10月に開幕する新シーズンにBリーグになって初のリーグ優勝を至上命題に掲げる川崎ブレイブサンダース。リーグ随一の選手層を誇るタレント集団にあっても替えの効かない絶対的な大黒柱がニック・ファジーカスだ。アメリカに帰省中には新型コロナウィルスに感染したと報じられファンを不安にさせたが、今はすっかり回復していて問題なし。「I’m Back」とチーム合流に気合が入る彼に、オフの過ごし方と新シーズンの展望を聞いた。
「僕にとっては夏風邪を引いたような感じ」
──まず、アメリカに里帰りしている間の生活について教えてください。新型コロナウィルスの影響でワークアウトに支障が出るようなことはありましたか。
リラックスして過ごすことができたし、シーズン中断によってオフに入るのが早かったから、いつもより早くワークアウトを始めた。トレーニング施設を個人で所有する友人がいて、彼の好意で好きな時に使うことができたし、リバウンドも手伝ってもらっていた。時期によるけど週に4日から6日はその施設でワークアウトができていたんだ。
また、自宅でもアメリカで話題となっていたトレーニングマシーンを買ってウエイトトレーニングをしていた。これまで使っていたジムとか公共の施設は使えなかったけど、それでも例年と比べてトレーニングの環境が大きく違ったわけではない。僕としてはいつもと変わらずオフのトレーニングをすることができた。昨年よりももっと良い状態で身体を絞ることができていると思う。このままシーズン開幕から良いスタートをきりたい。
──そんな中、ウィルスの陽性反応が検出されます。その時の状況を教えてくれますか?
陽性反応が分かった時は身体に倦怠感があり、それは3日か4日か続いて、常に鼻が詰まっていたけど、深刻な状態ではなかった。最終的に回復するまで1週間くらいかかったかな。コンディション面で言うと、トレーニングできない空白の期間はあったけど、長くはなかった。陰性反応が出た後は、再び友人のジムに通っていたよ。
感染によって命の危険を感じるようなことはなく、僕にとっては夏風邪を引いたような感じだった。高熱が出たとか体調をひどく崩したと報じられる例もあれば、ラッセル・ウェストブルックのように特に問題がなかったケースもある。人によって大きく症状が違うのが奇妙な感じだった。僕は重篤化することがなくて良かったよ。
──ニック選手がオフを過ごすフェニックスのあるアリゾナ州は、アメリカでも感染者が多い代表的な地域です。そこは、日常生活からかなり気を使っていましたか。
アリゾナは感染のホットスポットになってしまった。戻って来た最初の頃は、みんな感染はそれほど広がっていないと言っていたんだけど、経済活動の制限を緩和して、いろいろな施設がオープンになると一気に拡大していった。そういう状況もあって、僕たち家族は基本的に自宅で過ごしていた。
いつもと違う夏になったけど、ワールドカップもあって家族と離れ離れになっていた昨年と違って、今年はずっと子供たちと一緒に過ごすことができた。息子とはよくプールに行っていた。まだ2歳半だけど、どんどん泳げるようになっていくのを見るのは楽しかったよ。もう4歳とか5歳児用の服を着ていて、すくすく大きくなっている。バスケットボールも少しはするけどあまり興味がなくて、今は水泳が楽しいみたいだ。と言うより、スポーツより車のオモチャの方が好きみたいだね(笑)。
──川崎では駅前に新しい水族館がオープンしました。
水族館は息子が大好きだから、それはチェックしないと! スイミングプールも見つけないといけないから大変だ(笑)。
「昨シーズンの最後よりも強いチームで開幕を迎えたい」
──新シーズン、川崎は主力が揃って残留しました。新加入選手はおらず、昨シーズンの顔ぶれで戦うことになります。
昨シーズンに良い成績を残せたから、そのままのメンバーで戦うのは理にかなっているんじゃないかな。また、今のコロナ禍では新しい選手のリクルートも難しいので、妥当な選択だと思う。僕はこの陣容に満足している。僕たちは互いのことをすでに分かっている。マティアス(カルファニ)とパブロ(アギラール)は一緒にプレーしたことはないけど、みんなシステムを理解していて、新たにイチから学ぶ必要はない。そのおかげでチームの連携をより早く高めていけるはずだ。
僕たちにはいろいろな強みがあるし、それをもっと強化していくことで相手を苦しめたい。攻守の両面において改善の余地はあるけど、まずは昨シーズンの最後よりも強いチームで開幕を迎えられるようにしたい。
──欧州で実績ある選手がどんどん入って来ています。他チームの動向についてはチェックしていますか?
いくつかは知っている。例えば(セバスチャン)サイズが千葉に行ったり、アルバルクがデション・トーマスと契約したりね。彼のプレーはTBT(オープン参加では全米最大のトーナメント)で見たよ。複数の選手の移籍を興味深く見ていたけど、僕は自分たちの戦力に自信を持っているから心配はしていない。
欧州のトップ戦線で活躍していた選手たちが来るのはBリーグにとって良いことであり、彼らがどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだよ。ただ、日本のバスケットボールもヨーロッパほどではないけど、高いレベルにある。そして日本と欧州や他の国とはまたスタイルが違う。彼らがアジャストできるのか、そこは未知数なところもあるだろうね。
──レギュレーション変更で、ガードやウイングの外国籍選手を取るチームが出てきたことをどう感じていますか。
レギュレーションの変更が試合にどんな影響を及ぼすかは、実際にシーズンが始まってみないと何とも言えない。その中でも北海道とか三遠が外国籍のポイントガードを獲得しており、そういった変化に対応する必要はある。ただ、川崎の日本人選手たちなら外国籍のガードやウイングの選手に十分にマッチアップできると思っている。そこに関しては心配していない。また、アウトサイドをしっかり守ってくれれば、ゴール下には僕やジョーダン(ヒース)、マティアスがいるしね。
「新シーズンも積極的に打っていくつもりだ」
──佐藤賢次ヘッドコーチなど、チームスタッフとはアメリカにいる間も連絡を取っていましたか。昨シーズンは、これまでで最も3ポイントシュートを打っていました。役割の変化を感じる部分はありますか。
ケンジとはアメリカに滞在していた時もチームについて何度か話した。陽性反応が出た時もすぐに連絡をくれた。僕の役割はチーム加入当初に比べると変わりつつある。今の川崎は、昔のようにポストアップからシュートを打つことが多くはなく、外からのシュートが増えているから、僕も適応しないとね。自分には3ポイントシュートを多く決められる力があると思っていて、この夏もたくさんシュート練習を行い、アウトサイドシュートは向上したと思う。新シーズンも積極的に打っていくつもりだ。
──このオフ、これまで一線で活躍してきたベテラン選手の引退が重なりました。これからも現役を続ける予定でしょうが、年齢もあり自身の引退について考えることはありますか。
自分のセカンドキャリアについて考えることもある。でもまだまだ選手としてプレーを続けるつもりだから、引退後の自分に何ができるのかを深く考えることはない。僕には多くの知識があり、バスケットボールで良いキャリアを築くことはできた。だから子供たちのコーチをやったり、彼らの成長の手助けをするのが向いているかもしれない、と感じるくらいだ。
──息子のハドソン君が、お父さんはバスケットボール選手だとしっかり認識するまでプレーを続けたい気持ちはありますか?
もしかしたら今年、そうなるかもしれない(笑)。妻と子供が会場で観戦できるようになり、プレーしている僕を「ダディ」と呼んで応援してくれたら素晴らしいね。
──最後に、新シーズンの開幕を待つファンへのメッセージをお願いします。
最後に試合をしてから、かなり長い時間が経ってしまった。試合が待ち遠しいし、今はチーム練習も待ち遠しいよ。1人でワークアウトをするのと、みんなで練習するのは違う。単純にバスケットボールが恋しいね。それにシーズンの開幕は常にエキサイティングだ。今年もB1リーグでの開幕ゲームであることも知っている。
ファンのみんなには、「I’m Back」と言いたい。会場に来られるようになったら試合を楽しんでほしい。川崎に長くいるから、とどろきアリーナに来る多くのファンの顔を僕はかなり覚えているんだ。多くの人々が僕たちのゲームを楽しんでくれているのは分かっているし、みんなと再会できるのを楽しみにしているよ。
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