文=丸山素行 写真=鈴木栄一

「最初吹き飛ばされて『ヤバっ!』と思って(笑)」

女子日本代表は8月のアジア競技会、そして9月のワールドカップへ向けた強化合宿を実施している。代表候補52選手には、2名の現役高校生が名を連ねたが、その一人が八雲学園3年の奥山理々嘉だ。

「日本のトップの先輩方と同じコートに立って練習できて、貴重な時間だなと思いました。新たなことをたくさん吸収できるのがすごい楽しいです」と奥山は目を輝かせる。

奥山は身長180cmながら3ポイントシュートも打てる広いシュートレンジと、速攻の先頭を走ることのできるスピードを併せ持つ。昨年のウインターカップでは、1試合で62得点を挙げ最多得点記録を更新するなど、抜群の得点力を誇る。

そんな『超高校級』の奥山だが、「当たりも強いし、スピードも速い」と日本のトップ選手たちとのバトルに苦戦した様子。それでも「時間が経つにつれてできることが増えてきている」と自信を持ち始めてもいる。

奥山は今日の練習中、パワーに屈しコートに倒れこむシーンがあった。「最初、吹き飛ばされて『ヤバっ!』と思って(笑)」と笑みを見せたが、「フィジカルは足りないですね」と課題を挙げた。高校ではマシンを使ったトレーニングをしておらず、自重トレーニングしかしていない。それではトップ選手に対しフィジカル負けしてしまうのも仕方ないが、「走って下半身もつけているので、その割には強いですけどね(笑)」と自信がないわけではない。

年齢的には身体がようやく出来上がってきた頃で、フィジカルを問うこと自体がナンセンスなのかもしれない。それでもA代表の指揮を執るトム・ホーバスは「若い選手はよく身体は弱いと言うが、あの2人(高校生の奥山と今野紀花)は全然問題ない。プレーも面白い」と若い2人の可能性を高く買っている様子だ。

「日の丸を着けたいという目標があります」

今回の合宿は若手を呼んで経験を積ませるものではなく、れっきとしたサバイバルレースだ。当然、次回の合宿に呼ばれない選手も出てくるし、生き残ればアジアの舞台、世界の舞台へと立つことになる。奥山は「選考だと分かっているんですけど、勉強したい気持ちが強いので、他の人を蹴落とすという思いは足りないと思います」と語るが、それは向上心がすべてを上回っているから。「第1次合宿を終えても残ることができれば、もっとたくさん教えてもらえますし、どんどん上手になれると思っているので、残りたい気持ちはすごいあります。

女子日本代表の最大の目標は東京オリンピックでメダルを獲得すること。「私は2年後のオリンピックとか、その先のオリンピックで代表になって活躍したいです。日の丸を着けたいという目標があります」と奥山は自身が立つべき大舞台をしっかりと見据えている。

今回初めて代表候補に選出された奥山だが、そうした大きな目標を胸に秘めているため、「この場所に来たいたとは思っていましたが、まだ喜べないです」と現状に満足していない。

まだあどけなさが残る顔つきが物語るように、彼女には伸びしろしかない。20歳での五輪出場を目標に研鑽を積む、奥山の挑戦は始まったばかりだ。