文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

活躍するも「勝たなきゃ意味がない」

昨日、横浜ビー・コルセアーズはシーホース三河とのゲーム1に敗れた。何度も粘りを見せたが、最終的に20点差の完敗。それでもチームハイの13得点を挙げた田渡凌の動きには光るものがあった。第2クォーターにはボールをプッシュし7得点を挙げ、反撃の流れをもたらした。

しかし田渡は「試合の入りから得点に絡むシーンだったり、ディフェンスでプレッシャーをかけていこうというのは意識していたので良かったんですけど……」と言葉を濁す。勝利を必要とするチーム状況で勝てていない事実が表情を曇らせる。「いくら自分のパフォーマンスが良くても、勝たなきゃ意味がないです。勝ちにつながらないパフォーマンスというのは、いつでも満足できないので」

横浜は序盤から桜木ジェイアールのインサイドプレーを止めることができなかった。最終的にシーズンハイとなる31得点を許したことが敗因になったのだが「選手がミスをしたというよりも、こちらの戦術面での準備が三河さんに上回られてしまった」と尺野将太ヘッドコーチが発言したように、インサイドの失点はある程度覚悟の上だった。

そして田渡は「もっとできたことがあったんじゃないか」と自分を責める。「もちろん作戦なので大袈裟に行かないですけど、ジェイアールも(ダブルチームに)来ないものだと思って攻めてきていたので。僕の位置がもっとジェイアールに近かったら、シュートセレクションが悪くなったりっていうのが起きたかもしれなかったのに、そういう部分の駆け引きができていれば」

第3クォーターの最後は「150%、完全に僕のミスです」

試合を通して存在感を見せた田渡だが、第3クォーターの最終盤に一つ大きなミスを犯した。残り27秒で横浜ボールとなったが、田渡は12秒を残しシュートを放った。シュートは入ったが、三河にオフェンスの機会を与え、結果的に松井啓十郎にブザービーターを許した。

「150%、完全に僕のミスです」と田渡もミスを認めた。「シュートを入れて終わるのと、入れられて終わるのでは、第4クォーターの始めのテンションが違うので」

「時間を考えられていなかった」と田渡が言うように、あのような場面ではショットクロックギリギリでシュートを放ち、相手にオフェンスの機会を与えないことを優先するべきだった。「アグレッシブに行こうと考えすぎてあのミスにつながったので、もっとスマートにプレーしないといけない」と自分を戒めた。

クォーターの終わり方は、時に試合の流れを大きく左右する。田渡はポイントガードとしてそれを十分に理解しているからこそ、シュートを決めたことよりも相手にオフェンス機会を与えたことを悔やんだ。

「そんなに甘くないと痛感しています」

横浜は連敗から抜け出せず苦戦が続いている。シーズン序盤は得点力不足が目立ったが、その問題は解消しつつある。だが「チームに今必要なのは何かと考えた時に、どう見てもディフェンスなので」と田渡が言うように、新たにディフェンスが課題となっているのが現状だ。昨日の試合を含め、直近の9試合のうち実に5試合で失点が90を超えている。

「ディフェンスからボールをプッシュして、速い展開が生まれた時は良い」と田渡が言うように、ディフェンスが機能している時間帯は、三河を相手にしても引けを取らない。

だからこそ田渡は現実を直視し課題と向き合う。「前から激しくプレッシャーを与えて、『こいつ、やってるな』というのを見せて、チームに勢いを与えないといけないと思っています。だから最近はディフェンスにフォーカスしてます」

持ち前のスピードを生かしたドライブやプルアップジャンパーなど、田渡の得点力は横浜には欠かせない。だがチームに今必要なのはディフェンス力ということを深く理解し、オフェンスよりもディフェンスに意識を向けている。

「正直に言えば、オフェンスで点を取って活躍して勝ちたいですけど、そんなに甘くないと痛感しています」と田渡は本音を漏らした。それでも、上手くいかない時の経験こそ己の血肉となる。Bリーグ1年目の、若い田渡にとってはなおさらだ。勝たせるために横浜にやってきた、田渡の挑戦はまだまだ続く。