ジェイレン・ブラウン

「僕たちの誰もが慎ましい生活をしていたはずじゃないか」

NBAシーズン再開の舞台となるオーランドのディズニー・ワールドに、参加22チームの選手たちが続々と到着している。

選手たちはこれから最長で3カ月近く、新型コロナウイルスの感染予防のための隔離エリアである『バブル』での生活を強いられる。特に最初、到着時の検査の結果が出るまでは、ほとんどの時間はホテルの自室に軟禁状態となり、多くの選手がこれから生活するホテルの部屋の広さ、提供される食事を『ネタ』にSNSに投稿している。

冗談混じりで待遇の悪さをアピールする者もいれば、「自分は気にしない」という者もいる中、セルティックスのジェイレン・ブラウンは「文句を言うべきじゃない」と仲間たちに呼び掛けた。

7月10日にリモートでの質疑に応じたブラウンは、関連のない質問に答えている最中も「文句を言うべきじゃない」と繰り返した。

「普段と異なる環境だと分かっている。文句を言う必要はないよ。僕たちの誰もが慎ましい生活をしていたはずじゃないか」

シーズン中断の間、アメリカ国内で大きなムーブメントになった人種差別撲滅のBLM運動(Black Lives Matter)にも積極的に参加していたブラウンは、シーズン再開後もNBAという巨大なプラットフォームを生かして社会問題に関するメッセージを発信したいと考えている。その彼にとって、一部の選手の不真面目な態度は容認できなかった。

「今の世の中で起こっている問題に向けて何かを発信するだけではなくて、自分たちのプラットフォームを生かして大きな影響を与える。そういう大きな目標を持っていないといけない。バスケットボールは僕たちにとっては簡単な部分だよ。まあ、これからみんなこの環境に慣れていくはずだ」

これだけ言っても収まらなかったのか、ブラウンは従来のトレーニングキャンプと、再開に向けたキャンプとの違いについて聞かれた際にも、答えの途中から「自分たちには大きなミッションがある。それ以外への文句ばかり言いたくはない」と脱線した。オーランドに到着後に経験した36時間の自主隔離について聞かれた際も「興味深い経験だった。先ほども言ったように、僕は文句なんて言わない。自分は慎ましい環境の出だから、文句なんて言わない。慣れている環境ではないけれど、それは問題じゃない」と答えた。

「僕たちは目的を持ってここに来た。多くを学んで教養を高めたい。チームメートやNBA関係者とも、バスケットボール以外の問題に向けてどうすれば一丸となれるか、力を生かせるかについて話したい。だから質問がある選手とは話したい。考えを共有して、どうすれば変化を起こせるか、その方法を見つけたいんだ」

練習と試合、そして滞在する部屋との行き来を続けなければいけないNBA選手は時間を持て余してしまう。その間の過ごし方はそれぞれ異なるだろうが、ブラウンはNBAの『オピニオンリーダー』として、社会問題解決に寄与しようとしている。