即戦力選手を獲得して臨んだ昨シーズン、川崎ブレイブサンダースは中地区優勝、天皇杯準優勝と素晴らしい成績を残した。チーム内競争が激しくなったことがレベルアップに繋がったように思えるが、長谷川技は「競争は感じなかったです」と意外な回答。だがそれは自信の裏返し。唯一無二のロールプレーヤーである長谷川に川崎の強さの秘密を聞いた。
「昨シーズンは身体に染みつくほど練習できていた」
──自粛期間が終わり、チームも徐々に始動していると思います。現在はどのように過ごしていますか?
体育館が使えるようになって、密にならないように人数を制限しながらバスケのグループ、ウェイトのグループで分けて練習をしています。プレーヤーはつけていませんが、スタッフはマスクを付けていて大変そうです。
──結果的に長期のオフとなりましたが、これまではどのように過ごしていますか?
自宅でできる範囲で自重のトレーニングやストレッチをして、ボールは全然触らずに休んでいた感じです。
普段のオフは毎年旅行に行っていますが、状況が状況なのであまり外も出歩かなかったです。子供と一緒に遊ぶ時間が増えて、それだけでもリフレッシュになりました。食事は美味しいところを探して取り寄せていました。美味しい食事が一番の楽しみでしたね。
──では昨シーズンの話に移りますが、川崎は即戦力選手を獲得して新たなフェーズを迎えました。結果的に中地区優勝を果たし、強さを証明したシーズンとなりましたが、これまでとの違いは何でしょうか?
それはヘッドコーチがやりたいバスケットを僕たちが遂行できたというのが一番ですね。その中でディフェンスを一番意識していて、ディフェンスができていた時は自分でも本当に強いと思っていました。
──どのチームも遂行力の話は出ると思います。特に今シーズンの遂行力が高かったのはなぜですか?
ディフェンスは意識の問題だと思います。ボールマンにプレッシャーをかけるといっても、これまでは一歩引いたりして守っていた気がします。でも昨シーズンは常にヘッドコーチからオールコートでプレッシャーをかけろと言われていました。そのディフェンスの練習量がしつこいくらい多くて、その結果がディフェンスで出たと思います。
去年まではそこまでそういった練習をしていなかったというか、それが今年ほど身体に染みついていなかったです。昨シーズンは身体に染みつくほど練習できていたので、ああいうチームディフェンスができていたんだと思います。
──結果が出た以上、これからも辛い練習が続きそうですね。
今年も多分ヤバいです(笑)。
「僕のファウルはルール通りなので」
──熊谷尚也選手が入団し、シーズン途中に増田啓介選手も加わるなど、特にスモールフォワードは競争が激しかったと思います。こうした競争は久しぶりだったと思いますが、気持ちや行動に変化はありましたか?
申し訳ないですけど、チーム内競争は感じなかったです。意識しなかったというか。
──意外ですね。それは自信の表れでしょうか? タイムシェアもあり、結果的に先発試合数とプレータイムは減少しましたが。
自信はありますね。スタメンで出ても控えで出てもやることは変わらないですし、ヘッドコーチも対戦相手によってスタメンも変えると言っていたので。短い時間でも、数字には出ないですけど良い内容でバスケができていたと思っています。
──5シーズンぶりにプレータイムが20分を切りました。7分弱プレータイムが減ると、体感でもかなりの変化があったと思います。
ネガティブなイメージはなかったですね。常にフルスロットルで行くということで、短い時間でも出せるものは出し尽くしてやっていたので物足りなさはなかったです。バスケやってるなって感じでした。
──チームへの貢献度は高かったですが、得点と3ポイントシュートは前年に比べて落ちました。
ディフェンスが僕の持ち味ですし、そこである程度体力を使うというのはあるかもしれません。ただ、オフェンスに関して、あまりボールに絡むシーンはないですけど、コート全体を見てしっかり効果的なオフェンスはできていたと思います。数字は確かに落ちましたけど、そこまで気にしてないですね。
──平均2.0ファウルとファウルの数は過去最多です。それはディフェンスに注力した結果でしょうか?
ディフェンスを意識してやっていると、ここで点を取られたくないって時にファウルをしたり、アウトナンバーで確実に点を取られそうな時は早めにファウルしていました。そういう考えがチームでもありましたし、それをうまく出せたんじゃないかと思います。
──そういう場合、アンスポーツマンライクファウルがコールされやすい気がしますが、そもそもアンスポーツマンライクファウルを取られたことはありますか?
記憶にないですね。一番はボールに行く意識です。僕のファウルはルール通りなので取られないです。つかんだりするから取られるんでしょうね(笑)。
──説得力がすごいです(笑)。ここ数年は得点力アップを目標に掲げていましたが、役割の変化もあり、それを徹底しているからこそ数字にとらわれないということですね。
チームにロールプレーヤーが一人いれば確実にボールは回りやすくなるし、皆が皆ボールを欲しがるタイプだとバスケットはできなくなりますから。そういうロールプレーヤーが必要だと思うし、そっちのほうが僕は好きなので。
天皇杯決勝に敗れ「高校3年以来、12年ぶりの涙です」
──能代工業で全国優勝した頃は自らスコアするタイプだったと思います。中心選手がロールプレーヤーになることは少なからず抵抗があったかと思いますが、きっかけはありましたか?
高校くらいまでは身長があってまあまあ動けたので自分でやる感じでしたが、大学やこの世界に入ると自分よりも大きい選手もいるし、上手いハンドラーもいるから、僕よりもそっちを使ったほうが効果的なんじゃないかなって思うようになりました。彼らに合わせる動きをしたほうがもっと効果的になるんじゃないかという考えが僕をこうしました。
──それが川崎の強さを支えているんですね。お手本にしているロールプレーヤーはいますか?
いないです。レブロン(ジェームズ)のダンクとかを見るのは好きですが、あえてロールプレーヤーの動きを追ったりはしないですね。
──なるほど。昨シーズンは強さが際立ちましたが、特に印象に残っている試合などはありますか?
そういうのないんだよなー……。あっ、天皇杯決勝ですかね。久しぶりに泣きました。
──恐らくその姿を見た唯一の人間が私です(笑)。あれは衝撃的でした。
悔しかったですね。インフルエンザやケガがあって、あのメンバーであそこまでいけたのはうれしかったんですけど、なおさら優勝したい気持ちが強かったので。多分、フルメンバーで負けてたら泣いてないです(笑)。
──試合に負けて泣いたことはありますか?
インターハイと国体で優勝して、久しぶりに3冠が狙えるウインターカップで勝てなかった時に泣きましたね。高校3年以来、12年ぶりの涙です。
──そういう意味ではいろいろなことがあったシーズンでしたね。では最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。
世の中は今厳しい状況ですけど、川崎を筆頭にBリーグ全体で皆さんに元気と笑顔を届けられるように頑張りたいですし、川崎にはより良いニュースを届けられるように頑張っていきます、皆さんもコロナに負けずに、一緒に頑張っていきましょう。
──個人的にここに注目してほしいところはどこでしょう?
筋肉ですね。すでに仕上がって去年よりでかくなっているので、楽しみにしていてください。僕の筋肉に注目です!(笑)