文=丸山素行 写真=B.LEAGUE、鈴木栄一

ファジーカス帰化の『恩恵』も得て勝利の立役者に

川崎ブレイブサンダースと千葉ジェッツによる『チャンピオンシップ前哨戦』と位置付けられた対戦は、川崎が102-90で勝利した。

帰化申請が通ってから最初の試合ということで、ニック・ファジーカスに注目が集まるのは必然だったが、試合の流れを握っていたのはファジーカスの相棒、辻直人だった。序盤から高確率でミドルシュートを沈め、打ち合いの展開を牽引。シューターであると同時に、優れたパサーでもある辻は19得点5アシストと勝利の立役者となった。

「いつもジェッツさんとやる時は、第2クォーター第3クォーターでアドバンテージを握られて、第3クォーターで離されたりしていました。そういうところがなく、ゲーム通して自分たちのバスケットをやり続けられたと思います」と試合を振り返った。

「ニックが出てなくても常に外国人が2人いるというのでディフェンスも的を絞りづらいと思います。僕がドライブしても、ヘルプに来ていたところがヘルプに来れなかったりしたので、うまくそういうところを突けたのかな」と、ファジーカス帰化の恩恵を説明した。

「溜めに溜めた、渾身の一撃でした(笑)」

辻が最も輝いたのは、最終クォーター残り3分34秒の場面だ。15点のリードを得た川崎だったが、千葉の反撃に遭い0-11のランで点差を4点に縮められた。だがここで辻がファウルを受けながら3ポイントシュートを沈め、ボーナススローも決めきり4点プレーで流れを止めた。

「ここで1本決めたいと思っていたので、自分でそのセットプレーをコールして、それがうまくいったので余計に気持ち良かったです」と辻は笑みを浮かべた。このプレーで落ち着きを取り戻した川崎はリードを再び2桁に戻し、勝利を収めた。

辻はしばしば得意の3ポイントシュートを決めた時に、3ポイントシュートを意味するオッケーサインのようなポーズを取る。通常はディフェンスに戻りながらのポーズになるが、ファウルがコールされたことで時計が止まり、パフォーマンスをする時間は十分だった。「あのバスケット・カウントが一番気持ち良いプレー。その一発は溜めに溜めた、渾身の一撃でした(笑)」と4点プレーもさることながら、自身のパフォーマンスをも自画自賛した。

巷で『ツジーカス』と呼ばれているように、辻とファジーカスは川崎の中心選手だ。チームが停滞している時に「ニックと辻を探してしまう」という北卓也ヘッドコーチの発言がそれを示している。

だが辻は「ニックが決めるのは相手は仕方がないと思っているけど、僕に決められるのは嫌なんじゃないかな。勢いに乗らせたくないというのはあると思いますが、『仕方がない』というところまではまだいってないですね」と言う。まだファジーカスほどの影響力がないと自認しつつ、『アンストッパブル』な存在へなるため高みを目指している。

チャンピオンシップへ「自信を持って挑める」

接戦の末に千葉を撃破した川崎だが、このままの順位で推移することになれば、チャンピオンシップ1回戦で再び千葉と対戦することになる。それだけに今回の勝利で得られた自信は大きいと辻は語る。

「チャンピオンシップでほぼ当たると思うので、この一戦というのは大事な一戦になると思っていました。ニックも帰化選手として出て、それで負けるのは良くないので、勝てたので逆に良いプレッシャーを与えられたと思います。もし負けていたら自分たちが変に気負ってしまうかもしれなかったですし、自分たちも自信を持って挑めると思います」

また昨日の試合は篠山竜青がケガの影響で欠場したが、篠山不在を感じさせなかったことも勝利の価値を高めている。「篠山さんが間に合えば、今日よりももっと良いゲームができる」と辻が言うように、シーズン終盤で様々な収穫を得た決戦だった。