葛原大智

葛原大智は大東文化大のキャプテンとしてインカレMVPに輝き、富山グラウジーズでの2年半で貴重な経験を積んだ。大東文化大も富山も、選手を型にはめることなく個性を生かすチームであり、葛原にフィットしたと言える。個性派ながら確かな実力を持つチームメートの薫陶を受け、また刺激を与え合う同期の存在もあって、身体は一回り大きくなり、精神的にもたくましくなった。その葛原はプロ3年目を前に、レバンガ北海道に移籍することに。このタイミングでプロとして得た経験、そして今後のキャリアについて葛原に語ってもらった。

「熱さを出して、チームを引っ張る選手に」

──富山グラウジーズからレバンガ北海道への移籍が発表されました。初めての移籍となりますが、決め手は何でしたか?

契約満了で自由交渉選手リストに載ったことで他のチームからの話が聞けるようになって、レバンガからオファーをいただきました。新しくヘッドコーチになる宮永雄太さんからも直接お電話をいただいて。オファーはいくつかありましたし、富山でこのまま続けたい気持ちもあったのですが、熱烈なオファーに負けてじゃないですけど、話を聞くうちに自分も一緒にやりたい、富山で得た経験を北海道で生かしたいと思いました。

宮永さんは特別指定の時に富山で半年間だけですけど一緒で、プロとしての心構え、ゲームに入る前の準備だったりを教えてもらいました。大学までは試合前にセットプレーのことを深く考えたりすることが正直なかったんですけど、宮永さんからはそういう準備の大切さを学ばせてもらいました。プロになるタイミングでそれを学べたのはすごく大きかったです。

──富山で2年半を過ごして、プロとして成長できた部分はどこでしょうか?

いろいろありますけど、高校や大学とは違ってプロは自主性が大事だということです。自分でフォーカスしなければいけないので、上手くなるのも下手になるのも自分次第だと思いました。富山のチームメートで阿部(友和)さんを例に挙げると、バスケットボールに対する情熱がすごいんです。24時間バスケットのことを考えて、練習やトレーニングを見ていれば「プロはこれぐらいやらなきゃいけないんだ」と、スタンダードがどれだけ高いのかを感じられました。宇都(直輝)さんで言えば日本人選手であれだけ得点力のある選手はほとんどいません。その中で富山を引っ張って、チームを勝たせる責任を背負っている。その姿を見て学びました。

──そういう意味では富山ですごく良い経験ができていますね。北海道で「この選手から学びたい」というのを1人挙げるなら?

一番は大濠の先輩である(橋本)竜馬さんですね。高校から三河、琉球、北海道とずっと竜馬さんのプレーを見てきていますけど、すごい熱い人でみんなを引っ張る統率力があります。そういった熱さを僕も出して、チームを引っ張る選手になりたいです。

──プレーの面では、この2年半でどんな成長がありましたか?

シュートを打つ意識ですね。もともとシュートは得意じゃなかったし、高校や大学ではドライブで点数を取れたんですけど、プロでそれだけじゃ不十分だと試合で痛感させられました。今後生き抜くためにはシュート力が必要です。まだまだですが、少しずつ成長はしていると思います。

──その一方で、フィジカルとフットワークを生かしたディフェンスでは一定の評価を得られているのでは?

そうですね。ディフェンスは高校の時はガードに、大学ではスコアラーに付いて、スタッツも自分の数字より相手に点数を取られないことを意識して、1桁に抑えられる試合もあって自信は持っていました。ただ、自分ではディフェンスを武器にしてきたつもりもなくて、ただ一生懸命にやっていたことが評価に繋がったんじゃないかと思います。

葛原大智

「リバウンドやルーズボールで身体を張ります」

──それでも、富山でプレータイムを得られたのも北海道との契約が決まったのも、葛原選手が評価されたからこそですよね。自分のどんな部分が評価されたと思いますか?

そこはディフェンスだと思いますが、自分自身は「これでいいのかな」という感覚です。でも、北海道でもディフェンスを期待されているのは間違いないですね。宮永さんの就任会見の記事でも、40分間ディフェンスを頑張って速いオフェンスに繋げるとあって、僕自身もそのスタイルを期待されていると思います。ディフェンスで前から激しく当たる、そこから速い攻めに持ち込む。そのイメージを形にできるよう、微力ながら頑張るつもりです。

──初めての移籍で、新しいチームで新しいバスケットをやるわけですが、不安はないですか?

速い展開のバスケットは得意な方だとは思っているので大丈夫です。ただ、分からない部分ももちろんあります。富山は外国籍選手が速い展開をあまり得意とはせず、ハーフコートがメインのバスケットだったので。それでも宇都さんが速い展開を作って、そこに合わせていたので少しは慣れていると思います。

ディフェンスにしても、結果的に富山はディフェンスのチームではなかったので、宮永ヘッドコーチの求めるシステムにフィットさせられるかな、という不安は少しだけあります。それでも若いから体力はあるので、行けと言われれば40分間でも前から当たります。僕自身は派手なプレーをする選手ではないので、リバウンドやルーズボールで身体を張ります。ルーズボールはスタッツには残らないですけど会場の皆さんの印象には残りますし、最後の大事な時間に響いてくるので、そこは徹底して頑張ります。

──特別指定で富山に来る前、杉浦佑成選手、青木保憲選手と一緒に教育実習で母校の大濠に戻って来ていましたよね。あの3人がプロになってB1で頑張っているわけですが、同級生の活躍は励みになりますか?

そうですね。このオフは『92ミネch』というyoutubeの企画で大濠の先輩後輩とたくさん交流させてもらって、すごく刺激をもらえました。その中でも同級生の2人に負けたくない気持ちは強いです。大濠の同期として比べられる時に、「葛原の年」って言ってもらえるようになりたいです。

僕は最初のシーズンに富山が入れ替え戦まで行ったのはすごくショックで、富山が悪いわけじゃないですけど、SR渋谷と川崎でプレーしている2人に遅れを取っているとすごく感じました。それでも仲は良くて、連絡を取り合って悩み事を共有したり、試合の後に食事に行っていろいろ話しています。コートの中ではバチバチやるんですけど、オフコートでは高め合える仲だと思っています。

葛原大智

東地区の強豪チームに「一泡吹かせてやりたい」

──新しい所属チームとなるレバンガの印象はいかがですか?

最初に思うのは会場の熱量ですね。富山もすごいですけど、北海道も同じぐらい盛り上がって、すごいなという驚きがあります。

──移籍が決まってから北海道には行きましたか?

住むところを決めるために行きました。富山では今の時期、少し肌寒くても半袖短パンで過ごしているんですけど、その格好で北海道に行ったらみんなコートを着ていて驚きました。暑い時期は1週間しかないからエアコンのない物件が多いよと言われて驚いて、冬はどうするのかと思ったら暖房専用の機械があるから大丈夫と言われてまた驚いて(笑)。寒いのは苦手なのでちょっと不安です。あとは慣れるまでは、雪が積もったら車の運転には気を付けなきゃいけないですね。

楽しみなのは食事で、先日もご馳走してもらったジンギスカンが美味しかったです。スープカレーもお寿司も美味しいと聞いているので楽しみですね。富山の食事が一番美味しいと僕は思ってるんですけど、超えてきてほしいです。

──初めての移籍ということは、『古巣のチーム』ができるということでもあります。富山との対戦を想像すると?

負けたくないですね。特に阿部さんだったり宇都さんだったり、僕とかかわってくださった選手に負けたくない気持ちが強いです。富山はみんな負けず嫌いがすごいので、負けたら「俺たちの方が強い」とか絶対言ってくるので負けられません(笑)。

──富山の熱いブースターから、すごいブーイングを浴びるかもしれません(笑)。

これまであまり経験したことがないので、徐々にでお願いしたいです(笑)。富山ではプロ最初の2年半を過ごして成長できて、これは本当にチームメートやブースターさんやスポンサーの方々のおかげです。新型コロナウイルスの影響でシーズンが途中で終わってしまいましたが、長いオフで自分を見つめ直す機会がたくさんあって、自分に足りないところが分かったので、その部分を成長させた姿をまた富山の皆さんに見てもらいたいです。ブーイングでもいいんですけど、できれば富山のホームゲームでは温かい声援をいただけるとありがたいですね(笑)。

──富山以外に、意識するライバルチームはありますか?

東地区のチームに勝てていないのは気になっています。チャンピオンシップに進出した2018-19シーズンも、A東京と千葉、宇都宮には一度も勝てませんでした。個人的に同じポジションの選手に勝てていないですし、チームも惜しいゲームはするけど勝ち切れない印象があります。地区制が変わりますし、チームも変わりますけど、一泡吹かせてやりたい気持ちは持っています。

──北海道の2番としては、引退した松島良豪選手(1、2番)の印象がファンにとって強いと思います。『松島劇場』2代目もやってみては?

松島さんはハードルが高すぎるのでナシでお願いします(笑)。僕はそんなに面白いキャラではないですが、その場その場に応じてファンの皆さんに喜んでもらえることがあれば頑張ります。プレーの面では先ほども言った通り、自分の強みであるディフェンスをハードにやる姿を見せるつもりです。北海道の皆さん、応援よろしくお願いします。