成長を求めて千葉ジェッツへ、『難しい選択』を下した佐藤卓磨「恵まれた環境だと自分に甘くなる」

成長を求めて千葉ジェッツへ、『難しい選択』を下した佐藤卓磨「恵まれた環境だと自分に甘くなる」

2020/06/13

佐藤卓磨

現在25歳の佐藤卓磨は東海大4年時に滋賀レイクスターズに特別指定選手として入団し、3シーズンプレーした。チームがシーズンごとにステップアップするのに歩調を合わせるように佐藤も成長し、今シーズンは出場した40試合すべてで先発を務め、チームの躍進に貢献している。心身ともに滋賀で成長した佐藤だが、このタイミングで千葉ジェッツに移籍することを決断した。成長する基盤が整った環境を飛び出すことにはリスクもあるし、「プレータイムを確約される滋賀に残った方が良い」との声もあった。それでも佐藤は滋賀で人間的に一回り大きく成長したことで、あえて移籍という『難しい選択』を決断した。

「悪いエゴをなくして、良いエゴを出すことを学んだ」

──まずは滋賀でのことを聞かせてください。2018年1月にBリーグデビューを果たして、2シーズン半を滋賀で過ごしました。佐藤選手ご自身がこの3年間で一番成長したと思うところはどこですか?

高校や大学の頃は親からもらった身体だけでプレーしていた感じでしたが、自分で考えてバスケットをするスタイルにしてくれたのがショーン・デニスヘッドコーチをはじめとするコーチ陣です。もともとショーンは2番3番の選手を育てるのが上手だと聞いていたこともあって、滋賀に入りました。彼は自主性を大事に、自分で考えてプレーさせる方針だったので、この3年間で考える力が一番成長したと思います。

大学時代の話になりますが、4年生だったベンドラメ礼生選手が下級生の僕たちに「東海に入れば上手くなると思っているだろ」と檄を飛ばしたんです。当時の僕は、まさに東海大に入れば勝手にバスケが上手くなると思っていました。礼生さんはプロでも活躍していますが、当時から練習量はもちろんのこと、バスケット自体をすごく観察していたし、考えてプレーしていました。どうやったら上手くなって成長できるかも知っていて、僕はそれをプロになってからやっと気がつきました。

大学時代の僕はスペースやタイミングといったフロアを見てプレーするということができていなくて、攻守ともに自分勝手なプレーが多かったと思います。「自分がこのプレーをしたいからこうする、右に行きたいからこうする」というような選手でしたが、滋賀に入ってからは映像を見て自分や他の選手のプレーを見て整理したり、コーチ陣にアドバイスをもらったりして勉強しました。試合でも味方や相手がどんな動きをしているかを見るようになりましたね。

──自分勝手なバスケでも、認められてプロになったわけです。エゴをどれだけ出すかのバランスが難しいですよね。

高校、大学までは自分が活躍したいという気持ちがありましたが、今考えるとそれは逆効果でした。今はチームの流れや誰に打たせた方が良い、今は僕じゃない、ということを考えられるようになって、逆にスタッツも伸びました。例えば僕がウイングにいてフリーでパスを受けたとしても、近くに狩野(祐介)さんがいたら確率のことも考えて彼にパスします。でも、そうすると今度は狩野さんにディフェンスが寄るので、もう一度僕にチャンスが回ってくるんですよね。そうやってフロアのバランスを考えてプレーすることで、最終的には自分にとってもバスケがしやすくなることが分かりました。エゴはプロ選手にとって大事かもしれないですが、チームの勝利のためには悪いエゴをなくして、良いエゴを出すということをこのチームで学びました。

佐藤卓磨

「ゼロから信頼を勝ち取るところに身を置かないといけない」

──今シーズンは飛躍の年になったと思いますが、実感はありますか?

正直、僕自身は飛躍した実感はあまりありません。チームは勝ち星を増やしていきましたが、まだチームを勝たせられる選手ではないと思っています。僕の中では、まだまだもっとできると思っていますし、映像を見返すと反省点も多いので、今はとにかく早く練習がしたい気持ちです。

──ベンドラメ選手の言葉ではありませんが、プロの世界に入ったからといって誰もが成長できるわけではありません。佐藤選手はこの3年であらゆる面で成長したと思いますが、どんな努力をしてきましたか?

これはすごく自信があるんですが、地味なことをやり続けてきました。トレーニングやシューティングは質が大事だと言われますが、僕は量も同じぐらい大事だと思っています。それにトップのシューターは、やっぱり絶対的な練習量をこなしているんですよ。プロに入っても狩野さんのように、ひたすら練習をやり続けている選手を見てきました。もちろん大好きなバスケットがあることが前提ですが、とにかく地味でシンプルな練習を続けて積み重ねることが、ステップアップに繋がると思って練習してきました。

──移籍が発表された時のリリースで「滋賀レイクスターズというチームに育てていただいた」とコメントしていましたが、精神面ではどんな変化がありましたか?

本当にいろいろな方に支えてもらいました。中でも西村大介社長には本当にお世話になって、社長に「いつか恩返ししたいと思っています」と伝えたんです。でも、社長は「僕になんて恩返ししなくていい。困っている人や他の人にその恩を返してあげたら、それが僕への恩返しになる」と言ってくれて、人としてめっちゃカッコいいなと感動しました。何かを受けたらその人に恩を返すだけではなくて、自分がその思いを違う人に返すのも恩返しだと学びました。それが僕の場合は、日本のバスケットを盛り上げることに繋がるとあらためて感じました。

──滋賀への思いがかなり強いのを感じます。この環境を離れることには躊躇したんじゃないですか?

躊躇どころじゃなかったですよ。滋賀で成長させてもらったし、滋賀で出会った人たちもたくさんいるので、その人たちとまだ一緒に仕事をしたいという気持ちもありました。でも、年明けの日本代表合宿に参加した時に、特に東地区の選手とマッチアップしてみて圧倒的な差を感じました。それは技術どうこうやスタッツなど表立ったところで分かるものではないんですが、一緒にプレーすると彼らは普段からすごい強度の中で練習をしていると肌で感じたんです。その時に、僕がさらに上のレベル、日本代表を目指すのであれば、東地区だったりもっとレベルが高いところに行かなければと思いました。ステップアップするためには、もう一度ゼロから信頼を勝ち取るところに身を置かないといけないと感じたんです。

周りの人からは「プレータイムが確約されている滋賀で続けた方が良いんじゃないか」とも言われました。それでも僕は恵まれた環境だと絶対に自分に甘くなってしまうので、千葉という強豪チームで自分を追い込んでいきたいと思いました。これまでは高校も大学の時も難しい選択をして挑戦してきたので、今回の移籍のテーマも『難しい選択をする』ということでした。

佐藤卓磨

「優勝だったり勝つためのピースになりたい」

──移籍先の千葉は層が厚く、今オフは補強にも力を入れています。その中で佐藤選手が負けないところ、アピールポイントは何ですか?

オフェンスリバウンドへの気持ちとセンスだけはあると思っていて、誰にも負けない自信があります。千葉のような強豪チームではフィフティ・フィフティのルーズボールなどが大事になると思うので、そこで僕がオフェンスリバウンドやルーズボールといったポゼッションに繋がるプレーをしていきたいです。あとはディフェンスをしっかりやって走る、シュートを決めきる。この3つを徹底していきます。優勝だったり勝つためのピースになりたい気持ちがあるので、自分の強みを出して勝利に貢献したいです。

──最後に滋賀ブースターの皆さんへの挨拶と千葉ブースターの皆さんへのメッセージをお願いします。

滋賀のブースターの皆さんには、チームがどんな時でも支えてもらっていました。僕はこれからもステップアップするつもりだし、その時に僕の底にある滋賀で育った思いとブースターの皆さんのことを胸に刻んで感謝しながら頑張ります。今後とも応援していただければ本当にうれしいです。

千葉ジェッツのホームアリーナで開催された2018-19シーズンのチャンピオンシップを、僕はお客さんとして見に行きました。その時にジェッツブースターさんはすごく一体感があって、選手と一緒に戦っていると感じました。こんな会場でプレーできたら選手としてどれだけ幸せなんだろうと感じていたので、そのチャンスをもらえたことに感謝しています。とにかくがむしゃらに頑張るので、応援していただけたらうれしいいですし、応援されるようなプレーヤーになれるよう頑張ります。

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