森川正明はBリーグ初年度から4シーズンプレーしたシーホース三河を離れ、横浜ビー・コルセアーズへ移籍した。実力はあるものの三河時代はエース、金丸晃輔の陰に隠れなかなか継続して出場機会を得られなかったが、本人は「心が折れることは全くなかった」と語り、横浜では得点源として活躍すると自信をのぞかせる。そんな森川に、『これまで』と『これから』を語ってもらった。
「NBDL時代は本当に点取ってナンボという考えでした」
──福井県出身で、大学からずっと愛知県で、関東に住むのは初めてだと思いますが、横浜はどうですか?
田舎者の僕には大都会すぎて慣れるのに時間がかかりそうです(笑)。今はまだ外出を控えているので、落ち着いたらいろいろと行ってみたいですね。
──では、三河でのことから聞かせてください。森川選手はプレータイムを得た試合では2桁得点を記録することが多かったと思います。それでも出場なしに終わる試合も少なくなく、この4シーズンの平均プレータイムは7.4分に留まりました。
みんなからも「森川は腐らずによく頑張っているな」と言われるんですよ。でも、僕の中ではその感覚はあまりありませんでした。そこで止めたら終わってしまうし、試合に出れていないからこそ自分は頑張ろうと思っていました。ましてや三河は歴史あるビッグクラブで、それこそ名だたる選手がたくさんいます。その中で試合に出ることは簡単ではないと受け止めた上で、金丸さんや川村(卓也)さんを押しのけて、どうやってプレータイムを奪うのか、どうやってチームに貢献するか、ということを一つのモチベーションにして頑張ってきました。もちろん試合に出られなくて悔しい気持ちはありますが、そのモチベーションがあったので心が折れることは全くなかったです。
──NBDL時代はチームのエースとして活躍していました。三河では役割が一転しましたが、すぐに状況に合わせられましたか?
いや、最初はちょっと戸惑ったというか、やっぱり物足りなさみたいなのはありましたね。NBDL時代は本当に点取ってナンボという考えでしたから。ただ、こういう短いプレータイムでやっていく中で、ディフェンスで1本止めたとか、アシストやルーズボールに飛び込んだとか、そういった数字に表れない部分で結果を残すことに喜びを感じるようになったんです。得点がすべてじゃなくて、こういうことが大事なんだと気が付きました。最初はちょっと戸惑いましたけど、僕はその部分で喜びを感じられたので、そういうプレーを率先していこうと切り替わりました。
──喜びポイントが変わったんですね。
そうですね。前は得点を取って「ヨッシャー」という感じでしたが、今は目立たなくても相手の得点源を抑えるとか、そういう仕事ができる選手が貴重だと感じています。なので、僕も誇りをもってプレーできていましたね。
もちろん、4年間の間には移籍を考えたこともあります。それでも比江島(慎)さんや金丸さんにどうやって勝つか、スタメンの座を奪うかというモチベーションがやっぱり高かったです。それに三河のようなビッグクラブでプレーできることは当たり前のことではないし、何よりも優勝したかったので三河でプレーを続けました。
「試合に出してもらえれば結果を出せる」
──森川選手の話を聞いているとモチベーションも高く、得たものも多かったことが分かります。ただ、最終的には結果や数字で評価されるのがプロの世界だと思います。そこのもどかしさはありませんでしたか?
僕は今年29歳になりますが、同世代には田中大貴選手や藤井祐眞選手がいて、この年齢だとチームでも日本代表でも核になる選手がたくさんいます。その中で僕は控えでちょこっとだけ出るという状況で、自分でも「何をしているんだろうな」とは思いました。全く満足もしていないし、僕もチームやリーグを代表する選手になりたいと思っていて、そのためにはやはり結果が求められます。今回、移籍に至ったのもそういう理由で、プレータイムを含め数字の部分だとか、自分の評価をもっと高めたいと思いました。
──プレータイムがある時の活躍を見ているだけに、正直もったいないと感じていました。
いやいや、そんなに信頼を勝ち取れているわけではないので。でも、僕も試合に出してもらえれば結果を出せるのに、という自信はあります(笑)。
──では、三河での4年間で一番成長した部分はどこでしょう?
それこそ試合に出られない経験をしたので、すごく我慢強くなりました。ロールプレーヤーとしての数字には表れないプレーを学べたことは、僕のバスケットキャリアの中ではすごく大きいことだと思います。
──今回、新しいチームに横浜を選んだ理由を教えてください。
複数の球団からオファーをいただきましたが、一番熱心に声をかけていただき、本当に僕のことを必要としてくれている熱い思いが伝わったのが決め手です。
──先ほどロールプレーヤーという言葉が出ましたが、横浜からはロールプレーヤーとして求められたわけではないですよね?
そうですね。得点源として期待されています。そこは自信もありますし、ビーコルでは自分のプレースタイルがフィットすると感じています。得点だけでなくディフェンスの部分もすごく求められています。今年はアジア枠の選手が入って、僕もマッチアップする可能性があります。そういう選手をいかに抑えられるかが鍵にもなると思うので、ディフェンス面でも貢献していきたいです。
──今まで横浜は対戦相手でしたが、どのようなイメージでしたか?
すごく爆発力があるチームで、一度ハマったらすごいという印象です。ただまだ若い分、勝負どころであと一歩という部分も感じていました。それでも試合を見ていると上位チームにも食らい付くし、ポテンシャルがあるチームという印象です。もっと勝っていいんじゃないかなと思います。
──若いチームなのでポテンシャルがあるのは確かですが、実際はBリーグ開幕から4シーズン、大きく負け越しています。一戦力ではなくビーコルを変えてやる、ぐらいの気持ちですか?
チャンピオンシップに出たいので、自分がそこに導くような選手になりたいし、そういう仕事ができればという思いでこのチームに来ました。自分のプレータイムをもらうために来たわけではなく、チームを勝たせる存在になりたいし、その責任もあると思っています。チームをチャンピオンシップに連れて行けるように、新しいビーコルにしたいという気持ちです。
──頼もしいですし、すごく楽しみです。
でもあんまり期待されすぎちゃうとちょっと空回りしちゃうタイプなので、意気込みはここら辺にしておこうと思います(笑)。
「あの熱狂した中でプレーできるのはすごくワクワク」
──森川選手の新シーズンの個人目標を教えてください。
プレータイムは20分以上。得点も平均2桁得点を目標にやっていきたいです。これまではちょっと隠れてはいましたけど、今シーズンは目立ってやろうかなと思っているので、ガンガン行きたいと思います!
──古巣との対戦も楽しみですね。
そうですね。恩返しの意味でも古巣との試合ではしっかり活躍して勝ちたいので、三河戦だけは気合いの入れ方が違うと思います。練習中は金丸選手にボコボコにされていたので、公式戦ではやり返したいですね(笑)。僕の目指すべき存在でもあったのでそこを越えていきたいですし、金丸選手を抑えないことには三河を倒せるチャンスは来ないと思うので、マッチアップする機会があったらバチバチにやりたいと思います。
それに昨シーズンは不完全燃焼で終わったので、どのチームも気合を入れていると思います。そこに負けないように開幕から飛ばして行きたいです。ビーコルは熱いファンが多いので、勝つ瞬間をお見せしたいですし、ホームであの熱狂した中でプレーできるのはすごくワクワクしているので、早く試合がしたいです。
──それでは最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
新しいビーコルにしていきたい思いがあるので、会場で直接会えるかはまだ分かりませんが、ぜひ生の歓声を受けながらプレーしたいです。こういうチームでプレーさせていただくことに僕は感謝をしていますし、チームに自分の力をしっかり捧げたいと思っていますので、熱い応援をしていただけたらうれしいです。
森川選手に三河時代のこと、新天地での意気込みを語ってもらいました。自分が核となってチームを導くという熱い思いもビシビシと伝わり、期待せずにはいられません。チームメートともすぐに馴染めたようで、「雰囲気がすごく良いんですよ」とのことです!#Bリーグ #ビーコルhttps://t.co/QholvZHryU pic.twitter.com/X9MvK4rZAb
— バスケット・カウント (@basket_count) July 22, 2020