「我慢して我慢して、絶対にチャンスはやって来る」
シーホース三河と栃木ブレックスのチャンピオンシップ・クォーターファイナル初戦。両チームともにディフェンスが際立つ重苦しい展開を打ち破ったホームの三河が勝利を収めた。堅守の栃木から77得点を挙げたオフェンスの中心となったのは金丸晃輔。フィールドゴール16本中11本成功の26得点は、ディフェンスゲームにおいて一際目立った。
「競るとは思っていました。栃木さんはすごく粘りがあるので、簡単には勝たせてくれないのも分かっていました。前半2点差、全然気負うことなく後半に入ることができて、自分たちのペースで終始やり切ったのは非常に大きかったと思います」と金丸は試合を振り返る。
「相手のやることはスティールからの速攻なので、こちらがオフェンスで無茶をしないこと、その後にこっちも走ってなるべくファストブレイクで点を取ることです。セットされて、はいオフェンス始めます、では相手もがっちり構えた状態なので。その前に攻めるのは本当に大事で、今日はどんどん早い段階でアタックしていきました」
アグレッシブに攻めた結果だが、気負うことなく冷静にプレーを選択する老獪さもあった。第1クォーターの金丸は2点しか取っていないが、ここは強引に行くのではなく流れが来るのを待っていたと言う。「我慢していました。無理に打とうと思えば打てるんですけど、それはチームのオフェンスじゃないので、我慢して我慢して、絶対にチャンスはやって来るという考え方を第1クォーターはしていました」
「激しくやってくるのは分かっていたので、あえてリラックスして。こっちも一緒にカッカなってたらダメなので」と、金丸は激戦の大一番でも落ち着きを保った心境を明かす。鈴木貴美一ヘッドコーチは「ここで一本欲しい時に彼にボールを渡して決めてくれたので助かりました」と、その働きを称えた。
「まあ、落ち着いてやれてるということですね」
金丸に火がついたのは第2クォーター残り2分から。マークについた鵤誠司をアイザック・バッツが、そしてコートニー・シムズが立て続けにオフボールスクリーンで金丸から引きはがし、金丸はオープンになったチャンスを逃さず3ポイントシュートを決める。直後にはリバウンドからのアーリーオフェンスで、左サイドからドライブで仕掛けてレイアップを沈めた。「チームの得点が止まってたので、あの2本はチームとして大きかった」と自画自賛する連続得点だった。
ここから金丸の得点ペースは加速。最初の連続得点はチームオフェンスが栃木の堅守を崩し、金丸にシュートシチュエーションをもたらしたものだったが、その後は素早い仕掛けでイージーなレイアップを数多く決めた。
「まあ、落ち着いてやれてるということですね」と、金丸はこの点に自信を持っている。「予想して自分のプレーが出せたので、ああいうレイアップにつながりました。相手はどうしてもジャンプシュートを打ってくると思うので、今日は結構フェイクに飛んでましたね。それに引っかかってくれて良かったです」
この試合で決めた11本のシュートのうち一番気持ち良かったのは? との問いに、金丸はしばし考えて「相手がフェイクに引っ掛かったプレーですかね。飛んだな、みたいな感じで気持ち良かったです」と笑みを見せた。シュートを決めるより、シチュエーション作りの勝利だった。
「絶対来るんで、明日」と第2戦に油断なし
今シーズンを通して取り組んできたアーリーオフェンスのポイントについて、鈴木ヘッドコーチは以前、「ディフェンスとコンディショニング」と話していた。「良い守備がないと良い攻めが出ないし、コンディションが良くないと走れないし、気持ちも乗ってこないので」
しっかりと守り、しっかりと走る。これを実践した結果としてオフェンスが機能したということ。金丸もディフェンスの意識についてこう語る。「フォーメーションの最初の入りをうまくやらせない。その一歩目をシャットアウトすれば、そのフォーメーションは使えません。なので、そこを簡単にパスを入れさせない」
栃木の安齋竜三ヘッドコーチは敗因の一つに金丸を乗せてしまったことを挙げていた。「極限までの準備をしないと抑えられる選手ではない。何年もやっているので分かっているんだけど、彼の素晴らしさで持っていかれてしまう。明日は彼だけでなく守り方をしっかりして、エナジーを出して、しっかり準備したい」
『極限までの準備』をしてくることは金丸も予想している。「明日も20点、30点と取れるとは思っていません。あれ以上に激しいディフェンスが来ると、ちょっとどうしようかなという感じですね。絶対来るんで、明日。ちょっと今日中に考えます(笑)」
今日の第2戦、栃木はどんな金丸対策をしてくるか。それに金丸はどう応じるか。前年王者を打ち破るためには、もちろん今日の試合も金丸がキーマンとなるはずだ。