文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

勝ちたい気持ちが先走り、チームルールを徹底できず

サンロッカーズ渋谷は先週末、千葉ジェッツとの同地区対決で2連敗を喫した。第2戦では惨敗した第1戦とは異なる姿を見せ、最後まで戦う姿勢を貫くも及ばず、85-93で敗れた。

SR渋谷の勝久ジェフリーヘッドコーチは初戦を落とした後に「今後のチャンピオンシップの可能性を考えた場合、どうやってカムバックするかがすごく大事」と第2戦ですぐにやり返す意欲を見せたが、結果は連敗。指揮官が「試合の出だしがすべてでした」と語ったように、序盤で背負った2桁のビハインドが足かせとなった。

オフェンスの中核を担う長谷川智也は「昨日と同じような展開になってしまったというのは正直ありました。千葉さんの走るバスケになかなか対応できず、その序盤の10点が最終的な差だった」と同様の見解を示した。

また指揮官はチームルールを守れなかったことも敗因の一つに挙げていた。例えばガードはオフェンスリバウンドを参加しない指示だったが、流れの中で取りに行ってしまい、結果としてディフェンスの戻りが遅れてアウトナンバーとなる状況が多々あった。そこで走られたことで千葉にとって理想的な展開となってしまった。

「徹底することができず、飛び込んでしまう場面があってそこは反省があります」と当事者の長谷川は責任を受け止めた。「癖もありますし、負けている時間帯にセカンドチャンスを取りに行きたい気持ちも強かったです。それが1点や2点の差なら戻ればいいという気持ちになりますけど、10点開くとこぼれ球を取りに行かないとと思ってしまいました」

「自分を犠牲にする仕事も担わないといけない」

SR渋谷はディフェンスを売りにしているが、裏を返せば得点力不足をディフェンスでカバーするチームだ。現在1試合平均71.8失点はリーグ3位だが、平均71.2得点はワースト3位であり、長所と短所が同居している。

長谷川はオフェンスでのオフ・ザ・ボールの場面でチームの誰よりも運動量が多い。自分のシュートチャンスを作るだけでなく、ディフェンスを引っ掻き回す役割を担っている。そこからのズレがディフェンス攻略の起点となる。

「シュートを決めることが一番ですけど」と長谷川は前置きし、「自分が動いた中で、僕が引きつけて誰かが空くっていうのは必ず出ますし、だからアシストも徐々に増えてると思います。自分を犠牲にする仕事も担わないといけないですし、かと言ってパスばかり狙っていたらそれもダメ」と自身の仕事を説明する。

意欲的に働いてはいるが、彼自身の中ではまだまだ個のレベルアップの必要性を感じている。「折茂(武彦)さんとかはファウルのもらい方がうまいですし、少しのズレでシュートも打てるしファウルももらえるので、そこの感覚ですよね。『今ディフェンスがいるけど、打ったらファウルもらえるな』とか、『シュートフェイクで飛ばせるな』とか、そういうことを僕がもう少しできれば、メンバーも自分ももっと楽になると思います」

現状を打開するためのカギを、彼は他に求めない。「チームでやらないといけないですが、個を高めないといけないです」と言い切った。

再び求められるチームの『一体感』

前半戦のSR渋谷はケガ人を多数抱える中、チームディフェンスでその危機を乗り切った。むしろ人数の少なさが考え方をシンプルにし、選手の自主性が引き出されたことで好成績を残した。だがケガ人が復帰し、後半戦に弾みをつけるべき直近の10試合で3勝7敗と失速した。

勝久コーチは後半戦を迎える以前このような話をしていた。「逆に人数がいることで、今度はもう一回選手たちが自分たちの役割を理解したり、強みを探さないといけません。今は人数がいるので、選手は限られた時間の中で結果を出さないといけない状況になり、考え方によっては今までよりももっと難しい」。まさに今チームは、勝久コーチが危惧していた状況に面している。

長谷川は言う。「僕らが勝ってた時はみんなが30分前後出てました。みんなでやるというのは良いと思いますが、中心メンバーが頑張らなきゃいけないシーンもあると思います。プロである以上、誰かにプレータイムが偏ることも当たり前だし、勝つためにはそういう犠牲も払わないといけない。タイムシェアで自分の力が出せない人もいる」

えてしてチームがうまくいっていない時に不満が出てくるもの。『一体感』をスローガンに掲げるチームにとって、コーチと選手のディスコミュニケーションは避けたいところだ。

SR渋谷は現在22勝18敗。他地区であれば2位を争う成績だが、激戦の東地区では苦しい状況にある。後ろに迫る栃木ブレックスとはわずか1ゲーム差。ラスト20試合、前年王者栃木の猛追をかわしてチャンピオンシップに出場するには、『一体感』を取り戻すことが絶対条件だ。

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