辣「20点ぐらいですかね」

満田の最終スタッツは7得点6リバウンド3アシスト1スティール1ブロックと、決して突出したものではない。だが最終クォーター終盤の勝敗に直結した働きに加え、宇都を前半で6得点に封じたディフェンスでの貢献も光った。フィジカルでも高さでも負けず、宇都を乗せなかったことが横浜が先行した一つの要因だった。

「宇都さんはドライブがあるので、ちょっと離し気味にやっていたんですけど、今日に関してはもう半歩前についていました。後ろ過ぎたらスピードに乗ってドライブされちゃうというケースがあるので、もう半歩だけ前に出て、心理戦というか、ちょっと嫌な間合いだなって思わせるようなディフェンスを心掛けました」と満田は作戦を明かした。

その半歩の違いが結果的に宇都を苦しめた。「チームとしてもそうですけど、竹田(謙)さんだったり、高島(一貴)さんが『もうちょっと詰めてもいいんじゃない?』って今週の練習から言っていたので、そういう間合いの取り方を3人で共有した」と、先輩からのアドバイスを忠実に遂行した結果だったという。

だが、宇都のアタックをきっかけに後半に逆転を許したこともあり、「20点ぐらいですかね」とディフェンスの自己評価はかなり辛口だ。「前半は結構良い感じに守れたと思っていたんですけど、やっぱり第3クォーター、第4クォーターで宇都さんにやられてしまって相手を勢いづかせてしまったので。日本のトッププレーヤーにつくのには、経験も技術も体力だったりも足りないと実感しました」

第2クォーターには宇都の速攻を豪快にブロックし、会場を沸かせたシーンがあった。それでも満田は「あれも結局、最後の場面とかで出たらもっと良いことになってたかもしれないですけど、前半のことでしかないので」と勝敗に直結するプレーを常に求めている。

力の抜き方を覚え、飛躍を遂げたシーズンに

満田は昨シーズン途中に特別指定選手として横浜に加入した。当時はプレータイムをほとんど与えられず、平均約5分の出場に留まった。だが今シーズンは指揮官の信頼を勝ち取り58試合中42試合に先発。2桁得点を量産する主力選手へと成長したが、その飛躍の理由は『力の抜き方』を知ったからだという。

「最初はあまりプレータイムもなかったですし、ただガムシャラに全力でやってたんです。その100%を80%くらいにスローダウンさせてもうちょっと周りを見なさいっていうのはチーム全員から言われていました。『力を抜いてもうちょっと視野を広げて周りを見る』っていうことですかね。かつ自分の速攻を生かすことです。スローダウンしてどうやって自分を生かせるか、いろいろ試しながらやっていたシーズンでした」

満田の成長もあり、横浜は苦戦しながらも2年連続でB1残留を果たした。次の目標はもちろんチャンピオンシップ出場だ。満田が伸びる分だけ、横浜の力も底上げされる。

「3ポイントシュートだったりロングツーを強化していったら、もっとお前のドライブが生きるよ、と川村さんには言われてます。オフシーズンはひたすら3ポイントシュートを打ち込めと言われているので、しっかり中外できるプレイヤーになりたい」と満田はさらなる成長を誓った。