文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

攻守に存在感を放つ栃木の大黒柱

栃木ブレックスは、3月17日と18日に行われた千葉ジェッツとのアウァーゲームを1勝1敗で終えた。17日は終盤の猛攻により73-71と劇的な逆転勝利を挙げたが、18日は序盤から主導権を握られ、66-85と大敗を喫した。

チームの大黒柱であるライアン・ロシターは、17日と18日の違いを次のように分析する。「トランジションディフェンスが違った。前日、僕たちはしっかりと守備で戻れていて、相手にイージーシュートの機会を与えずにいた。しかし、今日は第1クォーターに何度が速攻をやられ、第3クォーターにも速攻からのレイアップなどで8連続得点を許してしまった。それが痛かった」

千葉との2試合についてロシターは「もちろん、もっと良いプレーをしたかった。しかし、千葉はとても素晴らしいチームで、彼らの激しいプレーから学ぶこともあった」と総括する。

「今年はよりプレーメーカーになっている」

現在、栃木は24勝20敗で東地区4位、チャンピオンシップ出場レースに目を向けるとワイルドカード2位と、最後の切符を手に入れられる位置にいる。シーズン序盤のもたつきから立て直し、徐々に調子を上げているのは間違いない。

しかし、昨シーズンのリーグ王者である栃木が目指すのはチャンピオンシップの出場ではなく優勝だ。では、頂点を狙える力をどこまでつけているのか。それを測る絶好の機会が、24日から始まる過酷スケジュールだ。単純に8日間で5試合を行うことがタフであるだけではない。川崎ブレイブサンダース、アルバルク東京、サンロッカーズ渋谷と、すべて東地区の難敵相手。しかもA東京、SR渋谷とは敵地との試合となる。

「大事な戦いとなるが、大事なのは目の前の試合に全力で勝ちに行くこと。今は東京、渋谷について考える必要はない。川崎戦だけに集中して、コンディションを整える」

ロシターはこのように意気込みを語るが、ここまでの自身のプレーについてはどのように感じているのだろうか。昨シーズンと変わった点はあるのか聞くと、「今年はよりプレーメーカーになっていると思う。去年の方が、もっと点を取りに行っていた。今年はもっとボールをハンドリングし、アシストが例年よりも増えている」と言う。

実際、アシストの算出方法が変更されたことでリーグ全体としてアシスト数が増えていることは間違いないが、それを考慮してもここまでロシターのアシスト数は昨シーズンの1試合平均3.2から4.7と大きく増えている。

「この熾烈な戦いの場にいることを楽しんでいるよ」

後半戦に入って勝ち星を順調に増やしている栃木であるが、まだまだ一歩踏み外せばチャンピオンシップ圏外まで落ちてしまう位置にいる。前年のリーグ王者がプレーオフにすら進出できないことは大きな後退を意味するが、ロシターはそういった重圧を感じていない。

「チャンピオンシップに出なければというプレッシャーは感じない。プレーオフ出場はすべてのチームの目標となる。重圧ではなく、この熾烈な戦いの場にいることを楽しんでいるよ」

昨シーズンはホームアドバンテージを最大限に生かして優勝を勝ち取ったが、今シーズンは現実的に考えてチャンピオンシップ出場権を確保するのが第一。ただ、戦いの場がアウェーになっても連覇のチャンスは十分にあるとロシターは断言する。「常に誰かケガをしていたりしてフルメンバーで戦える機会がなかなかないけど、自信は持っている。チャンピオンシップに出場し、再びファイナルに行く。短期決戦では何でも起こるからね」

試練の5番勝負についてロシターは「本当にタフなスケジュールだけど、楽しみでもある」と語る。その強靭なメンタルがチーム全体に波及して戦えるのであれば、栃木にとってこの1週間は飛躍への大きなきっかけとなるはずだ。