文=丸山素行 写真=野口岳彦

「これまででも一番練習してると断言できます」

アルバルク東京は激戦の東地区で首位をキープしている。これまで複数の主力選手を常に代表に取られ、現在もゴールデンルーキー馬場雄大がケガで欠場するなど、マイナス要因を多数抱えながらも高い勝率を維持できているのは、指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチのバスケを一人ひとりが理解し、体現できているからに尽きる。

戦術を理解する能力ももちろん必要だが、ハビット(習慣)スポーツであるバスケにおいて、練習量がその理解度やパフォーマンスに直結する。ベテランの菊地祥平に話を聞くと、「夏から変わらないくらいの反復練習をやって、5on0のフォーメーション練習を毎日、午前と午後にやっています。今シーズンはこれまででも一番練習してると断言できます」と言い切った。

「例えば試合でコールが全く聞こえない状況でも、誰かがあの動きをしたら『多分こうだな』と反応できるように練習量が補ってくれていると感じます」

その練習の成果はコート上でも確認できる。特にオフェンス面では一つのピックから他の選手が連動して動き、抜群のタイミングでパスが通ってオフェンス有利な状況を作り出している。よくオフ・ザ・ボールの動きが大事と言うが、闇雲に動いてもタイミングが合わなければスペースを潰すことにもなりかねない。

菊地は言う。「5人が『点』でいても勝てません、『線』になる必要があります。 ルカが口酸っぱく言うのは一人が点を決めるためには全員が自分の役割を全うしなければ絶対その1点は入らない、ということです。フィニッシャーが気持ち良くシュートを打てるよう、一歩ないし半歩動いてそのスペースを確保してあげるとか。そのために5人が動かなきゃそのプレーはできないです」

ベテランの安定感がスタート起用を後押し

菊地は今シーズンここまで46試合のうち42試合で先発出場。日本代表に選出されている馬場がベンチに回る『逆転現象』となっている。菊地によれば、ルカヘッドコーチから先発起用の理由を説明されているわけではない。それでも「僕はベテランとして、スタートで僕を使っているその意図を読み取ってやっています」と話す。

「僕からしたら雄大は若さゆえ、精神的にまだムラがあります。良い時は一人でもチームを勝たせられるくらいの力がありますが、この世界ではそんなにきれいにやらせてくれない人選手もたくさんいるので。そういう部分で僕が選ばれているのかと思います」

「スタートで得点力がある人は、最初に乗せちゃうと一試合気持ち良くやらせてしまうので、そこを止める働きを期待されているのではと感じます」

試合開始からディフェンスで自分たちに有利な試合展開を作り出し、間違っても出だしからゲームを壊さない安定感が見込まれての先発起用。一つひとつの策で勝利への可能性を1%ずつでも上積みしていく老獪なルカヘッドコーチらしい采配だ。また菊地も『仕事人』として信頼に応えている。スタッツには残らないが、その働きは確実にチームの支えとなる。

チームのために自らを犠牲にし、一歩でも半歩でも勝利に近づくためならすべてをやる。敵にしたらどこまでも嫌らしいが、味方としてこれほど頼もしい存在はない。