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新人エースが不在となった隙をクリス・ポールが突く

NBAプレーオフ、西カンファレンスのセミファイナル、1勝3敗と王手をかけられたジャズが、ロケッツの本拠地トヨタ・センターに舞台を移しての第5戦に臨んだ。

ガチンコ勝負らしくディフェンス先行の重い立ち上がりとなったが、超攻撃的バスケットを掲げるロケッツが次第に抜け出す。第3クォーター残り9分、クリス・ポールがボールプッシュする速攻からトレバー・アリーザのダンクが決まり、ロケッツがこの試合初の2桁リードを奪った。

だが、これで火が付いたのがジャズのルーキー、ドノバン・ミッチェルだ。それまではアタックを減らし、ボールムーブを優先していたミッチェルが自ら仕掛け始める。最初のアタックでクリント・カペラからファウルをもぎ取り、ここでロケッツが引いてしまったことで勢いに乗った。ミッチェルは鋭いドライブと強引にねじ込むフィニッシュで得点を量産し、第3クォーターだけで22得点を荒稼ぎした。この第3クォーター、ロケッツはチームトータルで21得点。それをミッチェルは上回り、ジャズが逆転に成功する。

最終クォーターは点差の離れない接戦となるが、残り約7分の時点でジャズをアクシデントが襲う。ハーデンに1on1を仕掛けたミッチェルが足首を痛めて、倒れてしまったのだ。ボールを奪ったハーデンにそのままワンマン速攻を決められ87-92とされたが、問題は点差ではない。ミッチェルはスタッフに両肩を借り、そのままコートを去った。しばらくしてベンチに戻って来た時にはバッシュではなくサンダル履き。試合に戻ることはできなかった。

それでも点差はわずか。ジャズは意地を見せて食らい付こうとするのだが、それを上回るエナジーでロケッツが圧倒する。ミッチェルに代わり主役となったのはクリス・ポールだ。97-96と1点差の残り4分、コートを横断するドリブルから最後はサイドステップで長身のルディ・ゴベアをかわす3ポイントシュートを決めると、その後も2本立て続けにタフシュートを沈めて105-96と突き放す。ラスト4分でロケッツが奪った15得点のうち12得点を挙げ、残る3点もPJ・タッカーの3ポイントシュートをアシストと、クリス・ポールの独壇場でロケッツが勝ち切った。

プレーオフの主役の一人となったミッチェルにとっては無念の敗退となったが、「結果はアンハッピーだけど、プレーオフ自体はみんなにとってすごくハッピーなものだった」と、やりきった者だけに得られる達成感があった。NBAに挑戦するかどうか悩んでいた時期に背中を押してくれた『兄貴分』であるクリス・ポールと固い抱擁で健闘を称え合い、シーズンを終えた。

見事に勝ち切ったロケッツだが、ハーデンはジャズの戦いぶりを称えることを忘れなかった。「信じられない相手だった。決してあきらめずに、タフに賢く戦ってくるチームだった」

この日、ウォリアーズもペリカンズ相手に4勝1敗で勝ち抜きを決め、NBAファンの多くが望んだロケッツvsウォリアーズとのカンファレンス・ファイナルが実現した。