取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

連勝ストップも「ここまでやってきた選手を称えたい」

4月1日、秋田ノーザンハピネッツはライジングゼファーフクオカに71-81で敗れた。昨年12月24日の福島ファイヤーボンズ戦以来、実に4カ月ぶりの黒星。これで昨年末から続いていた連勝記録も22で途切れることになった。

それでも44勝5敗。B2全体首位の座は揺るがないが、40勝9敗で全体2位につける福岡に敗れたのは良くない予兆となるかもしれない。秋田の目標は1年でのB1復帰であるとともに、もう一つ「B2優勝」を掲げているからだ。B2プレーオフの決勝、今の勝率どおりで順当に行けば両チームが顔を合わせる。ここで福岡に自信を付けさせてしまったことは少々気掛かりだ。

それでもヘッドコーチのペップ・クラロスは「今日は福岡のほうが強かった」と敗戦を素直に受け入れるとともに相手を称え、「12月から続いていた連勝が今日で途絶えましたが、負けたことを選手たちに怒るのではなく、これまでやってきた選手たちを称えたい」と語った。

すべての試合でクオリティを追求し、B2優勝へと歩みを進める指揮官ペップに話を聞いた。

「自分たちに足りないのは何か、知ることができた」

──残り12試合、プレーオフまでをどのような形で戦いますか?

今日もそうですが、レギュラーシーズンすべての試合でプレーオフを意識してきました。このまま一つの試合を大事に戦っていきたいと思っています。プレーオフでは第1試合を勝っても第2試合に勝たないと昇格できないのですが、それが現実なので受け入れるしかありません。

ただ、今日の敗戦はすごく良かった。経験になる敗戦でした。プレーオフでは2連勝しないといけないというところで、自分たちに足りないのは何かを知ることができた試合でした。

──この試合で得られた経験というのは、具体的にどんなことですか?

福岡には経験を多く積んだベテランの選手が揃っています。こういう場面、シーズンの終盤の大切な試合をどう戦うかを知っている選手たちです。戦術的な面も大切ですが、大事な試合に対してのアプローチの仕方も必要になってきます。そこの経験が自分たちの若い選手にはないと思いますし、だからこそ大事な試合をどう戦うかを今日経験できたことは大きかったと思います。

ウチは若くてエネルギーのあるチームですが、大事な試合になると勢いだけであったり、自分たちのオフェンスやディフェンスを気にしているだけでは勝つのが難しくなります。自分たちだけでなく、相手チームの一人ひとりの役割であったり、どういう性格をした選手がいるのかを理解してプレーするのが大切になります。それをこれから学ぼうとしているのが今の段階です。

「ファンの皆さまのために全力でプレーすることが一番」

──なるほど。その部分を学び、向上させてプレーオフに挑むというわけですね。

プレーオフも大事ですが、レギュラーシーズンの試合を大事にしたいです。レギュラーシーズンの試合もプレーオフとして扱おう、と選手には話しています。今までたくさん勝ってきて、30点差や40点差で勝ったり、水曜の岩手戦では50点差で勝ちました。そうすると周りから「強いね」と言われ、過信してしまうこともあります。

今回の福岡との試合でも、勝っているからとディフェンスでスペースを空けてもいいかなと思うと、相手に3ポイントシュートを簡単に決められたり。一つのミスが命取りになることが分かったと思います。ウチは強いですが、これからの試合でもっと気を引き締めて、一人ひとりの選手が確実に勝てるよう心掛けてほしいと思っています。

──ペップコーチのその考え方は『ヨーロッパスタイル』のものですか?

ヨーロッパでのコーチ経験があるので、そのコーチングスタイルの影響を受けているかもしれませんが、これまで13の国でヘッドコーチをやる中で今のスタイルを作ってきました。例えば、オフェンスもディフェンスもアグレッシブにプレーしたり、これだけフィジカルにプレーするのも、そしてベンチの12人を全員使うのもヨーロッパらしくないかもしれません。自分が効果的だと思うことを積み上げて作ったのが今のスタイルです。

──それでは「プレーオフに向けて」ではなく「残りのすべての試合に向けて」、応援してくれるファンに向けたメッセージをお願いします。

ファンの皆さまに見ていただきたいのは、一人ひとりの選手が調子が良くなくても常に100%で一生懸命にプレーするところ、勝ちたいという気持ちを前面に出してプレーするところです。プロの選手として結果を出すことも大事ですが、ファンの皆さまのために全力でプレーすることが一番だと思っています。毎試合勝つわけにはいかないかもしれませんが、毎試合その気持ち、一生懸命なプレーを出していきますので、そこを是非見ていただきたいです。