写真=Getty Images

来年にフリーエージェントとなるレナード、決断の夏

2017-18シーズン、カワイ・レナードは12月と1月に断続的に9試合に出場したのみに終わった。右足四頭筋の腱障害が長引き、いつ復帰できるか不透明な時期がシーズン終了まで続くうちに、チームドクターが復帰にGOサインを出しているにもかかわらず、本人とその取り巻きが出場を拒んでいるとのキナ臭い話も漏れ伝わった。指揮官グレッグ・ポポヴィッチは2月の時点で「今シーズンにカワイが復帰できたら驚きだ」と語っている。単なるケガではなく、スパーズとレナードの関係が破綻しているのではないかと憶測されても仕方のない状況だった。

レナードとスパーズとの契約は2020年まで。契約最終年を破棄すれば、来年夏にフリーエージェントとなる。当然、この夏には去就について何らかの決定がなされることになる。

スパーズが彼を引き留めたいと思うのであれば、このオフにスーパーマックス契約を提示することになるが、この1年のレナードがそれに値するだろうか。ケガが本当に深刻なものであれば今後のコンディションが懸念されるし、実はケガが大したものではないのだとしたらチームに非協力的な選手と大型契約を結ぶことはリスクでしかない。契約を1年残している今、レナードをトレードの駒として有効活用することも選択肢に入ってくる。

レナードの立場からもこの状況を考えてみよう。来月27歳になる彼にとって次の契約は自身のキャリアを大きく左右するものになる。アイザイア・トーマスがセルティックスから簡単に放り出され、ケガを抱えながらキャブズ、レイカーズと転々とする姿を見れば、身の振り方に慎重になるのも理解できる。7シーズンを過ごしたスパーズに愛着がないはずはない。ただ、プロフェッショナルとして大型契約を得ること、そして優勝できる環境に身を置くことは重要だ。

ここで問題になるのが「スパーズで優勝できるのか」だ。レナード不在を受けて、それまでポテンシャルを発揮できずにいたラマーカス・オルドリッジがエースへと成長したが、ここ何年かのスパーズの地盤沈下は止まっていない。ティム・ダンカンが引退した後、チームの顔と呼べる選手が不在。試合終盤の大事なプレーを大ベテランのマヌ・ジノビリに託さざるを得ない状況が続いている。ドラフト大豊作の昨年を受けて、今シーズンは過去に例がないほどルーキーが活躍しているが、ベテラン揃いのスパーズはその恩恵を得られていない。

レナードの移籍はNBAの勢力図を変えるだけのインパクトがある。レナードを加えることで有力チームは優勝候補に変わするし、再建中のチームも一気にステップアップするはず。リーグ屈指の2ウェイプレーヤーである彼はどんなチームにもフィットし、重宝されるに違いない。

All the feels.

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カワイとスパーズの両者が重い決断を強いられる状況、サンアントニオで営業するビアホールの『Freetail Brewing Co.,』がスパーズより先にスーパーマックス契約を提示した。レナードがスパーズに残留してくれたら、ビールとピザを生涯タダで提供することを申し出たのだ。

店のオーナーは地元紙にこうコメントしている。「誰もが深呼吸して、少し冷静になるべき時だと思って行動しました。彼が我々のオファーを受け入れるとは思いませんが、我々が本当にカワイを愛していることを知ってもらいたかった。スパーズの成功が何を意味するのか、彼やチームメートに知ってほしかったんです」

レナードが自身のキャリアやスパーズの状況についてどう考えているかは別として、サンアントニオの人たちの気持ちはありがたいはず。意外とこういう小さな出来事が、大きな決断を後押しするのかもしれない。