島田慎二

「大事なのはアリーナが有効活用されること」

──沖縄の新アリーナは間もなく完成しますし、全国のあちこちでアリーナを作る計画が進められています。千葉ジェッツも1万人規模のアリーナを計画しています。

ジェッツが1万人のアリーナを計画できるのは、ほとんどの試合が満員でジェッツの成長がいったん頭打ちになってしまったことが一つありますが、もう一つ大事なのは東京ドームや武道館、横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナなど、首都圏でコンサートやコンベンションができる施設の稼働率が高く、東京駅から20分ちょっとで直結する船橋であればバスケだけで考えなくても成り立ちます。バスケだけであれば、あの規模のものは仕掛けていないと思うんですよね。

──なるほど。Bリーグのホームゲームでの使用は最大でも30日で、ポストシーズンなどを合わせても40日。じゃああと325日をどうやって回すんだ、という話ですね。

アリーナがたくさんできるのは良いことです。大事なのはそのアリーナが有効活用されること。民間が作るにしても行政が作るにしても、納得感がないといけない。民間であればジェッツはバスケ以外のビジネスの採算が見込めるからやりますが、ほとんどは行政が作ることになります。税金を投入してアリーナ建設を進めるならば、バスケが何を提供できるのかをこちらも真剣に考えないといけない。ライセンス制度で決まっているから作るのでは、経済状況、社会情勢が良い時代であれば良くても、今は通用しません。我々はバスケがどんな価値を生み出せるかを考え、それを説明できないといけない。それが社会的責任だと思います。

──社会での活用を考えない、箱としてのアリーナの大きさを競うだけのことからは、もう脱却しようという話ですね。

そうなります。その価値がゼロになるわけではありませんが、今までのような価値比重を持つことがなくなるのは明らかです。入場者数にこだわり続けてきた男が言うのもなんですけど(笑)。もちろん、アリーナを満員にするのは大事で、満員じゃなきゃ絵にならないし、お客さんも楽しくない。それでは選手もモチベーションが上がりません。ガラガラのアリーナで演出を頑張っても、選手が良いプレーを見せてもダメで、役者を生かすも殺すも舞台なんです。3000人でも4000人でも満員で、舞台として最高の演出をすることが大事です。

それでも、大事なことは今までと変わっているようで変わっていません。立派なアリーナができるのは良いことだし、お客さんが入って盛り上がっているアリーナは良いものです。ただそこだけにフィーチャーするのではなく、クラブの価値、リーグの価値、スポーツの価値をあらためて多面的に見ていくべきだと思います。