「天皇杯から3連敗できない、そういう気持ちが出た試合」
昨日、船橋アリーナで行われた千葉ジェッツとシーホース三河の第2戦。初戦を落とした三河が見事なカムバックを見せ、攻守ともに完璧な内容で102-84と快勝した。
鈴木貴美一ヘッドコーチが「やはり負けた後は勝たないといけないので」と勝負師らしいコメントをすれば、金丸晃輔は「どのチームもリスペクトしているので、相手が千葉さんだから勝たなきゃいけないというわけじゃありません。単純に、負けたまま帰れないという思いでした」と、この試合へ向けた強い気持ちを語る。
ポイントガードの橋本竜馬はこのカムバックを『プライド』という言葉で表現した。「今日はプライドだけですね。天皇杯から3連敗できない、そういう気持ちが出た試合でした。やっぱり気持ちが人を動かすので、そこは自分がまず表現したいですし、それがチーム全体に広がった印象です。それが自分の強さだし大事なことだと、こういう試合をしていていつも思います」
土曜の夜、橋本は敗れた第1戦のビデオを見ながら何が悪かったのかを考え、第2戦に臨んだ。「千葉さんがボールをプッシュして速攻を出すのに対して、自分たちはゆっくり持っていってしまい、相手の波に飲まれたのが一番の原因です。決められたとしても自分が早く向こうのコートに持っていき、プレーを円滑に進めることが一番大事だと思って試合に入りました」
チームが今シーズン目指している速い展開のバスケットを体現した第2戦。高速トランジションオフェンスを武器とする千葉に、また違ったスタイルのアーリーオフェンスで真っ向勝負を挑んだ。これが立ち上がりのロケットスタートを呼び、千葉に一度もリードを許さず押し切った。
「相手をリスペクトしながら、自分たちのやりたいように」
ディフェンスでは千葉のトランジションオフェンスのキーマンとなる富樫勇樹にフェイスガードで張り付き、コートのどこに行ってもマークを離すことなく、自由を与えなかった。「一つだけ決めていたことは、どれだけシュートを決められても同じことをやり続ける。その強度は落とさないようにしました」と橋本は明かす。
「シュートを簡単に打たせるのはもちろんいけないし、周りに散らされて他の選手が生きるようになると手が付けられなくなってしまうので、パスコースを消しながらシュートチェックにいくことを意識しました。結果的に28点取られましたが、本人のスキルを褒めるようなシュートもたくさんありましたし、そこは相手をリスペクトしながら自分たちのチームのやりたいようにプレーを行なって行くことを意識した結果、今日は勝てたのかなと思います」
昨日の富樫はシュートタッチが良く、6本の3ポイントシュート成功を含む28得点。ただし『大暴れ』とは行かなかった。橋本の術中にはまり、彼自身は活躍できたがチームのオフェンスは停滞。千葉の十八番であるファストブレイクからの得点は10で、三河の11を下回った。
「僕と富樫選手のスタッツを見ると『これはすごかったな』と思わざるを得ないんですけど、最終的に試合に勝ったので、そこが一番重要です」と橋本は笑みを見せた。
「本当に、最近はそういうのを意識していなくて、どうすればチームが勝てるかだけですね。チャンピオンシップに勝って優勝したい気持ちが日に日に強くなっているので、どんなことがあってもそこだけはブレない、そこをチームとしてやっていきたいと思います」
「どれだけ集中して勝つことにフォーカスできるか」
レギュラーシーズンも残すところ9試合。チャンピオンシップをどうしても意識する時期になってきた。昨シーズンのチャンピオンシップでは、セミファイナルで栃木ブレックスと対戦。2試合で決着が付かずに『第3試合』にもつれ、そこで力尽きた。
「去年はケガをしてしまって、最後の最後でスタートのメンバーに戻ってくることができました。まず一番大事なのはみんなが100%の体調で臨むこと。これができれば僕たちのチームは優勝できるチャンスがかなり大きいと思います。手応えとしても感じています」
昨日のゲームはシーズンベストとも言っていい出来で、チームとしての成熟度を感じさせた。コンディションを整えることに意識が向きがちな状況、橋本自身も「100%の体調で臨むこと」の重要さを口にしながらも、死にものぐるいで目先の1勝を取りに行く『プライド』もまた見せてくれた。一昨シーズンのNBLファイナルから、天皇杯も含めて三河は常に優勝のチャンスがありながら、タイトルを取り損ねている。「今度こそ」の思いはどのチームより強い。
「あとはチームとしてどれだけ集中して勝つことにフォーカスできるか、相手のやりたいことをやらせない、そういう気持ちでやっていけるかが大事だと思うので、そういうことが最後の最後でできていけば必ず優勝できると思います」
強いチームには優れたリーダーがいる。三河は間違いなくその条件を満たしている。
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