文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部、FIBA.com

「夢であるNBAに近づけるように」渡米を決意

史上最年少の15歳で日本代表候補に選出された田中力。U-16男子日本代表としてアジア選手権に挑み、フィリピン戦のラストショットを決めきれず、コートで泣き崩れた姿は記憶に新しい。

4月27日、横浜ビー・コルセアーズvs名古屋ダイヤモンドドルフィンズのハーフタイムにコートに立った田中は、ファンの前で今後の進路を報告した。「私はバスケットボールの本場、アメリカフロリダ州にありますIMGアカデミーに進学することを決めました。アメリカでもレベルの高いIMGアカデミーで夢であるNBAに近づけるように、また東京オリンピックでは日本を背負っていけるような選手に成長できるよう日々努力していきます」

田中の進路については以前から大きな注目を集めていた。「どこに行くの? と聞かれていたので、皆さんに言えて安心です。皆さんの応援を受けてしっかり頑張りたい」

IMGアカデミーの他にNBAアカデミーからも勧誘を受けていた田中だが、より文武両道を求められる環境を選択した。「IMGは勉強がちゃんとできていないと試合に出れなかったり、大会に行けないこととかあるので。勉強もすごく頑張らないといけない環境になっているので良いなあって思いました」

IMGアカデミーからは熱心な誘いを受けた。「このオファーは逆に断っちゃダメだろっていう感じで」とIMGアカデミー入りを決心したという。

母への感謝「すごく愛してます」

世界中から選ばれたごく一部のエリートが集まり、バスケと勉強中心の日々が始まる。見知らぬ土地で一人新生活をスタートさせることになる田中だが「勉強だけが不安です(笑)。あとはワクワクですね」と不安よりも期待が上回っているようだ。

IMGアカデミーの入学式は8月28日、渡米まで4カ月弱の期間がある。そのため特別な準備や緊張感はまったくなく、「毎日バスケしてます(笑)」と田中は笑顔をのぞかせる。入学後はバスケ漬けの日々を送ることになるが、「代表の合宿とかも入ると思うので」と日本には定期的に帰ってくるようだ。

スピーチの最後には母への感謝の言葉が添えられた。「最後に、今日も来てくれているお母さんに本当に心から感謝したいと思います。本当に今まで辛いときにいろいろしてくれて、本当にありがたいです。毎日寝る前に、起きてすぐ、いつも言ってますけどすごく愛してます」

スピーチを読み上げる際、前半部分は緊張からたどたどしさが目立ち、言葉に詰まる部分があったが、母への思いを伝えた場面では力強い言葉をすらすらと発していた。「最後のお母さんへのところは何も書いてない」とアドリブだったことには驚かされたが、それも嘘偽りない本心を語ったからだ。

母への感謝を胸に、田中はこれから日本を巣立つ。「日本を強くしていける選手になりたい」と話す『日本の至宝』の挑戦はこれから新たなステージを迎える。