渡邊雄太

「NBAに行くとまだ身構えてしまう自分がいた」

プレーインでトレイルブレイザーズに敗れ、2年目のNBA挑戦を終えたグリズリーズの渡邊雄太がオンライン取材に応じた。渡邊はまず今シーズンを次のように総括した。「GリーグもNBAも去年と比べて数字が上がっている部分が多かったので、成長を感じられた1年になりました。自信もつきましたし、自分も高いレベルでやっていけるんだということを再確認できました」

今シーズンの渡邊はNBAで18試合に出場し、平均5.8分のプレータイムで2.0得点、1.1リバウンドを記録した。昨シーズンは15試合に出場し平均11.6分のプレータイムで2.6得点、2.1リバウンドだった。プレータイムが減ったことでスタッツが落ちたように映るが、フィールドゴール成功率は29.4%から44.1%へ、3ポイントシュート成功率は12.5%から37.5%へと向上している。渡邊もこの部分に手応えを得ていた。

「ガード陣が切り込んでいくのに対しスペースを見つけて飛び込んで行く、昨シーズンに比べて合わせを上手くできるようになりました。それがイージーなシュートにも繋がったし、多少タフショットでも決めれるようになりました。簡単なシュートを簡単に打てるようになったことが一番大きいと思います」

特にGリーグでは出場した22試合すべてに先発し平均17.2得点を記録。チームの中心選手として確実にステップアップを果たした。渡邊は「成長を感じられた」と語ったが、「それ以上に悔しい思いが残ったシーズン」とも言う。

「Gリーグでは文句のない活躍ができたと思うんですけど、NBAではまだまだ足りないところを痛感しましたし、2シーズン目のうちに本契約を目標に掲げていましたが、最後までその目標は達成できずに終わってしまった」

あくまでも渡邊の目標はNBAの舞台で活躍することであり、Gリーグの結果に大きな意味はない。自身の成長を感じたと同時にNBAとの壁がまだあることを痛感したと渡邊は言う。「昨シーズンに比べて自信を持ってプレーはできていたと思うんですけど、GリーグからNBAに行くとまだ身構えてしまう自分がいたというか。当然レベルは上がるのでGリーグでできたことが全部NBAでできるわけではないですけど、自分の中でもっとああすれば良かったという反省点があって、精神的な部分でも悔しさが残るシーズンでした」

渡邊雄太

ライバルの成功に「歯がゆい思いをした」

グレイソン・アレンやジョシュ・ジャクソンは、渡邊と同じようにGリーグとNBAを行き来していたが、結果的に2人はグリズリーズのローテーション入りを勝ち取った。仲間と言えど、ライバルたちの成功を間近で見ているからこそ悔しさは募る。

「Gリーグにいた時は彼らと同じレベルでできていたので、逆に歯がゆい思いをした部分がありました。自分もそれだけやれる力はあると思うので、短い時間でいかにアピールしてコーチの信頼を勝ち取るかです」

悔しさの残るシーズンになったが、渡邊は日本にとって歴史的な瞬間をもたらしてもいる。グリズリーズは今シーズンに2度ウィザーズと対戦し、八村塁と渡邊が同時にNBAのコートに立った。短い時間ではあったがマッチアップする瞬間もあり、日本人選手がNBAの舞台で対戦するという、かつては考えられなかった光景が見られた。

「僕が日本人選手として2人目、塁が3人目ということで、僕と塁が同じコートに立って試合をし、これからを担う若い選手たちがああいう姿を見て、NBA選手になりたいと思う選手が増えたらと思います。日本のレベルをもっと上げて、NBA選手も増えていかなきゃいけない中で、今後の日本にとっては大きな試合だったんじゃないかと個人的には思います」

新型コロナウイルスの影響でGリーグが中止になり、『バブル』でのプレーも経験するなど、様々な感情が入り混じる2年目のシーズンを終えた渡邊。延期となった東京オリンピックについては「やりたい気持ちはありますが、今年できないのは当然だと思います。健康面が最優先されるので、ないならないで仕方がないこと」と気持ちを切り替えている。今後の去就は未定だが、彼がNBAの舞台に再び立つことを日本中が望んでいる。