生原秀将

今シーズンの横浜ビー・コルセアーズはシーズン序盤に初めて勝率5割を超え、神奈川ダービーに勝利するなど、変化の一端を見せた。だが、結果的に残留プレーオフ圏内の11勝30敗でシーズンを終えた。過去を見てもヘッドコーチや選手の入れ替わりが激しい横浜において、早い段階でチームと契約を結んだ生原秀将は、チームの次なる顔として期待される。

「勝ちたいからチームを移るのは違う」

──緊急事態宣言も解除となり、以前の日常に戻りつつあるかと思います。思わぬ長期間のオフとなりましたが、トレーニング以外の時間は何をしていましたか?

ゲームもしないし漫画も読まない人間なので、見つからないまま今日まで来てしまいました。映画も一カ月に1本見るか見ないかくらいで、『ぷよぷよ』を買ったのですが3日くらいで飽きて。バスケばかりやってきて、屋内での遊びを全くやってこなかったので、これが一番の悩みです(笑)。

外食ができなくなって、自炊を始めました。魚は食べるのでヴィーガンとまでは言わないですけど、肉から離れて野菜を多くしています。得意料理はないですが、毎日かぶらないようにしているので、一から始める自分にとっては本当に大変です。レシピを考えてスーパーに買い出しに行ったらいつの間にか時間が経っている感じです。

──まるで主婦ですね(笑)。

本当ですよ、自分がこうなるとは思ってなかったです。料理を考えることが多かったようです(笑)。

──なるほど。ではバスケの話に移ります。早い段階で横浜との契約が発表されましたが、契約の決め手はなんでしょう?

他にも話をいただいていたんですけど、シーズンが終わってフロントと話した時にチームの中心となって頑張ってほしいと言ってもらったので。自分を必要としてくれるチームがあるのはうれしいことです。自分の中で勝ちたいからチームを移るのは違うと思い、今シーズン勝てなかったのは試合に出ている自分のせいでもあったので、それが一番の理由ですね。

──勝てなかったとはいえ、アシスタントから昇格した福田将吾ヘッドコーチが指揮を執って以降、浮上の兆しが見えていたかと思います。その中で福田コーチの移籍には驚きました。

ヘッドコーチが代わるかもしれないとは聞いていたんですけど、アシスタントで残るとは思っていたので正直僕も戸惑いました。

──特に生原選手がスタートに定着し、起用法も定まったことでチームは良くなっていったと思います。

その通りですね。シーズン前半戦はプレータイムも使われ方もいろいろで、(田渡)凌君がアグレッシブに攻めるタイプなので、バランスを考えてコントロールに回りました。スタートで出るようになってからはあまり考えずに、コントロールとアグレッシブさが良いバランスでやれていたと思います。

生原秀将

中学時代は「自分が練習を組んでいました」

──栃木ブレックス、シーホース三河と横浜で3チーム目となりますが、自分が目指すポイントガード像に変化はありましたか?

特に大きな変化はないですね。ただ三河での1年は周りに点が取れる選手がたくさんいたので、コントロールの意識が強かったです。もともとバランス良く得点も取ってコントロールするタイプだったので、最初は大変でしたが横浜に来て以前のように戻せたと思います。

──大学時代はインカレ3連覇、栃木に入って初優勝を経験するなど、勝ちの味を知っているだけに、勝てないことへの葛藤はなかったですか?

4年連続で勝ってはいましたが、もともと高校までは強いチームにいなかったので、そこでの葛藤はなかったです。大学3、4年から勝ち始めただけで、ずっと日の浴びないところでやっていたので、初心に戻った感じです。強いチームを倒す喜びを知っているので、戸惑いはなかったですね。

──反骨精神が戻り、また一つキャリアにおいて糧となったシーズンになったのではないでしょうか?

そうですね、個人としてステップアップしないと食べていけないですし、毎シーズンどこまで成長できたかを考えています。辞めた後のことは考えてないですけど、バスケをやっている限りはバスケのことをたくさん知りたいと思っていて、試合の勝敗はもちろん大事ですが、僕が一番大事にしているのはバスケへの探求心なんです。

選手やコーチから学べることはたくさんあって、自分の知識だけでやるのが嫌いでなんです。新しい知識を得た時が一番楽しいというか。映像を見るにしてもただ強いチームを見るのではなく、弱いチームでもこの動きはすごいとか新鮮だなとか、そういうのを見つけるのが前から好きでした。

──好プレー集ではなく、戦術など細かな部分に注目するということですね。これは玄人ならではの見方ですね。

中学校の顧問の先生がバスケ専門の先生ではなく、練習メニューを自分で決めろと言われて自分が練習を組んでいました。そこからいろんな本を読んだり、映像を見たりするのが楽しくなりました。自分がやらないと勝てないわけですから。でもそれが大学で生かされましたね、フォーメーションもすぐ書けるようのなって、先生に図面で見せたりもしました。

──選手兼アシスタントコーチでいいんじゃないですか?

これが悲しいことにシーズン中は書いたり考えたりするのは嫌なんですよね。オフにボールが触りたくなるのと同じように、考えるのが好きになるんですよ。シーズン中はプレーに集中します(笑)。

生原秀将

「スタッツは気にしない、目標にもしない」

──来シーズンに向けて、数字的な目標はありますか?

僕は気にしいなので、スタッツを見たり過度に気にするとそれだけで緊張してしまうんです。シーズンが終わってからは見ますがシーズン中は気にしないようにしているので特別な目標はないですね。

試合後も相手のスタッツは見ますが自分のはほとんど見ないですね。ただ、トレーナーには僕に一番必要な課題をくださいと言っているので、数字は分からないですけど、それに合ったワークアウトはしています。強いて言えば、ペイントタッチの回数を増やして、ぺイント内のシュート確率を上げたいです。ロング2ポイントシュートが多かったので、ステップバックで3ポイントシュートにするのか、もうワンステップ切り込むかを判断したいです。

──新シーズンは2地区制となり昇降格がありませんが、どのようなイメージで臨みますか?

激戦の地区に入ったので自分たちの立ち位置を知るチャンスだと思っています。今シーズンに初めて川崎(ブレイブサンダース)に勝って、強いチームを倒すよろこびを再確認しました。同じ地区に強いチームがたくさんいるので、前向きにトライしていきます。

──田渡選手が自由契約になったことで、生原選手がビーコルの新しい『チームの顔』になるのではと思っています。ファンに向けてメッセージをお願いします。

フロントと選手の関係がハマってクラブが一つになれば強いチームになるポテンシャルはあると思っています。僕が間に入るわけではないですけど、ケンジさん(山田謙治)も編成に加わったり、間違いなく悪い方向には向かっていないと思います。自分のことだけではなく周りのケツを叩いていきたいです。メンバーが代わってファンの方も不安になるかもしれないですけど、ビーコルが一つになるためにも、僕がチームを引っ張っていけるような選手になります。