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プレーオフ1回戦敗退も、自身の価値をあらためて証明

4月24日、ヒートとスパーズはそれぞれ1勝4敗でプレーオフ敗退が決定。それとともに、両チームを象徴するベテランの去就が注目されることになった。ヒートのドウェイン・ウェイド、そしてスパーズのマヌ・ジノビリだ。ウェイドは36歳、ジノビリはこの夏に41歳の誕生日を迎える。

スパーズはウォリアーズ相手に敗退。本来の強さを取り戻した『王者』を相手にシリーズを通して苦戦を強いられたが、ジノビリの奮起により1勝を挙げて意地を見せた。敗れた第5戦にしても最後までプライドを捨てず全力プレーを貫き、その中心にはジノビリがいた。

試合終了のブザーが鳴ると、ウォリアーズの指揮官スティーブ・カーはジノビリと固い抱擁をかわした。指揮官はハグをしながらジノビリに「現役を続けよう。そうしない理由がないじゃないか。君のプレーをもっと見せてくれ」と伝えたことを明かしている。

ジノビリ自身は現役続行を明言していないが、「今シーズン限りでの引退が濃厚」との報道が出た時にはこれを明確に否定している。スパーズで17年目のシーズンを迎える可能性は十分にあると見ていいだろう。

ヒートはセブンティシクサーズの若さに飲み込まれる形で敗れた。こちらも最終戦まで互いの意地がぶつかり合う激しい試合となったが、終了のブザーとともにノーサイドで両チームの選手はハグで健闘を称え合った。

ベン・シモンズやジョエル・エンビードと固い抱擁を交わして引き上げてきたウェイドは、「彼らは成長している。俺たちからもまた何かを学び取ったはずだ。彼らがNBAの未来だ」と、次代の主役を担うであろうシクサーズのタレントたちについて語る。特に、エンビードについては「NBAがあの大きな手の中にあるなら安心だ」、そしてシモンズには「クリーブランドのあいつみたいだ」と、メディアを喜ばせる表現で称賛している。

そのウェイドはNBA15年目のシーズンを終えて、現役引退の可能性もある。試合後の会見に詰めかけた多くのメディアを「その必要はない」とウェイドはなだめた。「ずっとバスケット優先で家族から離れてきたから、一度戻ってじっくり考える」

スパーズ一筋のジノビリとは対照的に、ウェイドはこの2シーズンで流転を強いられた。再建期のブルズ、優勝候補のキャバリアーズと、立場の違う2チームでいずれもフィットせず。ヒート復帰で安息の地を見いだした。この環境でもう1年続けるか、それとも選手キャリアに区切りをつけるか。続けるには彼自身がモチベーションを見いだせるだけの目標が必要となる。

ジノビリもウェイドも敗れたとはいえプレーオフで自身の存在価値をあらためて証明した。チームもファンも(時には相手チームのヘッドコーチも)彼らのプレーが見納めになることは望んでいない。だが、現役生活を続けることで犠牲にするものも少なくない。コートを離れて気分を鎮め、自身とじっくり向き合って決断を下すことになる。