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映画化されても不思議ではない物語にコービーも関心?

2018年4月10日は、アンドレ・イングラムにとって生涯忘れられない一日になった。2007年からDリーグ(現Gリーグ)で研鑽を積み、プロバスケットボール選手としての腕を磨き続けた彼が、32歳という年齢でNBAデビューの機会をつかんだ日になったからだ。

マイケル・ジョーダンも、コービー・ブライアントも、レブロン・ジェームズも、今でこそNBA史上最も偉大な選手の一人として称えられているが、どんなスター選手であれ、運命を変えるタイミングが違えばイングラムと同じポジションに置かれていたかもしれない。もしイングラムと同じ立場に立ったら、いつやってくるか分からないNBAでの機会を、果たしてどれだけ待てるだろうか?

10日のロケッツ戦を終えて『NBA on TNT』のインタビューを受けたイングラムは、夢をあきらめようと思ったことはなかったかと質問され、「もちろん、あった」と答えている。

「でも、毎シーズン、もう少しでNBAに行けるんじゃないかと思う自分もいた。海外リーグでプレーする機会も蹴った。キャリアを始めた頃から、Dリーグ、Gリーグがベストの場所だと思っていた。だから身体が動かなくなるまで、もしくは妻に『もう引退して家に帰ってきたら』と言われるまでは続けようと思っていた」と答えた。

選手として年間2万ドル(約210万円)も稼げなかった時代には、アメリカン大学で物理を専攻した経験を生かし、数学の指導教員をして家族を養っていたという。そのイングラムがチャンスを待ち続けた間に出場した試合数は、Gリーグ史上2位の384試合に到達していた。

デビュー戦でも5本中4本を成功させて証明した通り、イングラムはGリーグ時代から優れた3ポイントシューターとして知られている。この10シーズンで成功させた3ポイントシュートはGリーグ歴代1位の713本で、昨シーズンはなんと成功率55.1%を記録。ロケッツ戦でも動じることなく次々に3ポイントシュートを成功させ、素晴らしいデビューを飾った。

この『シンデレラストーリー』に、レジェンドのコービーも関心を示している。プレーオフ終了までのテレビ番組『Detail』のホストを務めているコービーは、イングラムについて「ゴージャスなストーリーだ」とコメント。現役引退後は映像作品の制作に力を入れているコービーは、先月『Dear Basketball』という短編作品でアカデミー短編アニメ賞を受賞し、映像分野でも偉業を成し遂げている。イングラムの話を映画化するつもりがあるかを聞かれると「そうなるかもしれないね」と笑顔で答えた。

もしコービーがイングラムのストーリーを実写化すれば、プロ選手としての視点が加わり、間違いないくユニークな作品に仕上がる。キャリア2つ目のオスカー獲得に繋がるかもしれない。

イングラムのレイカーズとの契約は今シーズン終了までのものだった。レイカーズはプレーオフ進出を逃したため、イングラムは再びフリーエージェントになる。夢に見た舞台に立てた以上、この物語をここで終わらすのはもったいない。イングラムは、この夏もさらなるレベルアップのためトレーニングを続け、いつ出番が回ってきても対応できるように準備を整えておくはずだ。