滋賀レイクスターズは将来有望な若手がその才能を存分に発揮し、個々の力がチームとして噛み合うことで大きく躍進した。Bリーグ4年目のシーズンにして初めて勝率5割を超え、チャンピオンシップ進出を狙える位置につけていたし、天皇杯ではファイナルラウンドに進出。『残留力』が売りだった滋賀はベスト8に食い込むチームへと成長しつつあった。しかし、躍進のシーズンは新型コロナウイルスにより中止となり、その後は主軸へと成長した若手が次々と移籍することに。そんな状況で狩俣昌也は「滋賀の皆さん俺います」とtwitterに投稿。彼もまた昨年にシーホース三河から滋賀へと新天地を求めて、チームの躍進に貢献した一人だ。狩俣は「よりタフに戦う」というスタイルを貫くことで、また新たなレイクスターズを作り上げるつもりだ。
「皆さんに元気になってもらえたらとの思いでつぶやきました」
──先日、ご自身のTwitterで「滋賀の皆さん俺います」とツイートしていました。あれはどんな気持ちでツイートしたんですか?
チームメートから相談を受け、リリースが出る前からたくさんの選手が出ることは分かっていたので、寂しい思いはありました。ただ、あらためてリリースが出た時に、もっと寂しい気持ちになっちゃったりして。あの時はTwitterやSNS上でも、ファンの皆さんの悲しさや驚きもすごく伝わってきていたので、少しでも皆さんに元気になってもらえたらと、またちょっと面白いんじゃないかと思って発信しました。
──私もあのツイートを見た時にちょっと笑ってしまいました。ファンの方からの反響も大きかったですね。
そう思ってもらえたら良かったです(笑)。ありがたいことに皆さんがポジティブな反応をくれたので、逆に僕が励まされた感じになって、頑張ろうという気持ちになりました。
──では、今シーズンのことを聞かせてください。昨夏にシーホース三河から滋賀に加入して、チームは大きくステップアップしました。狩俣選手もかなり満足度の高いシーズンになったと思います。
僕に限らずですが、それぞれが役割をしっかりともらっていたので、勝利への貢献や満足度はみんな感じていたと思います。ただ、三河でも自分の役割を全うしていたので、大きな差があるわけではないですね。今シーズンの滋賀は、各選手が役割を全うできるようになって来た時に、勝ち星も増えてチームが良い方向に進んでいたと思います。
──今シーズンの対三河戦は3勝1敗と勝ち越しましたが、古巣相手に勝つのはやっぱり気持ちが良いものですか?
そうですね(笑)。だいぶ意識していたので勝てて良かったです。プロ選手としては古巣とのゲームで成長した姿を見せることは一つの恩返しでもあると思うので、遠慮せず行きたい思いがありました。それに僕の場合は緊張よりも楽しみの方が大きかったです。これは僕自身の感覚ですが、出て行った選手の方が失うものがないと思うんですよ。ただただ勝ちに行けるというか。逆に残っている選手の方がプレッシャーがあるんじゃないかなって。
「皆さんも今シーズンのようなチームの姿を期待している」
──それで言うと滋賀に残っている狩俣選手は、来シーズンはプレッシャーがすごいことになりそうですが……。
そうですね。みんなが今シーズン頑張ってくれたおかげで、プレッシャーはすごいことになりそうです(笑)。滋賀のファンの皆さんも今シーズンのようなチームの姿を期待していると思うので、そのためにも勝たなければいけないですね。ただ、練習でバチバチ戦っていた仲間がいろいろなチームに行ったので、対戦できるのは楽しみでもありますよ。僕は負けず嫌いなので彼らにも負けたくないですし、バチバチ戦う姿をファンの方に見せられたら、楽しんでもらえるとも思っています。
──負けず嫌いということですが、今シーズンは齋藤(拓実)選手が全試合先発出場でプレータイムも平均25.6分と長かったです。狩俣選手自身、新天地の滋賀でもっとプレータイムがほしいという気持ちはありましたか?
昔はそういう気持ちもありましたが、今はそれぞれの役割をしっかりと全うして、チームで勝つことを大事にしています。なので「もっと試合に出してくれ」ということは特になかったですね。試合中も齋藤選手とのタイムシェアの部分ではコーチの指示に関係なく、2人で話し合って決めていました。コーチもそれを許してくれていたので、齋藤選手がプレーしやすいように、そしてお互いがプレーしやすくなるように話し合っていたんです。
──チーム的にもベテラン選手がメンター的存在となって、支えているイメージがあります。
僕自身はあまりメンターとか考えたことがないですね(笑)。でも、今シーズンはチームのバランスの部分を意識していました。ジェフ・エアーズ選手がすごくリーダーシップがある選手で、チームを鼓舞したり、喝を入れたりしてくれていました。ただ、そういう気持ちが強すぎて、若い選手が委縮したら良くないとも思っていたので、ジェフが言いたいことをくみ取りながら、若手の意見や考え方を上手くシェアすることを気をつけていました。ショーン(デニス)ヘッドコーチも外国の方なので、ガンと熱くなる時があります。僕自身はそういうのは好きですし、良いことだと思いますが、若い選手はそれを受け入れられないこともあります。ちょっと不満そうな顔をしていたら近くに行って話を聞いてあげたり、「こういう意味だと思うよ」とポジティブになる言い方をすることを意識していました。
──まだメンバーは出揃っていませんが、来シーズンもプレー面以外では同じ役割をやっていきますか?
まだ分からないですが、僕自身の役割は変わると思っていて、同じやり方ではきっと上手くいかないとも思いますね。というのも、もともと滋賀にいた佐藤(卓磨)選手や高橋(耕陽)選手、ずっとキャプテンをしていた狩野(祐介)選手が抜けたので、今まで滋賀が作ってきたものを今度は僕たちが伝えなければいけません。今シーズンはジェフや他の外国籍選手もすごく人間性が良くて、それぞれが違うリーダーシップで引っ張ってくれました。これからどんな選手が加わるかも分からないので、ジェフのような役割を僕がしなければいけないかもしれないですし、そういうところは臨機応変に対応していきたいです。
「なにくそ! という気持ちをプレーに出して、タフに戦っていけたら」
──今シーズンは大きく飛躍した滋賀ですが、新たなシーズンはメンバーもガラリと変わって仕切り直しになります。またチームをイチから作り直すのは大変でしょうが、狩俣選手としても「大変だな」という思いはありますか?
それはありますね。ただ、今シーズンも最初から良かったわけではなく、アーリーカップではB2のチームに負けたりして、そこから少しずつチームを作り上げてきました。またその作業をするのはやっぱり大変ですけど、それでも僕だけじゃなくて伊藤(大司)選手、谷口(光貴)選手、前田(怜緒)選手もいるし、スタッフにも今シーズンを経験した頼りになる仲間がいるので、みんなで力を合わせていけばできると思っています。
──狩俣選手自身は来シーズンの滋賀がどんなチームになると思っていますか?
まだ選手が揃っていませんが、タフなチームになりたいとは思います。プレータイムを求めてくる新加入の選手が多いと思うので、その部分では競争しながら、よりゲームに対してタフに戦っていきたいです。今はみんな他のチームに移籍した選手にフォーカスしていますが、入ってくる選手たちはそこに対して「見返してやる」という気持ちがあるはずです。チーム全員がガムシャラに、「なにくそ!」という気持ちをプレーに出してタフに戦っていけたら面白くなると思っています。
──移籍のことでこれだけ話題になった滋賀が、今シーズンのように来シーズンも飛躍したらリーグ自体も盛り上がりますね。
そうですね。そういうチャレンジは良いことなのでしていきたいです。僕自身としてはあのツイートをしてしまったので(笑)、そこは自分に対してプレッシャーをかけて、口だけじゃなくプレーでも見せたいと思っているので、皆さんの期待に応えられるように頑張りたいです。
──それでは最後に滋賀のファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
今シーズンは応援ありがとうございました。チームが成長している中で、新型コロナウイルスによってシーズンが中断して、僕たちの試合を見せられなくなったのはすごく残念ですし、僕自身もすごく悔しかったです。気持ち的な振り幅もすごく大きくて、皆さんもつらかったと思います。でも、来シーズンは新しい選手もたくさん入って来ますし、変わらずに応援していただきたいと思います。無観客試合を経験して、ファンの皆さんの声援が僕たちのモチベーションの一つになっているとすごく分かったシーズンだったので、一緒に戦ってほしいです。試合自体がどういう形で行われるかまだ分からないですが、是非熱い声援を引き続きいただけたらうれしいです。
チームメートの移籍が相次ぎ「寂しい思いはあった」という狩俣選手。それでも今までの仲間と新たな仲間たちとともに、タフに戦って行きたいと話してくれました。コート内外でチームを支えてくれる狩俣選手は頼もしい限りです!#Bリーグ #滋賀レイクスターズ https://t.co/Zbpatk5gMz pic.twitter.com/b2MXKPVPgh
— バスケット・カウント (@basket_count) June 17, 2020