取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

相次ぐケガ人に「どうしようどうしようどうしよう」

西宮ストークスと島根スサノオマジックのB2降格が決まった。レギュラーシーズンを通して西宮は12勝、島根は11勝。どちらもプレーオフを勝ち抜いての生き残りに執念を燃やして見せ場は作ったものの、昇格組の2チームはともにB1の壁にはね返された形となった。そう考えると、ライジングゼファーフクオカのB3からB1への連続昇格がどれだけ偉業なのか感じさせられる。コート内だけでなく経営にも課題を抱え、Bリーグ創設にあたり3部に振り分けられたチームが、最短でB1昇格を勝ち取った。福岡市民体育館が『祝祭の場』と化したのも当然だ。

連続昇格という『ミッション・インポッシブル』をクリアしたことで、河合竜児ヘッドコーチは喜びを隠さない。ただ同時に、ここまでの道のりを振り返り安堵の息も漏らし、「辛かったです」と正直な気持ちを打ち明けた。

「ケガで選手が順番にいなくなりました。特に小林(大祐)が開幕から少しして左腕を折ってしまった時は特に。彼は副キャプテンで、しかもウチは山下泰弘と小林という二枚看板です。精神的な柱なので、彼が抜けてチームの意識が下がるというか、暗い雰囲気になったんです。そこから順番にエリック(ジェイコブセン)が抜けて、ペップ(ジョシュ・ペッパーズ)も山下も休んだ時があります。常に誰かがいない状態でほとんど連敗なくやれた、勝てたというのは良かったです。しかし、一人ずつ抜けていく時は『どうしようどうしようどうしよう』ですよ。ただ、そこから『大祐をプレーオフに連れて行こう』になってくれて、頑張れたのが良かったです」

外国籍選手を含む主力選手が相次いで離脱する状況、モノを言ったのはチームの総合力だ。ガード陣の奮闘、控え選手がチームの危機を救う頑張りを見せた。河合ヘッドコーチは言う。「私が『行くぞ』と言った瞬間にどの選手も何を頑張るべきか分かっていました。出場時間が長いか短いかにかかわらず良い仕事をして、ケガした仲間を思う気持ちがゲームに出たと思います」

その一例として挙げたのが堤啓士朗だ。「山下が休んだ時に3試合先発しましたが、その時のパフォーマンスは最高でした。『同級生の山下の穴を埋めるんだ』と頑張って、その結果で骨折してしまって。それでも何とか間に合ってプレーオフに出てくれた。bjリーグ時代から輝かしい実績を残した選手ではありませんが、いろんなチームで生き残ってきたのはやはり努力の賜物です。それをこのチームでやってくれた。そういうチーム力が根底にありました」

集大成の秋田戦「怖さのほうが大きいですよ」

福岡のシーズンはまだ終わらない。今週末には2戦先勝方式のB2ファイナルが待っているからだ。相手は秋田ノーザンハピネッツ。福岡とは逆で、B1から降格してきて1年での復帰という至上命題をクリアしたチームだ。レギュラーシーズンは54勝6敗と圧倒的な戦績。直接対決では1勝1敗とイーブンに持ち込んだが、これはホームの飯塚第一体育館での話で、今週末にはピンクに染まる敵地に乗り込むことになる。

最大の目標である昇格は果たしたが、ファイナルで譲るつもりはない。秋田を相手にどう戦うか、B1レベルの戦力を擁する『格上』について河合ヘッドコーチはこう語る。「秋田には目に見えない力があるじゃないですか。クレイジーピンクのブースターさんたちは、彼らの力を何倍にも膨れ上がらせます。だから昨日の熊本戦の劣勢も盛り返したのかなと。でも、完全アウェーの中で僕らが勝って、お客さんがシーンとなったらどれだけ気持ちいいか。4000人、時には5000人近く集まる秋田全体を相手にすると思うと、今から怖さのほうが大きいですよ。でも、圧倒的な空気の中でどうやったら選手たちに平常心を保たせてあげられるのか。元bj組は分かっていると思いますけど、やるだけです」

最後のミッションに挑む福岡は、充実したシーズンの最後を笑顔で飾れるか。達成感はあるが、一度リセット。相手は強敵だが、ここまで乗り越えてきたように挑むだけだ。