文=立野快 写真=B.LEAGUE

「気持ちを切らさずにディフェンスできた」

4月15日、千葉ジェッツは西宮ストークスとの対戦に85-69と勝利。東地区の優勝マジックを6に縮め、西地区首位の琉球ゴールデンキングスと40勝13敗で勝率が並んだ。昨シーズンのチャンピオンシップでは、セミファイナルをホームコートで開催したチームが決勝に進出している。現状、全体勝率2位の座は千葉と琉球が争う状態。レギュラーシーズン残り7試合、ホームコートアドバンテージを取りに行く戦いも佳境を迎えている。

前節はシーズンを通して苦戦が続く西宮に危なげなく連勝。富樫勇樹は「今日はシュートはなかなか当たらなかったですけど、それでも気持ちを切らさずにディフェンスできたので良かった」とハードなディフェンスを40分間継続できたことを勝因に挙げた。

第2戦での千葉はトランジションオフェンスに並ぶ武器である3ポイントシュートが23本中わずか4本成功(17.4%)と不発。第1戦は27本中13本(48.1%)を決め大量106得点を挙げたが、第2戦では思うようにスコアが伸びなかった。小野龍猛や石井講祐といった3ポイントシュートの名手がオープンの好機を決めきれない状況、攻撃の舵取りは難しかっただろうが、富樫は「そういう時は仕方ないですね」と平然としたものだ。

「無理矢理打ったシュートではなくて、しっかりキックアウトだったり、トランジションで誰かが走ってくれたおかげで外が空いて、それを打った。それが外れたら仕方がない。今日の試合に関しては気にすることはないと思います」

「自分たちのスタイルを徹底できるチームは強い」

シーズンも終盤戦。プレーオフ進出は確定したが、地区優勝、さらには3地区間での順位争いと話題は尽きず、目の前の対戦相手とは別のところに意識が向きがちな状況となっている。それでも富樫は、もともとの目標をブレずに見据えている。

「優勝はチーム全員がシーズン前から向かって行っているところなのでもちろんですけど、それ以上にチームとして残り7試合をどう戦うか、良い雰囲気でチャンピオンシップに入れるようにというのが一番です。結果はそれからついてくるんじゃないかと」

それは富樫だけでなく、千葉の選手に総じて感じられる部分だ。大野篤史ヘッドコーチは勝っても負けてもチームがどの部分にフォーカスするべきか、くどいほどに説く。富樫が不動のポイントガードになり、大野ヘッドコーチのバスケを追求するようになって2シーズン目が大詰めを迎え、ハイエナジーを出す守備からのトランジションバスケットは確たるものとなった。

優勝を目指す上でライバルとなるチームの条件を聞くと、富樫はスタイル云々ではなく、『どれだけ徹底できるか』が問われると答えた。「勝率の高いチームは自分たちのスタイルをちゃんと遂行した結果として勝っています。アルバルク東京であればスペースの使い方、栃木ブレックスだったらディフェンスで、そこは一つひとつルールが違うんですけど、それを徹底できるチームは見ていて『すごいな』と思います」

優勝という目標に向け、1試合1試合への集中を増す

そういう意味で、自分たちのバスケットを徹底するチームとして富樫が挙げたのは、昨シーズンのチャンピオンシップで自分たちを破り、初代王者となった栃木ブレックスだ。「昨シーズンから試合回数が一番多いというのもありますし、加えてジェフ・ギブス選手という一番やりたくない相手がいますので。個人的に印象が良くないな、やりづらいな、という感覚があります」

栃木のディフェンスを意識する富樫だが、ただインタビューを通して強調していたのは1試合1試合、自分たちに集中して戦っていくことだ。今シーズン限りの引退を発表した伊藤俊亮の引退について聞かれると「2年間一緒にいて、スタッツに残らないところでもチームをたくさん助けてくれた選手なので、最後は勝って一番いい終わり方で終わってもらえるように頑張りたい」と語ると同時に「ただ、それでシーズン前からの目標である優勝というゴールや意識が変わるということではない」と目標である『優勝』への気持ちは不変であることを強調した。

1試合1試合を集中して戦っていく。これは栃木が東地区最下位に沈んでいた時期に田臥勇太が強調していたことでもある。目の前の試合に全力を尽くす、日本を代表するプレイヤーの共通する意気込みを感じた。『優勝』という確固たる目標に向け、富樫は格段に集中力を増している。