デイミアン・リラード

優勝候補筆頭のレイカーズを圧倒

レイカーズとトレイルブレイザーズの対戦は、初戦からカンファレンスファイナルのような緊張感に包まれた試合となった。西カンファレンスの8位、ブレイザーズはレギュラーシーズンで35勝39敗と負け越しているが『バブル』では絶好調で、プレーインを勝ち抜いてレイカーズへの挑戦権を得た。一つも負けられない状況で1桁点差の試合を5つ連続で制し、土壇場の勝負強さには絶対の自信があった。

第1クォーターを終えた時点で2桁のリード。その後はレブロン・ジェームズを中心とするレイカーズの反撃を浴びたものの、終盤の混戦となればブレイザーズに分があった。

第4クォーター残り6分半、81-87と6点のビハインドを背負った状況からCJ・マッカラムが3ポイントシュートをねじ込み、デイミアン・リラードがディープスリーを決め、さらにマッカラムが華麗なフローターを沈めて89-87と一気に逆転する。

この間、レイカーズの攻めは機能しない。ダニー・グリーンはフリーの3ポイントシュートを外し、アンソニー・デイビスとレブロンは揃ってフリースローを2本とも失敗。8人だけでローテーションを回すブレイザーズはファウルトラブルも重なり決して楽ではなかったはずだが、疲れを感じさせないパフォーマンスでレイカーズを圧倒した。

ハッサン・ホワイトサイドが連続ブロックでレイカーズを止めると、もはやステフ・カリー以上にディープスリーの象徴となったリラードが、コート中央のロゴ付近から放つ超ロングシュートでリムを射抜く。まだ残り時間は3分以上、ブレイザーズのリードはわずか3点だったが、もう流れは変わらなかった。リラードはレブロンにマッチアップされても、ユスフ・ヌルキッチとのピック&ロールから簡単にカーメロ・アンソニーの3ポイントシュートをアシスト。続いてリラードはダブルチームをかわしてパスをさばき、ギャリー・トレントJr.の3ポイントシュートへと繋いだ。

最後まで点差は大きく開かなかったが、レイカーズは闘志を断ち切られてしまい、ラスト1分に有効な反撃は見られず。最後は全員が棒立ちのディフェンスをリラードにあっさりとこじ開けられ、ヌルキッチのダンクで試合は決まった。

リラードは34得点5アシストと、このところの彼にしてはスタッツは少々控え目だが、コートでの存在感は誰よりも大きかった。それでも彼は「全員が頑張った結果だ」とチーム一丸でつかんだ勝利であることを強調する。

「毎試合、いろんな選手が活躍していることに注目してほしい。メロ(カーメロ)は重要な場面でビッグショットを決めてくれるし、GT(トレントJr.)もマブス戦で試合を決めた。僕もそうだし、ユスフも大事な場面でリバウンドを取ってフリースローを決めた。もちろんCJもね。多くの選手が試合を決める仕事をしてきた。だから終盤の接戦になっても僕たちは慌てない。これまでにも厳しい戦いを乗り越えてきたから、自分たちへの信頼を失うことがないんだ」

レギュラーシーズンでは存在感の薄かったホワイトサイドの活躍にも、リラードは称賛の言葉を惜しまない。「レイカーズのペイントエリアにはAD(デイビス)、(ジャベール)マギー、ドワイト(ハワード)とパワフルな選手が揃っていて、彼らに負けない選手が必要だった。ブロックとリバウンドでチームのプラスになってくれた彼の存在抜きには、今日の勝利はあり得なかったね」

レブロン・ジェームズが代えの利かない選手であり、プレータイムの長さがよく話題になるが、このリーグにおいて最も長くコートに立っているのはリラード(平均37.5分、リーグ1位)でありマッカラム(平均36.5分、同2位)だ。『信頼』という点では指揮官テリー・ストッツは彼らに何があってもベンチに下げようとはしない。勝負を託された彼らもまた、それに応えている。

「テリーが僕らを信頼してくれていることは、僕らに自由にプレーさせてくれることからも分かる。それは僕とCJに限らず、今日ザック(コリンズ)に代わって先発したウェニェン・ゲイブリエルも信頼を寄せた。ルーキーの時からリーグトップの出場時間と自由にプレーする権利を与えてくれるヘッドコーチのおかげで、僕はストレスなくプレーできている。その点は高く評価されるべきだと思う」

グリズリーズとのプレーインを終えた時も「疲れていない」と語ったリラード。この日も43分プレーしたが、彼にとっては慣れたこと。むしろ40分を超えてからが『デイム・タイム』なのかもしれない。

大事なプレーオフの初戦を取ったが、「これで1敗できるという考え方もできるか?」と質問されたリラードは明確にNOと答えた。「プレーオフは先に4勝したチームが先に進めるけど、『1敗できる』と考えたことはない。常にリードを広げることだけを考えるよ。レイカーズはこのリーグのベストチームであり、西の第1シードだ。さらに厳しい戦いになる。でも僕はこのチームのことをよく知っているから、心配はしていない。1勝を挙げたことを誇りに思うけど、全員が気持ちを切り替えている。『まだ何も成し遂げていないぞ』なんて声を掛ける必要もない。今日の試合で出た課題を確認して、次の試合で改善する。そうすることで次もまた勝つことだけを考えるよ」