3連敗で脱落しかかるも、栃木撃破で踏みとどまる
レバンガ北海道は25勝26敗でB1東地区5位。ワイルドカードでのチャンピオンシップ出場権を有する4位の栃木ブレックスとは3ゲームの差がある。東地区に強豪が偏る状況で苦戦は避けられないが、昨シーズンと比べれば北海道はすべての面でレベルアップし、堂々たる戦いを演じている。もちろん、チャンピオンシップ進出をあきらめてはいない。千葉ジェッツに連敗し、栃木とのゲーム1を落とした前節、ゲーム2では見事なカムバックを見せ83-77で栃木を撃破。チャンピオンシップ進出に望みをつないだ。
水野宏太ヘッドコーチは第2戦のカムバックについてこう語る。「昨日の負けは痛かったので少なからず落ち込みましたが、ウチの良いところは切り替えがしっかりできるところ。良い意味でそこにとらわれすぎないところです」
「他の結果に望みをかける状況ですが、一つもあきらめずに残りの試合を戦い、チャンピオンシップ出場への希望を持ち続け、最後まで戦っていきたい」。その言葉どおり、北海道は最後までチャレンジを続けるだろう。
残り9試合で3ゲーム、直接対決で負け越しているので実質4ゲーム差。「実際のところ厳しくなってきています」と、指揮官はチームの置かれた状況を理解しつつ、下を向こうとはしない。「今日も試合後に多くのファンに『私たちはまだあきらめていません』と、そういう言葉をいただいていますし、自分たちとしても白旗を上げるつもりはありません。そのためには目の前の1勝を取っていくことです」
「言い訳から何かが生まれることはない」
北海道は不屈のチームだ。Bリーグ開幕から何度もアクシデントに見舞われたが、そのたびに立ち上がって前進し続けてきた。今回、千葉と栃木に3連敗して気持ちが切れてもおかしくなかったが、逆に奮い立ってブレックスアリーナで栃木に競り勝った。個人ではなくチームとして、これだけ気持ちの強さを出せる秘訣は何だろうか?
水野ヘッドコーチはこう答える。「これがまた離されたら、そこは人の気持ちなのでブレそうになるかもしれません。ですがこのチームは、昨シーズンも結構タフな状況で、10人で始まってケガ人が出て7人になって、それでも降格しないように争って、プレーオフに行かずにシーズンを終えました。選手は変わっていますが、そこは変わりません」
彼が言う『そこ』とは、選手の対応能力の高さだ。「新しい選手が入ってくると馴染むまでに時間がかかるのが普通ですけど、ウチはその状況や逆境に慣れている部分があります。昨シーズンで言えば(ジョーダン)バチンスキーや(ジャマール)ソープが加入してきたりの慣れのところ。良い意味でそこにとらわれないようアプローチしています。『それが理由でできなくなった』という言い訳から何かが生まれることはないので。その中で生まれるものが何かということを常に見いだしていこう、という話はしています」
そんな水野のヘッドコーチとしてのポリシーを問うと、「自分がいるチームによってメンバーが変わったりリクルート力が変わる中で、自分のポリシーを貫くことができる状況はないと思うんです」という答えが返ってきた。
「なので私が目指したいのは、どういう状況、どういう選手がいる中でも、ある程度一定のボールと人が動く連動性だったり。そういう大切にしたい根幹があって、そこに少しずつ肉付けができています。それだけじゃなく、選手の一人ひとりの強みを生かすために、自分が個性をシステムの中に柔軟に入れていく、対応できるような力を持ちたいです」
逆境から得た知見を積み上げタフなチームに
簡単に言えば『臨機応変』。若き指揮官はそうやってチームの舵を取り、アクシデントを何度も乗り越えてきた。ただ、直感に頼った行き当たりばったりでは成功は続かない。昨シーズンも今シーズンも、北海道は危機を乗り越えて前進している。そこには舵取り役の手腕があるはずだ。
「例えば──」と水野は語り出す。
「タンスを開けて、そこから引き出せるものの数を増やし、今のチームにはこれが当てはまる、この選手にはあれを当てはめればいいのかな、ということです。逆境の中にあったこの数年、そういう引き出しの中身を少しずつ増やすことができてきました」
逆境を言い訳にせず、知見を積み上げて対応する力を増やしていく。それはヘッドコーチとしての水野だけでなく、レバンガ北海道というチームとしての成長でもあった。ただ、話はそこで終わらない。指揮官は今、もう一つ上のレベルの課題に向き合っている。
「ところが今度は、引き出しの中身が増えれば増えるほど、そこから効果的なものを選ぶ判断力や決断力が必要になってきました。そこで清永貴彦統括であったり、今シーズンはアシスタントに上野(経雄)くんが入ってくれて、なおかつアドバイザーコーチに内海(知秀)さんがいてくれて。自分の持っていない経験がある人に支えてもらっています。そういった意見をもらいながら、選んでいく鋭さを身に着けていくのが今であり、それができるようになってきたとは正直思っていないので、精度を上げていかないといけません」
「そういうところの反省は尽きないです」という水野ヘッドコーチ。まだ35歳と若いが、NBL時代には外国籍選手1人で戦うなど修羅場をくぐり抜けた経験を自分の引き出しに蓄えてきた。アクシデントのたびにタフになっていく北海道のシーズンは、まだ終わらない。