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ゴードンの、そしてカイリーの穴を埋めるテイタム

主力選手がケガで戦線離脱したりスランプに陥ってしまう危機は、実は新たな選手が台頭するチャンスでもある。セルティックスでは、ドラフト全体3位指名で入団したジェイソン・テイタムがそれにあたる。開幕戦で大ケガを負いシーズンを棒に振ったゴードン・ヘイワードの代役を務め、さらにこの1カ月はひざの手術に踏み切ったカイリー・アービングの穴を埋める働きで、プレーオフでも堂々のプレーを見せている。

1回戦ではバックスをGame7の末に下し、カンファレンス・セミファイナルではここまでセブンティシクサーズに2勝0敗とリード。快調に飛ばすセルティックにおいて、テイタムはプレーオフの9試合で17.4得点をマークしている。シクサーズとの第2戦では、プレーオフでの4試合連続20得点以上を挙げたことになるが、これはNBAの最年少記録。テイタムは20歳と61日で記録を塗り替えたが、それまでの記録保持者はコービー・ブライアント(20歳と272日)だった。

「今という時を楽しんでいるよ」と『AP』の取材に応じたテイタムは言う。「こういう大きな舞台で重要な役割を与えられることをずっと夢見てバスケをやってきた。思っていたよりも早くやってきたけど、僕としては目の前にあるチャンスに全力で取り組むだけだ」

シクサーズとの第1戦、ホームのTDガーデンでは試合終盤に相手のエースであるベン・シモンズにボストンのファンから「ルーキーじゃない」のコールが起こった。その後にテイタムがボールを持つと「彼がルーキーだ」とのコールも。シモンズは新人王確実と言われているが、ドラフト指名されたのは一昨年。テイタムは昨年のドラフトで全体3位指名を受けてセルティックスに入団した選手で、「新人王に相応しいのは俺たちのテイタムだ」という意思表示である。TDガーデンの2試合ではシモンズが沈黙。テイタムは勝利に貢献する活躍を見せている。

因縁のセルティックスにフルツはリベンジできるか

TDガーデンにこだましたルーキーを巡るコールを神妙な面持ちで聞いていた者がいる。昨年のドラフト1位ルーキー、マーケル・フルツだ。セルティックスとは対照的にシーズンを通して好調だったシクサーズにおいて、彼一人が乗り遅れた感がある。シモンズやジョエル・エンビードと並んでチームを支える若きスターとして期待されたが、ここまでは様々な問題を抱えてほとんど貢献できていない。プレーオフでもヒート戦でわずかなプレータイムを与えられただけで、セルティックスとの2試合では出場機会がなかった。「自分のスタッツとは関係なく、チームが勝っている間は良い気分だ。でも、今は少し難しいね」とフルツは言う。

フルツにとってセルティックスは、そしてTDガーデンは因縁の相手。もともと1年前の時点でドラフト1位指名権を持っていたのはセルティックスだった。当時はアイザイア・トーマスが押しも押されもせぬ大エースで、同じワシントン大学の出身とあってフルツはトーマスを慕っていたし、ドラフト全体1位でセルティックスが自分を指名するものだと考えていた。

ドラフト前にセルティックスのワークアウトに参加し、TDガーデンを見学したフルツは「ここは僕に相応しい」とすでにセルティックス愛を語っていた。ところが事態は思うようには進まない。まずはトーマスがトレードで放出され、そしてセルティックスはシクサーズと指名権交換トレードを成立させた。かくしてフルツはシクサーズに1位指名され、そしてセルティックスはテイタムを選んだ。

1位指名権を持っていながら自分ではなくテイタムを選んだセルティックスに対し、思うところはあるはず。だが、反論するならコートの上で。チームが連敗した今、フルツにチャンスが回ってくるかもしれない。この2試合、セルティックスに徹底マークされたベン・シモンズが沈黙。第2戦に至っては得点わずか1で、彼が完璧に封じられていることが最大の敗因となっている。この打開策としてフルツにプレー機会がやって来るかもしれない。

フルツはレギュラーシーズン最終戦のバックス戦で本領を発揮し、13得点10リバウンド10アシストを挙げている。19歳と317日でのトリプル・ダブルは、レイカーズのロンゾ・ボール(20歳と15日)を抜いて史上最年少記録となった。

チームは0勝2敗と危機に瀕しているが、長らく不振続きのフルツにとってはブレイクスルーのチャンス。彼は「チームのためなら何だってするつもりで僕はここにいる」と言うが、コートの外から声援を送る立場にいつまでも甘んじるわけにはいかない。テイタムに負けないように、セルティックスを見返すために──。「なぜ僕がドラフトで1位指名されたかを示そうとしている。僕にできるのは努力し続けることだ」と語るフルツがコートに立つのが楽しみだ。