取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

「うれしさはあるんですけど、喜んでいいのかなと」

2年連続の昇格を果たし、ついにB1への切符を手にしたライジングゼファーフクオカ。それでも、山下泰弘は日曜の会見の時点で実感を得られていなかった。「ベンチでは『本当に昇格が決まったのかな?』って話をしていました。来週も試合を控えているので実感がないんです。うれしさはあるんですけど、本当に喜んでいいのかなと思うところもあって」

会見を終えた後も、どうもピンと来ていない様子。「いやあ、実感っていつ沸くものなんですかね。前のチームで日本一になった時も、正直あまり実感はなかったんです。でも、さっきの会見で『明日以降のメディアさんの取り上げ方で実感が得られる』って言えば良かった(笑)」

ただ、3部スタートの福岡に来て、地元のプロクラブを引っ張ってきた道のりを振り返り、「特に今シーズンに限っては福岡出身のメンバーが半分ぐらいいて、その点では『バスケット王国』というところを見せられたと思います」と誇らしげに語った。

山下自身は、2年前のNBL優勝を置き土産に東芝を離れ、故郷のクラブへやって来た。その東芝バスケットボール部の流れをくむ川崎ブレイブサンダースが体制変更により『東芝』でなくなる。山下もまた、その思いを持つ者の一人としてこう語る。「東芝時代からのファンの方、あるいは同じ職場の元上司の方が今日の試合も見に来てくださいました。チームが代わっても応援し続けてくれる方もいます。東芝はもともと企業チームで、本当にファミリー感が強く、今でも気にかけてくれる人がたくさんいます。そういう方々のためにも僕は地元の福岡で頑張って、来シーズンには川崎と対戦できるので、成長した姿を見せて、できれば勝ちたいです」

「プライドを懸けてシーズン最後の試合を戦いたい」

来シーズンのことを考えるのはまだ先でいい。「まだ来週も残っているので、そっちに集中したいです」と、山下は表情を引き締める。福岡にはまだ優勝を懸けた大一番が控えている。「本当は優勝して昇格決定、という形が一番きれいかもしれないですが、そこはしっかり切り替えます。来週までしか試合ができません。そこはしっかりと、このメンバーで作り上げてきたものを出していきたいです」

対戦相手の秋田ノーザンハピネッツは『B1クラス』の実力を持った相手。タイトルを懸けた真剣勝負となれば、『B1基準』での力試しができるはずだ。来シーズンのB1で福岡が通用するかどうかはここで語るまでもなく、今週末のコートで試すことができる。

「やってみないと分からないし、アウェーって部分がどう出るかですね」と山下は言う。2年前に福岡に移籍するまでずっと東芝でプレーしていた山下には、敵地での秋田との対戦経験がない。「僕も噂で聞くだけなので、どういう雰囲気なんですかね。栃木ブレックスに近い、それ以上なのかなと感じています。

最大の目標であるB1昇格は勝ち取ったが、どうせならB2優勝のタイトルが欲しい。何よりも勝ってシーズンを締めくくりたい。「お互いに昇格が決まっているので、男同士のプライドを懸けた戦いになると僕はとらえています。賞金が出るとかもあるかもしれないけど、僕たち選手はプライドを懸けてシーズン最後の試合を戦いたい」と山下は言う。福岡も秋田もシーズン最後の対戦、プライドを懸けたファイナルは激戦必至だ。