4試合で74得点はアジア予選でトップの数字
昨日のフィリピン戦に敗れ、日本代表はワールドカップ1次予選で4連敗となった。アウェーでのフィリピン戦は立ち上がりこそ先行したが、第2クォーターに逆転を喫してからは常にビハインドを背負う状態。だが、10点差前後で食らい付く粘りを終盤まで続け、土壇場で1ポゼッション差まで迫る大健闘ではあった。その粘りを支えたのは比江島慎だった。
比江島は11本中8本のシュートを決めて23得点を挙げ、この試合でもスコアラーぶりを発揮。第2クォーター、完全にフィリピンに行っていた流れを呼び戻す一連のプレーなど、エースに相応しい働きだった。ここまでの4試合で素晴らしい働きを見せる比江島だが、1勝が遠い。
「さすがにこれだけ負けるとショックもデカいですし、自信もなくなってくるんですけど……。切り替えるしかないと思っています」と比江島は言う。
この試合では立ち上がりからエンジン全開。「アウェーで出だしが悪かったら取り返しがつかないので、最初から体力も考えずに飛ばしていこうと思っていました」という気迫があった。
この時間は比江島だけでなく全員の意思が噛み合い、攻守に激しいプレーを見せて試合開始からの約5分で20-4と先行。だが、そこからフィリピンにリバウンドを制され、第2クォーター中盤までに逆転され、最大15点差のビハインドを背負った。この約10分間のスコアは実に6-37。簡単に流れを明け渡してしまったこと、相手の流れを切ることができずズルズル後退したことが最大の敗因となった。
比江島もこの時間帯の攻防の出来の悪さが敗因だと認める。「最初はフィリピンがソフトに打ってきた印象があって、そこからフィジカル的にしっかり体をぶつけながらディフェンスをしていましたし、オフェンスも開き直ってきた中で、その勢いを止められず、逆に僕らがソフトに入ってしまった。その勢いを止められなかったことが敗因だと思います」
比江島が求める「ペリメーター陣が得点を取る意識」
予選4試合を終えて積み重ねた74得点.これはアジア予選でトップの数字だ。どれだけ負けが重なっても、これだけのパフォーマンスを見せれば比江島を非難する者はいない。ただ、後が続かずに敗戦を重ねる現状、彼の悔しさは計り知れないものがある。「みんなももちろんやれる実力を持っています。僕はある程度もう経験してきたつもりなので、自信を持ってプレーしています。そこで経験と自信を持ってみんな取ってくれれば全然やれないことはないと思います。もっともっとペリメーター陣がしっかり得点を取る意識を持ってくれれば」と比江島。
この試合、日本のシュートはフリースローを除き高確率で決まった。2点シュートは37本中18本(48.6%)、3ポイントシュートは16本中8本(50.0%)。リバウンドで圧倒されながら接戦に持ち込めたのはこの確率の高さがあったからこそ。ただしデータを確認すると、2点シュートのうちペイント内で決めたものは16本。ペイント外かつ3ポイントライン以内から放ったペリメーターシュートはわずか2本しか成功しておらず、試投数も9本のみ。ペイントタッチをテーマにインサイドまでしっかりアタックする意識をフリオ・ラマスは徹底し、それはある程度は形になったが、今度はペリメーターシュートでの得点が極端に少なくなってしまった。
接戦を勝ち切れない要因は「実力、経験不足」
比江島の言う「ペリメーター陣」には自分も含まれている。比江島は8本のフィールドゴールを決めているが、その内訳はペイント内から5本、3ポイントシュートが3本で、ペリメーターからの得点はなかった。
ゴール下まで持ち込めば、単純にシュートは決まりやすくなるもの。しかし、高さと強さで不利となる国際試合では、より簡単にフリーで打つことができるペリメーターシュートを確率良く決めることが必要だ。ペイントタッチを意識するのは良いが、この部分でアンバランスになってしまうのが、まだ日本が発展途上のチームであることを示している。
「今回に限らず、僕が代表に入ってから接戦を勝ちきる試合は本当に少ないですし、勝負どころでチームの差が出ると思うので、明らかにそれは実力、経験不足かなと」と比江島は語る。
同じ接戦でも、負けるのと勝ち切るのとでは天と地の差がある。今回もラスト30秒で2点差、最終スコア5点差だったが、フィリピンとの実力差はそれ以上にあったと認めるべきだ。「這い上がるしかないですね」との記者の言葉に比江島は「そうですね」とうなづいた。4連敗は喫したが、まだ予選は2試合を残しているし、勝ち抜けの可能性も残されている。ここから這い上がることができるか。Window3まで4カ月間、やるべきことは多い。