エディは昨夏、内藤と土屋は昨年11月加入の新戦力
3人制の元日本代表という異色の経歴を持つセオン・エディは、今季の開幕前にアルバルク東京から移籍加入。内藤健太と土屋アリスター時生はともに11月に、昨シーズンから継続して特別指定選手としてチームに加わった。
エディはビジネスマンを経て、26歳だった昨シーズンにアルバルク東京でプロとしてのキャリアをスタートさせたばかり。内藤と土屋にいたっては、現役の大学4年生である。3人はプロとしての経験が浅く、現状ではコートに立つ機会は限られているが、彼らも欠くことのできないストークスの一員だ。シーズンの始めからストークスでプレーしているエディは、開幕してからここまでをこう振り返る。
「序盤は10月に4つ勝って、年内までに計6勝しました。その時はインサイドでリバウンドも得点も獲る、ビッグマンのコナー・ラマート選手がいたんです。彼がケガでチームを離れてから、より苦しくなりましたね。後半戦になってメンバーが変わって、馴染まないといけない部分もありますし、コナーが抜けた穴をどう埋めるかが今のチャレンジ。そこが埋められれば、勝ち目はあると思います」(エディ)
内藤と土屋が加わったのは、その月を全敗で終えてしまい、チームが下り坂の入り口に差し掛かった11月。2人はともに昨シーズンも特別指定選手としてストークスに在籍していたが、今季にチームに戻った際には、昨シーズンとは違う雰囲気を感じたと言う。
「僕が来たころは、少しチームがバラバラになっているかなという印象がありました。負けが込んでいて、選手はみんな『どうにかしないといけない』と分かっているんですが、どうすればいいか分からないような感じで、それぞれが個人でやっているような雰囲気がありました。その頃は練習中から、下を向いてはいけないと全員が共通理解を持ってやっていました。でもどこかに『このままで大丈夫か』と、選手一人ひとりが不安を持っている印象はありましたね」(内藤)
「ストークスには昨シーズンもいましたが、戻ってきた時は雰囲気が違いました。僕が感じたのはなんかこう、どんよりとした重い空気でしたね。試合中もこっちのミスが続いて、なかなか盛り上げ切れない。ミスをしても『次、頑張ろう』と言うんですけど、良いプレーが出たほうが当然チームは盛り上がります。それがなかなか出せないので、勢いに乗れない。そういうところが違うんだと気付きました」(土屋)
土屋「多彩なゲームメークができている」
チームはその後も苦戦を続けたが、後半戦になってハーバート・ヒル、キャメロン・リドリーの外国籍選手に、経験豊富なベテラン岡田優が新たに加わった。若い3人は彼らの加入でチームにどんな変化を感じ取ったのか。
「コナーに替わってキャム(リドリー)とハーブ(ヒル)が入ってきて、最近はインサイドで得点を獲れている。それは以前と比べて、良い点です。だけどコナーはインサイドから外に出て、3ポイントシュートも良い確率で決めていました。そこの部分が少なくなったので、戦い方は変わりましたね」(エディ)
「キャムとハーブが入って、チームがインサイドを意識するようにと変わってきました。岡田選手は経験があって、他の選手とは違ったオフェンスのパターンもある。そこは岡田選手を見て、全員が勉強していますね。でも新加入選手ばかりに頼るのではなく、谷(直樹)選手や道原(紀晃)選手らがチームを引っ張ってくれています。そういうところは、昨シーズンに僕が入ったころのストークスと変わりません。引っ張ってくれている選手に新加入選手が加わって、オフェンスパターンも増えていますね」(内藤)
「ユウ(岡田)さんとキャム、ハーブが入って、3人は攻撃の起点になることが多い。それにともなって周りのプレーヤーもポジションをチェンジしたり、全員が複数のポジションをできるように少しずつ変えていっています。戦術の面でも真正面から相手に当たっても勝てないので、いろんな策を使って多彩なゲームメークができていると思います」(土屋)
エディ「互いの意見をぶつけ合うようにしていきたい」
彼らはプロのバスケットボール選手としての道を歩み始めたばかり。チームの一員として勝利に貢献することはもちろんだが、自身のキャリアをさらに豊かなものにしていくためには、大事な『最初の一歩』の時期だ。
「1月21日のシーホース三河戦で20得点して、チームも勝つことができて、僕はB1でも結果を残せると自信がつきました。だけどもっともっと、上手くなりたい。それに尽きます。チームの状況が悪いときって、『オレもダメなのかな』と思ってしまいかねない。だけどそんな時でも、他の選手やコーチと話してやっていく中で上手くなれるし、チャンスは絶対にあると思いながら日々頑張っています」(エディ)
「自分は今シーズンこのチームでプレーして、まだ数カ月しか経っていません。チームのB1残留の目標はもちろんですが、個人としてこれからもっと成長していきたい。このシーズンだけではなく、自分がこれからもっと成長していけるように、未来のことも考えてプレーしています。今も大事ですが1年後、2年後にチームを勝たせられる選手になりたい。それをモチベーションにして、毎日の練習に取り組んでいます。練習では他の選手のほうが上手くて、実際にプレーしてみて通用するところ、しないところが自分の中で分かってきました。周りの選手から見て学んで、これからは通用するプレーの精度を上げることと、プレーの幅を広げることを目標にしています」(内藤)
「関西の大学でプレーしていたので、(プロでプレーして)今はボコボコにやられるのが楽しいというか(笑)。工夫しないと得点が獲れないし、ちょっとでも腰が浮いていたら相手に押される。自分で考えて工夫しないと、簡単には2点を獲れない。それが面白いんです。工夫して、自分が上手くなれる材料がたくさんある。漠然とした夢で、今のままじゃ絶対に無理なんですけど、近いところの目標は2年後の東京オリンピック。そのときの僕は24歳で、選手としていちばんいい年齢。代表入りして、オリンピックに出たいと思っています」(土屋)
内藤と土屋は、最年少の22歳。ふたりが同じく考えているのは、ここからストークスを浮上させるために、自分たちの若いエネルギーをチームに注ぐこと。
「ストークスの特徴は、走るバスケ。チームでは自分が一番若いですし、試合に出たらコートの上ではずっとストークスのバスケットを体現できるように、走り回ったりアグレッシヴにディフェンスをすることを心掛けています。自分のセールスポイントはシュートなのですが、外すと気にするタイプなんです(苦笑)。それで悩んでしまってシュートが打てなくなり、天日コーチに怒られたこともあります。僕のような若い選手が思い切ったプレーをすることで、チームに勢いがつくと思うので、これからは思い切って打っていきます」(内藤)
「キャムは走ることがあまり得意ではないですが、僕やケンタ(内藤)は走れます。若さを生かしてその部分でチームの流れを変えたり、昨シーズンみたいなスピードバスケに持っていけるように貢献できると思っています。今季はまだあまり試合に出られていませんが、走れるセンターがいるとチームはガラッと変わります。オフェンスでは僕が前を走って、先に大きな外国籍選手に当たっておけば、キャムが遅れて戻ってきても簡単にボールを渡せる。ディフェンスでは、相手の流れや速攻も止められる。誰よりも前を走るプレーを続けて、チームが重い雰囲気のときに僕が出て流れを変えたい」(土屋)
アメリカでのビジネスマン経験を経て、プロ入りしたエディは27歳。しかしプロバスケットボール選手としては2年目のフレッシュマンであり、パワフルでストレートなキャラクターはチームに勢いを与えるのに持ってこいの存在だ。
「毎日の練習を頑張って、試合に出してもらえたら若さのエネルギーを発散させて、チームに勢いを与えるようにと常に思っています。走って、声を出して、こっちに流れが来るようなプレーをする。他に僕は英語と日本語が話せるので、外国籍選手と日本人選手のコミュニケーションをもっと良くするのも役目。それは今も頑張っています。チームには静かな選手が多いので、もっと互いの意見をぶつけ合うようにしていきたい。僕は意見があったら、口に出して言うタイプ。それを、もっとやっていきたいと思っています」(エディ)
内藤「過信くらいの自信を持ってプレーする」
目標がB1残留と明確になった今、新加入選手を含めてチームの一体感は高まった。その目標を達成するために、彼ら3人は何を果たすのか。
「負けが続いた時期もチームは全然落ち込んでいませんでしたし、練習でも良くなってきています。今は新しいメンバーもチームに馴染んできて、それをどうやって効果的に使うかをみんなが考えている。個人的には自分の練習のビデオを見て、コーチやチームメイトと相談しています。違う人の目線から評価をもらって、自分のプレースタイルを工夫して上手くなり、チームの勝利に貢献していきたい。もちろん僕自身もチームも頑張っていますし、これからも勝つことを望んでいます。ブースターのみなさんには、続けて応援して欲しいと思っています」(エディ)
「チームを勝たせられる選手になれるのがいちばんですが、現実を考えると残り試合ではちょっと難しいかもしれません。今は試合には多く出ても、10分くらい。その短い時間で、チームの流れを引き寄せるプレーヤーになりたいと思っています。僕が出ている間に流れを引き寄せられたら、あとは中堅やベテランの選手がいいプレーをして必ず勝利をつかんでくれる。ベテラン選手たちと違った形で、チームのムードを上げられる選手になりたいです。そのために、過信くらいの自信を持ってプレーすることを心掛けます」(内藤)
「僕はたくさん得点を獲れる選手ではないので、試合に出ればリバウンドやスクリーン、ルーズボールなど、泥臭いところや細かい部分でチームに貢献していきたい。ポジション的にリバウンドに絡むことが多いので、たとえ獲れなくても少しでも相手より先に触って仲間の選手に渡すなど、ハッスルプレーをする。試合に出ていない時は外から声を出して、チームが落ちそうになった時に、他のベンチの選手といっしょに盛り上げるのが大事だと思っています。今の僕の立場でチームをB1に残すとまでは言い切れませんが、爆発は他の選手に任せて、その導火線くらいになれればと思っています。ここまであまり試合に出ていないので、僕が出たらいつもと違うストークスになる。頑張って試合に出られるようにして、その部分で変化を起こせたらと思っています」(土屋)
後半戦になって加わった新加入選手が新鮮な風を吹き込み、3月上旬の北海道から川崎と続いた遠征の間は西宮に戻らず、全員で長い時間を過ごすことでケミストリーが深まった。チームは確実に良化し、その証として3月25日にアウェーで行われた滋賀レイクスターズ戦で勝利。1月の末から続いた連敗を止めた。ストークスには、下を向いている者は誰もいない。これからの最大の目標であるB1残留を果たすため、残りのシーズンを全力で駆け抜ける。