文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

あらゆる面でSR渋谷を凌駕した『完全勝利』

昨日、船橋アリーナで行われた千葉ジェッツとサンロッカーズ渋谷の第1戦。千葉のキャプテン、小野龍猛が「今日の課題は何もないです。速攻が出せて、インサイドアウトも流れの中でうまくやれた」と試合後に語ったように、千葉が終始優勢なまま89-48で圧勝した。

立ち上がりは両チームの集中した堅守が目立つ展開となったが、ディフェンスリバウンドを取ってからの千葉のトランジションには恐るべきキレがあった。開始4分、リバウンドを拾ったギャビン・エドワーズからアキ・チェンバースへつなぐファストブレイクが決まり6-2としたところでSR渋谷が最初のタイムアウト。長谷川智也の3ポイントシュート、ロバート・サクレがうまくペリメーターに逃げてマークを外してのジャンプシュートを決めて食い付こうとするが、それ以上のペースで千葉が得点を重ねていく。

第1クォーター残り2分半、16-9とリードした千葉は西村文男に代えて富樫勇樹を投入。元旦のアルバルク東京戦以来の復帰となった富樫が入ってトランジションオフェンスのキレがさらに増し、第1クォーターを終えて25-11と突き放した。ただ、攻勢の主役はアキとマイケル・パーカーだった。アキがエナジー全開のプレーでディフェンスを支え、パーカーは抜群のタイミングでのダイブで合わせのパスを呼び込み、ゴール下での多彩なフィニッシュで得点を量産した。

第2クォーター、SR渋谷は劣勢を覆すべくベンドラメ礼生が果敢に攻めるがチャンスを決めきれない。残り3分半、オフェンスリバウンドを2回拾って放った3度のシュートはすべてリングに嫌われ、3度目のシュートのリバウンドを拾われ逆襲を浴び、エドワーズにバスケット・カウントの3点プレーを決められ18-39と差を広げられる。

チーム一丸、ディフェンスから速攻につなぐ展開に

44-26と千葉の大量リードで始まった後半、菊池真人と山内盛久の3ポイントシュートが決まりSR渋谷にようやくエンジンが掛かったかに思われたが、良い時間帯は短かかった。小野が身体をぶつける嫌らしいディフェンスでSR渋谷のセットオフェンスを遂行させず、アキは飛び込みリバウンドを拾っては速攻を繰り出す。

インサイドの攻防でも、エドワーズはペイント内で立ち止まっての押し合いになればサクレやジョシュ・ハレルソンに苦労するが、走る展開になればスピードで圧倒した。試合を通じてペイントエリア内の得点では52-12と千葉が圧倒。速攻からのレイアップだけでなく、ゴール下での合わせもよく決まった。SR渋谷は何とか流れを変えようと奮闘するが、慌てれば慌てるほどにリバウンドから走る千葉のバスケットの餌食になった。

残り3分48秒、レオ・ライオンズのスティールからの速攻でパーカーのダンクが決まり、60-35と25点差に。そして残り3分、アキがラインを割ろうとするボールにダイブしてつなぐと、そこから反撃に転じたアキが3ポイントシュートを沈めて65-35と30点差に。最終クォーターを待たずして勝敗は決してしまった。

第4クォーター、もはや戦う力をなくしたSR渋谷は9得点しか奪えない。最終スコア89-48、ケガ人が復帰して久々にメンバー全員が揃った千葉が、全員出場で勝利に花を添えた。

復帰戦の富樫「後半はちょっと足が重くなった」

SR渋谷にとって48得点はシーズン最少得点。また堅守自慢のチームにとって89もの失点を喫したのもショックが大きい。「千葉のバスケを40分間やらせてしまった。コーチとして責任を感じています」と勝久ジェフリーヘッドコーチは語る。「ただ、今後のチャンピオンシップの可能性を考えた場合、どうやってカムバックすることがすごく大事」と今日の第2戦を見据える。

一方、快勝した千葉の大野篤史ヘッドコーチは「ディフェンスからボールをプッシュしてトランジションにつなげる、自分たちのやりたいバスケットができました」と、冒頭で紹介した小野のコメントと同じくチームの出来を称賛。日本代表のワールドカップ予選で1週空いたが、そこは休養にあてたという。試合には出ていてもケガを抱えている選手は多かった。彼らを休ませ、精神面でもリフレッシュさせたことが、このパフォーマンスにつながった。

ようやく戦線復帰を果たした富樫勇樹は20分の出場、7得点4アシストという数字。「スピードを武器にしてやっているので、後半はちょっと足が重くなったかな。走る練習はやっていたんですけど、ディフェンスは対人じゃないとできないので、そこで体力を使ってしまいオフェンスに影響したと思います。その部分が戻ってくれば、もっと自分らしいプレーができると思います」と語る。

東地区首位のアルバルク東京が敗れたため、2位千葉とのゲーム差は1に。しかし、大勝した翌日に嘘のように負けることはしばしば起きる。SR渋谷も2試合続けて不甲斐ないプレーは見せられない。千葉が、SR渋谷が2試合目をどんなアプローチで戦うのかに注目だ。