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「恐れるのは神のみ」のリンに、コービーは「俺が神だ」

今シーズン開幕戦で右ひざ膝蓋骨の腱を断裂し、シーズン終了となったネッツのジェレミー・リン。このところケガに苦しめられてはいるが、ロケッツでプレーした2011-12シーズンに社会現象にもなった『Linsanity』の印象は今も強い。

当時まだ現役選手だったコービー・ブライアントは、リンが一大旋旋風を巻き起こした時期に、マディソン・スクエア・ガーデンで彼と対戦した経験があった。その試合で38得点をマークしたリンについて、コービーは次のように称賛している。「今日のようなプレーを続けているのだとしたら信じられない。試合前から彼への対策を十分にやったつもりだが、シュートを決められたし、ペネトレイトも許した」。百戦錬磨のコービーがリンを認めた瞬間だった。

ニックスで大ブレイクを果たしたリンだが、大型契約を結んだロケッツでは本領を発揮できず、2014年に名門レイカーズへの移籍を決断する。ニューヨークと並ぶエンターテイメントの街ロサンゼルスに降り立ったリンへの期待は高く、『Linsanity』第2章が見られるのではないかと期待された。レイカーズで活躍するには、まずは『ミスター・レイカーズ』のコービーに認めてもらう必要があった。

ニックス時代のリンを認めたコービーだが、チームメートとなればまた別の評価基準がある。同じガードというポジション、そしてどちらかがポイントガードの役割を担うため、コービーがリンに高い判断力を求めていたことは理解できる。

キャリア晩年であっても、コービーがチームメートに完璧を求めることは全盛期と変わらなかった。チームにとってプラスになるならば、コービーは誰に対しても言いたいことを言うタイプのリーダーだった。そして、コービーは当然のように練習中からリンを追い込み、試合中も何度か声を荒げる場面が見られた。

この時のエピソードを、当時はレイカーズに所属し、今はヒートでプレーするウェイン・エリントンが明かしている。オールスターウィークエンド中に彼が明かした話によれば、普段は謙虚で物腰が柔らかいリンが、コービーのトラッシュトークに応戦したものの、返り討ちにあった時があったという。

「練習中、ジェレミーとコービーのトラッシュトークの応酬になったんだ。リンが『あんたになんてビビらない。俺が恐れるのは神のみだ』と言うと、コービーは『俺が神だ、そうだろ』と言い返していた」

結果的に、レイカーズは同シーズンを21勝61敗、西カンファレンス14位で終了。リンはシーズン終了後に退団し、ホーネッツに移籍した。わずか1年の在籍、それにレイカーズが再建時期だったということもあり、リンがパープル&ゴールドのジャージーを身にまとった印象は薄い。

結果的に『水と油』の関係に終わってしまったコービー&リンのデュオだったが、誰であれ、競争心が強く、ひたすら勝利を追い求めた現役時代のコービーから継続して尊敬を勝ち取るのは、社会現象を起こすこと以上に難題だったということだ。