島根スサノオマジックのヘッドコーチとしてBリーグ開幕を迎えた勝久マイケルは、大混戦のB2で見事に昇格を勝ち取ったが、チームは指揮官交代を選択。栃木ブレックスのアシスタントコーチとして1年を過ごし、2008年夏に信州ブレイブウォリアーズのヘッドコーチに就任した。信州では1年目にチームをB2優勝に導くも、クラブがB1ライセンスを取得できずに昇格は見送りに。そして迎えた昨シーズン、新型コロナウイルスの影響で打ち切りとなるまでに40勝7敗の成績を残し、クラブもB1ライセンスを取得したことで昇格を果たす。勝久にとって新シーズンは、満を持してのB1初挑戦となる。『日々成長』を掲げプロセスにフォーカスする姿勢は、B1へと戦いの場を移しても変わることはない。
「龍猛のポストプレーが我々の新しい武器に」
──この2年間で築いた信州のバスケはどんなスタイルなのかを説明してもらえますか。
我々はピック&ロールがすごく多いチームです。先ほどの話と同じですが、B1ではこれまで以上に相手にサイズがあり、フィジカルも強いので、もらいたい場所で簡単にボールがもらえず、ピック&ロールも簡単にはやらせてもらえなくなるでしょう。もちろん新しいメンバーにもやってもらいますが、まずは今までここでプレーしている西山(達哉)、大崎(裕太)、(栗原)ルイスがサイズとフィジカルがある選手を相手に、B1レベルのピック&ロールをやれるかが非常に大事になります。
そこにプラスして、新加入の選手たちがいかに早く我々のバスケットを理解できるか。その理解のスピード感は非常に大切です。毎年時間はかかります。少しずつ覚えて強くなってきます。 ( 増子 )匠は身体能力があって、ディフェンスでもオフェンスでも我々のバスケットを理解して遂行できるようになれば、B1でもとても良い2ウェイプレーヤーになれると思います。ピュアシューターのエド(山本エドワード)も、この2年間一番多く3ポイントシュートを打っている我々にとって大事な武器です。頭もとても良く、ハートもあってとても期待しています。
──注目される新加入の一人が小野龍猛選手です。まだまだ老け込む年齢ではないし、活躍が期待されます。
龍猛はここ2シーズン、本人が望むようなプレータイムが得られなかったと思います。彼の一番の強みであるポストアップ、そこからのクリエイトにも期待していますし、もう一度大きな役割を持つプレーヤーとして活躍してほしいです。今までの我々には3番ポジションのポストプレーは少なかったので、新しい武器になってほしいです。今まで信州にいた選手たちは全員絶対B1でやっていけます。彼らに対しては本当に自信がありますし、彼らと一緒にこの挑戦ができるのは本当にうれしいです。ですが、チームとしてもですが壁にぶつかる事もきっとあると思います。そこで龍猛の自信でマックとウェインとともにチームを引っ張ってもらわないといけないこともあると思います。そういう面でも大きな存在になってほしいです。
──韓国のヤン・ジェミン選手はどうでしょうか。プロデビューシーズンから結果を残せると思いますか?
U16からU19まで、スペインで、大学でと映像はたくさん見ました。電話で会話した時もすごく良い選手だという印象でした。信州は帰化選手がいないのでアジア枠が活用できました。2mのサイズがあって複数のポジションを守れるので、龍猛と同じような期待ができると思います。我々には今までいなかった感じのプレーヤーなので、そこは楽しみですね。ですがプロ経験のないルーキーですし、まだ21歳です。韓国ですごく期待されているタレントであっても、最初からプレッシャーを掛けすぎたくはありません。
まだ来日しておらず、一緒に練習できていないので分かりませんが、いろんな役割とポジションができそうだし、ピック&ロールもポストプレーも、ビッグマンとしてプレーさせることもあるかもしれません。とても面白いプレーヤーなのは間違いないので、楽しみにしています。
「ブースターの皆さんと喜びを分かち合いたかった」
──厳しいのは覚悟の上だけど、自分たちの作り上げてきたバスケットをどう出すかが楽しみ、といったところですね。
そうですね。やっぱりメンタリティが大事になります。我々はチャレンジャーであり、その気持ちで毎試合を最後のゲームかのように全力で戦わないといけないですけど、同時に自信を持って、相手に代表選手がいるから遠慮するみたいなメンタリティでやっては絶対にダメです。思い切って立ち向かって、そのメンタルに持っていくまでの流れをどう作るか。
最初のどこかのタイミングで絶対に壁にぶち当たるとは思います。壁に当たって乗り越えて、慣れて、自信に変えていく。いろんな経験をしながらメンタルを強く保って戦っていくことが何より大事だと思います。
──新シーズン、もう一つ難しいのは新型コロナウイルスの影響にどう向き合うかです。これについてはどう考えますか?
昨シーズンが中止になる前に試合をやるかどうかの判断があり、そこですごく考えさせられました。すごく大変だったのが、今週の試合が中止になって、来週やるのかどうかが金曜まで分からない中でメンタルをどう持っていくか。そこは我々が目指すチームの話に戻るんですけど、自分たちにやれることをコントロールする。昨シーズン中止になる前、無観客での試合は西宮ストークスが相手で、我々のライバルである強豪でした。そこに2連勝できたのはメンタルのプロセスが大きかったと思います。
きっと今シーズンも試合が中止になったり、選手に陽性反応が出たり、いろんなトラブルが起きると思います。でも、そんな時にこそメンタルの強さが問われます。たとえ何があっても自分たちにコントロールできる部分にフォーカスできるチームを、今シーズンも目指してやっていきたいです。
──それでは最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
昇格を決めた報告を画面越しでしかできなかったのを残念に思っています。昇格って滅多にないことですから、本当ならコートでブースターの皆さんと喜びを分かち合いたかったです。そういった感動の瞬間、自分たちにとっては一生の思い出を信州のブースターの皆さんと一緒に経験できなかったのは悲しいです。
新シーズンはB1というトップステージに立ちます。ここでは一つひとつの試合が我々にとっては大きなチャレンジになります。それを一緒に戦ってもらって、喜びを分かち合えなかった昨シーズンの分まで、新しい思い出を一緒に一つひとつの試合で作りたいです。今は大変な時期ですけど、いずれまた試合会場で皆さんと会えることを楽しみにしています。