文・写真=鈴木栄一

エース髙田を抑え込み、リーグ10連覇達成

3月25日、第19回WリーグプレーオフファイナルとなるJX-ENEOSサンフラワーズvsデンソーアイリスの試合が行われ、リバウンド争いで完全に主導権を握るなど最後まで堅いディフェンスを維持したJX-ENEOSが71-59で勝利。史上2チーム目となる女子リーグ10連覇の偉業を成し遂げ、通算21回目となるチャンピオンの座に輝いた。

第1クォーター、ともに互いの守備を攻略できずロースコアの重い展開となるが、それでもJX-ENEOSは13-5とリードを奪う。第2クォーターに入ってもその流れは続き、渡嘉敷来夢、大崎佑圭のツインタワーを軸に加点する。途中、大崎が相手とのコンタクトで鼻を強打して出血。担架で途中退場するアクシデントに見舞われたが、それによる動揺もなく前半で31-14とデンソーのオフェンスをほぼ完璧に封じ込めた。

特にデンソーのエース、髙田真希へのディフェンスは徹底していた。ゴール下で待つ髙田へのパスを徹底して封じるチームディフェンスと、渡嘉敷のフィジカルなマークという二段構えでイージーシュートの機会を与えない。髙田は外に出て難しいシュートを打つ以外になく、リズムを崩していった。試合を通じて20得点を挙げたものの前半はわずか6得点。この徹底した髙田対策が、ロースコアの展開にあってJX-ENEOSの優位を作りだした。

「苦しい時間帯もディフェンスで崩れることがなかった」

第3クォーター、デンソーはオフェンスを立て直し反撃を図るが、JX-ENEOSも負けじとやり返すことで、逆に53-33と点差を広げる。第4クォーターに入ってデンソーはエースの髙田真希、伊集南を軸に粘りを見せ、途中で点差をなんとか一桁にまで縮めるも、ここでJX-ENEOSは渡嘉敷の得点ですぐにリードを再び2桁とし、試合の流れを自分たちに引き戻す。あとは危なげない試合運びで時間を使い、皇后杯に続いてシーズン2冠を達成した。

JX-ENEOSの佐藤清美ヘッドコーチは、試合をこう振り返る。「ゲームの出だしはアウトサイドのシュートが入らなくて思うようなオフェンスができなかったですが、その分、ディフェンスでしっかり頑張ってくれました」

18得点10リバウンドの渡嘉敷も「どんなに苦しい時間帯もディフェンスで崩れることがなかったので、良かったと思います」と続けたように、第4クォーターには26点を献上したが、試合全体では60点以下に抑えた守備の勝利だった。

その堅守の中でもオフェンスリバウンドで16-8、トータルで44-32と、リバウンド争いでの圧倒が光った。宮澤夕貴はこう語る。「デンソーさんと戦う時は、リバウンドで負けることもあるんですが、今日はオフェンスリバウンド、トータルのリバウンド数でも勝っていた。我慢の時間帯でもリバウンドを取れていたのが結果につながったと思います」

健闘したデンソー「今までのチームとは違う成長」

一方、皇后杯に続き決勝でJX-ENEOSに敗れる結果となったデンソー。小嶋裕二三ヘッドコーチは、「出だしのまずさがすべてでした」と試合を振り返る。

「終盤、普通なら落ちていると思うタフショットを連続で決められました。それを決め切るだけの強さが、残念ながら我々にはまだない」とJX-ENEOSとの力の差を率直に認めるとともに「第4クォーターは意地を見せあきらめずに戦ってくれました。ここは今までのチームとは違う成長を見せている過程」と、若返りを図る中での収穫も挙げてシーズンを総括している。

20得点12リバウンド4スティールとデンソーの大黒柱にふさわしい数字を残した髙田も、「前半、なかなか自分たちのリズムでバスケができず、自分もプレーで引っ張ることができなかったです。後半、追い上げることができましたが、だからこそ前半が負けた原因でした」とコメント。それでも指揮官と同じく第4クォーターの追い上げには「我慢し続けて自分たちのやるべきことをやれるようになってきました」と手応えも得た今シーズン最後のゲームとなった。

今シーズンのプレーオフは、これまで使用していた代々木第二体育館が改修工事に入り使うことができず。これまで2戦先勝方式だったクォーターファイナルとセミファイナル、3戦先勝方式のファイナルがすべて一発勝負へと変更された。だからこそ、まさかの波乱が起こるのでは、という見方もなくはなかった。

しかし、蓋を開けてみれば一発勝負だからこそより大事な試合の入りを、どこよりもしっかりできたのはJX-ENEOSだった。フォーマットを問わない強さ、さらには中心選手である大崎の負傷退場というアクシデントにあっても揺らぐことのない盤石ぶり。JX-ENEOSの強さがいつも以上に際立った今シーズンのWリーグだった。