富山グラウジーズのかつてのエース、城宝匡史が3年ぶりに復帰を果たした。38歳になったが、彼自身は身体的な衰えを感じてはおらず、むしろ昨シーズンにペップ(ジョゼップ・クラロス・カナルス)の激しいプレッシャーディフェンスを掛け続けるハードなスタイルに適応したことが自信になっている。愛着ある古巣に戻った彼は、『個性派集団』である新たな富山に大きな可能性を見いだしている。目標はチャンピオンシップ進出、そして彼自身は3ポイントシュートのB1記録を塗り替えると意気込む。
「この年齢だから何かを変えようというのは特にないですね」
──新潟で1年、福岡で2年を過ごして、bjリーグ時代から6シーズンを過ごした富山へ復帰することになりました。まずは福岡での2年間を振り返りたいのですが、昨シーズンはB2でのプレーとなって、モチベーションを保つのが難しかったのでは?
福岡での1年目の最後に会社の経営状態が悪くなってしまい、B2に行くことになりました。正直なところ、B2でプレーすることにしんどい思いはありましたね。B2の中でしか取り上げられない、活躍してもしなくても興味を持ってもらえない、という感覚です。B1で活躍した時の反響のようなものが感じられず、違いを感じました。
その中でモチベーションを失うことなく自分のプレーをすることが大事だと思ってやってきましたが、20点30点取っても大して反響がないとなると、やり甲斐をどこで感じるかが難しかったのは確かです。そんな中で年齢もアラフォーになってきて(笑)。
──もう38歳ですからバリバリのアラフォーですが、ケガさえなければ十分なパフォーマンスが出せる印象です。これは昔と変わらない感覚でやれているのか、頭を使うとか意識の面で補うことができているのか、どちらですか。
バスケをやることについては準備も練習も今まで通りで、若い時と同じことをずっとやって、それをベースにしてコーチが求めることを遂行しています。この年齢だから何かを変えようというのは特にないですね。昨シーズンは一回もケガをしていないんです。開幕前にちょっと肉離れしただけ。アラフォーだから身体が動かないということはないし、まだまだ突き抜けて、このスタイルでやっていくつもりです。
昨シーズンにしても、気持ちの部分で少し大変だと思いながらもペップの求めに応じて人一倍ディフェンスを頑張りました。ペップは30分ぐらい使ってくれるコーチだったので、その求めに応えなきゃいけないという気持ちが強かったです。試合だけじゃなく練習からハードなので身体へのダメージが大きくて、今まで以上にケアに時間を費やしたのが今までとの違いですね。でも僕らはペップの下では15試合しかやっていないんです。あのバスケットを60試合やると考えたらすごいことだなって(笑)。
──それでも新シーズンの契約が決まるまでには時間がかかりました。
本当は福岡でもう1シーズンやることも考えていました。ペップのバスケットは本当にキツかったけど、彼の下でやった15試合で僕は結構すごいスタッツを残しているんです。ペップも残ってほしいと言ってくれていたし、この人の下で1シーズン通してやってみたい気持ちもありました。でも、やっぱりB1でプレーしたかったです。
──実際に富山と契約し、戻って来た感触はどうですか。
富山はやっぱり僕にとって特別で、6年間プレーしたチームに戻れるチャンスは今しかないと思いました。実際にこっちに来てからウェルカム感がすごいんですよ。富山を離れている間も僕を応援してくれた人がたくさんいるし、みんな「おかえり」と言ってくれて、思っていた以上の反響をもらって気持ち良く戻らせてもらいました。
「とりあえず今から練習ではすごく走ってます」
──今回は『ユースチームテクニカルアドバイザー』を兼任すると発表されています。具体的には何をしますか?
僕はこれまでもクリニックで全国を回っていて、引退後にはコーチをやりたいと思っています。そういう気持ちをチームに伝えて、今後のプラスになると考えました。チームとしても現役選手がユースで指導することはプラスだし、他のチームがまだやっていないことでもあるし、そこで合致した感じですね。
自分が教わる立場だったら、引退後の選手よりも現役選手に教えてもらいたいし、その選手が試合でプレーするのを見られるのも良いですよね。教えることで今まで見えていないことが見えて、プレーにも良い影響を出るといいですね。
──3年ぶりにグラウジーズに戻って来ましたが、変わらぬ顔は水戸健史選手と宇都直輝選手だけですよね。
そうなんですよ。水戸とは富山にいた6年間ずっと一緒だったけど、宇都とはB1の1年しかやっていないんです。本当に若手が多いチームになっていて、僕はしゃべって引っ張るタイプじゃないので、練習態度とかプレーで何か感じてくれたらと思ってやっています。でも、身体が動くうちは若手に負けたくないし、必死でやっていますよ。
この年齢になるとチームが若いとかはあまり気にしませんね。開幕に向けた準備は自分の中で決まっているし、周りがどうこうとは思わないので。一つだけ考えるとすれば練習で結果を出せば試合で使われるということで、ヘッドコーチの求めることを常にやっていこうと思っています。
──浜口炎ヘッドコーチが求めるバスケットはどんなものですか?
僕はこれまで外国人のコーチの下でプレーすることが多くて、日本人のコーチと一緒にやった経験があまりないんですよ。浜口さんは仙台、京都でやっているので知っているんですけど。どんなバスケットをするかはこれからですが、とりあえず今から練習ではすごく走ってます。スリーメンにしてもコンディショニング的なメニューでも走りまくってます。
ペップの練習も大変だったんですけど、中身は違いますね。身体へのダメージはペップの練習の方が大きいんですけど、こっちは長い距離を走ったり長時間走っていたり、メンタルに来ます。ですが休みもちゃんとくれるので大丈夫。今は練習でもファンダメンタルとか基礎的なことがすごく多くて、あとは走っているのでバスケをやっている感じがそんなにないんですよね。もうちょっとバスケがしたいなあって(笑)。でも、シューティングもすごくやっていますよ。
──浜口ヘッドコーチは就任会見で、城宝選手が思った以上にやれていると語っていました。
シューティングのことだと思います。毎日200本打って何本決めるかのデータをずっと取っていて、「今までずっと見てきたけど城宝がこんなに決めるとは思わなかった」と言われています。パートナーと交代しながら50本ずつ打つんですが、この前は3ポイントシュートで48本決めました。それで炎さんに「これまででも5本の指に入る」と言われて。今まで誰がすごかったかと聞くと、bj時代のデイビッド・パルマーや岡田優介の名前が出てきました。
でも50分の50を出した選手はいないと言っていたので、この夏に出したいですね。48本決めた時も最初の1本を外して、あと40本を過ぎて外したんですよ。40本以上は連続で決めてたから、行けなくはない(笑)。
「富樫と金丸が持つ3ポイントシュートの記録を更新したい」
──チームとしての目標はどこに置きますか?
東地区は強豪揃いですけど、チャンピオンシップには進出したいですね。でも宇都は優勝って言ってるから優勝です(笑)。
──目標は高く掲げておきましょう(笑)。最低でもチャンピオンシップ進出として、何が武器になるでしょうか。
このチームはみんな本当にシュートが上手いし、センスがあります。まだ始動したばかりで身体作りの段階で、ケミストリーはまだまだこれからですね。個性派とか言われますけど、多分皆さんのイメージよりはみんな仲が良いと思いますよ。これはみんなも思っているだろうけど、噛み合ったらすごい、ハマったらすごいチームになるというタレントは揃っていると感じます。
──個性的な選手が多いので、上手く噛み合うかどうかですね。
でも、みんなが心配するような感じは今のところ全く感じないですよ。岡田(侑大)にしてもちょっと天然だけどすごく良いヤツだし、宇都も久々に会ったらかなり大人になっていました(笑)。
良い選手が集まっているのは間違いないし、みんなすごく仲が良くてハードな練習を頑張ってやっています。チーム内の競争は激しくなると思うけど、僕自身はシュートはすでに良い感じなので、開幕に向けてしっかりコンディションを作っていきます。もともといたチームで練習場所も変わっていないし、昔トレーニングしていたジムにまた通うようになったし、全然ストレスを感じることなくやらせてもらっています。このメンバーでどんな感じになるのか、早く試合してみたいです。楽しみですよ。
──B1に戻って個人的には何が楽しみですか? また個人的な目標はどこに掲げますか?
地元の北海道で試合ができるのは楽しみですね。でもレバンガとのアウェーゲームは5月なのでまだまだ先です。折茂(武彦)さんが引退しちゃったのは寂しいですけどね。あとは京都には石谷(聡)が、滋賀には村上(駿斗)と今川(友哲)が入ったので、福岡のチームメートとマッチアップできるのも楽しみです。開幕戦が京都なので、石谷と一緒にコートに立てたらすごく面白いですね。
個人的には3ポイントシュートの成功数で、新潟の時に1試合10本を決めたんですけど、Bリーグの記録が富樫(勇樹)と金丸(晃輔)の11本なんです。だから現役のうちに12本か13本決めて更新したいですね。そのためにもプレータイムを勝ち取らないと。
──楽しみにしています。では最後に、富山のブースターにメッセージをお願いします。
新型コロナウイルスの影響で試合会場に行けるかどうかもまだ分かりませんが、『バスケットLIVE』もありますし、いろんな応援の仕方がこれから出てくると聞いているので、変わらず応援してくれたらうれしいです。僕としては富山の人たちにまたグラウジーズのユニフォームを着てプレーする姿を見てもらいたいので、しっかり準備して開幕を迎えたいと思います。新シーズンも1年ケガなく頑張るつもりですので、応援よろしくお願いします。