「キャリアで得た経験や読み、勝利への執念が生きた」
レバンガ北海道は栃木ブレックスとの直接対決を1勝1敗で終えた。水野宏太ヘッドコーチは第2戦の試合後、「2勝して栃木との差を1勝差にするという目標は叶わなかったですけど、千葉戦の反省を生かしたチームのパフォーマンスは良かった」と1勝の重みを噛み締めた。
第2戦は試合終盤まで緊迫したゲームが続いたが、勝敗を決定づけたシーンを一つ挙げるとするならば、ディジョン・トンプソンが残り32秒でプルアップジャンパーを沈めた場面だろう。3点差に迫られ重圧のかかる場面、時間を進めつつリードを5点に広げたという意味で、大きな得点だったことは間違いない。だが特筆すべきはそれが彼の『独断』だったことだ。
トンプソンは言う。「実は、あの場面はチームでプレーを決めていた。だけど、相手のディフェンスの状況を見て、そのプレーを遂行しても時間が足りないと思ったんだ。ショットクロックを見たらあまり時間がなかったから、ここは自分で決めてやろうという気持ちでシュートを打った」
チームが考えたプレーを選択し、その結果うまくいかないのであれば仕方がないと考えるのが一般的だが、トンプソンには冷静な判断力と、結果に対する責任を負う覚悟があった。NBAで培った経験は伊達ではない。そう感じさせられるシーンだった。
トンプソンはそうした土壇場での冷静さに関して、「試合の読みや、今何をしないといけないかという判断力をもともと持っていると思う。自分のキャリアの中で得た経験や読み、勝利への執念が生きたと思う」とそのシーンを振り返った。
チームプレーヤーの概念でチームに即フィット
トンプソンは約22分間の出場で14得点9リバウンド3アシスト2スティールを記録。内外から得点でき走力も備え、攻守に存在感を見せた。驚くべきはチームに合流してからわずか1カ月でありながら、プレシーズンから一緒にプレーしていた選手と変わらずチームとして機能している。
「複数のポジションをこなしているので、試合を通して動きを忘れてしまう時はある」とチームルールを覚えるのに一苦労しているようだが、自身のプレースタイルと北海道のスタイルが合致していることが良い相乗効果を生みだしているとトンプソンは言う。
「僕のフィロソフィーはセルフィッシュではなく、チームプレーヤーだという概念でプレーしている。北海道もチームプレーを大事にしているし、任せられる時は任してもらってるし、そこでうまくフィットしているんじゃないかな」
「チームを勝たせるためにという思いで北海道に来た」
水野コーチも「バスケIQが非常に高い」とトンプソンを称している。そうしたクレバーさに加え、ハリーバックなどどんな状況でも手を抜かない勤勉さも持ち合わせている。
特に外国籍選手に多く見られるのが、コールに納得がいかなかったり、フィニッシュを失敗したことでディフェンスに戻るのを怠る場面、あからさまに集中力を途切れさせてしまう場面。しかし、トンプソンは高いプロ意識でそれら無駄なプレーを否定する。
「しっかり戻るのは当たり前だし、チームが勝つことが大事だ。このチームを勝たせるためにという思いで北海道に来たし、毎回コートに立つときはそういう思いでプレーしている。そうしたプロ意識は常に持ってるよ」
北海道は栃木との激闘を制しチャンピオンシップ進出へ望みをつないだが、依然厳しい状況に置かれていることに変わりはない。それでも「相手が誰であろうと勝てるというのを証明し、チームにとって自信になったと思う」と、トンプソンは最後まであきらめない姿勢を見せる。果たしてトンプソンは、北海道をチャンピオンシップへ導く救世主となれるだろうか。