主力選手の故障によって成績を落とすチームは多い。だがサンロッカーズ渋谷はケガ人が続出する中でも22勝14敗(リーグ全体6位)と好成績を残している。自身もケガを負いチームを外から眺める期間が長かった伊藤駿に、ケガとの向き合い方と終盤戦の意気込みを聞いた。
ストレス発散に「甘いものばかり食べてました(笑)」
──右ハムストリングス肉離れのケガで年末の約1カ月間、戦列を離れました。ケガにあまり縁のないイメージですが、過去に大きなケガの経験はありますか?
シーズン前に練習が始まってからなどは毎年ありましたが、シーズン中にこんなに長く休んだことはないですね。
──ケガをしている間はどういったことを重視して過ごしていましたか?
トレーナーの人とよく会話をして、現段階の自分の状況をしっかり把握することを第一に考えていました。動けないことに対してすごくストレスはあったんですけど、動けないなりにチームを見ることができて、このチームに足りないこと、できていることを選手と話したりしました。自分自身も常にみんなと一緒にいれるように、同じ目線で戦うような気持ちではいました。
──動けない中でチームに帯同することはストレスが溜まると思いますが、そういったストレスはどのように解消していましたか?
家にずっとこもっているのが嫌なので、ちょっと外に出て近くのコーヒー屋さんに行ったりしていました。一回外に出ることが何かしら自分の中でのリフレッシュになると思っています。
甘いものが好きなので、甘いものばかり食べてました(笑)。少し太りましたけど、動けばすぐに戻る体質なので、このくらい食べても大丈夫だという自信はありました。もしかしたら食べ物にストレスを解消できるような要素があったのかもしれないです。
──伊藤選手が戦列を離れてる間もチームは好調を維持し、11勝2敗という好成績を残しました。伊藤選手が思うチームの好調の要因はなんでしょう?
僕が抜けて、広瀬(健太)さんが抜けて、(長谷川)智也が抜けて、出る人は絶対的に限られてるじゃないですか。交代がいない分、自分がやらなきゃという責任感も出てきます。シュート一本にしろ、良い意味で振り切った気持ちでやってたんじゃないかなと思いますし、それが良い方向に向いたのは間違いないと思います。
「大事な場面で声を出し、クレバーに周りを見る」
──チームが好調で安心する一方で、自分がいなくてもチームは回るという事実に対し、焦ったりとか寂しい思いを抱いたりすることはなかったですか?
それは全然なかったですね。広瀬さんが「ケガ人が帰りづらい雰囲気を作ってくれるよね」みたいな冗談は言ってましたけど。僕はそんな風に思わなかったです(笑)。
──今シーズンから一人キャプテンとなり、責任感が増したと以前に話していましたが、チームにずっと帯同していたのはキャプテンとしての責任感があったからでしょうか?
「キャプテンとして」という気持ちは少なからずあったかもしれません。例えば僕が今キャプテンをやっていなかったら、別にそういう気持ちにはならなかったのかもしれないですし。そこまで「俺についてこい」というタイプではないので。
──ちなみにこれまでずっとキャプテンを務めてきたのですか?
中学校は副キャプテンでしたけど、違う人にやらせた理由が「お前は小学校の時にやってるから、違うやつに経験させたい。本当はお前なんだけど」みたいな感じで顧問の先生に言われました(笑)。実質、小中高大まで全部やっていますね。
──プロでもキャプテンを任されていますが、ご自身的に選ばれる理由は何だと思いますか?
難しいですね。自分にどこかしら甘えがあります。正直、毎日100%声を出しているかって言ったらそうじゃないかもしれなくて、浮き沈みがあります。それでもキャプテンに選んでもらっている理由は、大事な場面で声を出したり、どんな時でも意見を言えるとか、クレバーに周りを見ることがあるんじゃないですかね。
三者三様のキャプテンとしての在り方を見て
──Mr.キャプテンと言っても過言ではないと思いますが、過去にキャプテンで影響を受けた選手などはいますか?
僕が大学3年生の時に4年生でキャプテンをやっていたのが今(シーホース)三河でやっている橋本竜馬さんでした。竜馬さんは自分の意見は絶対に言うし、常にアグレッシブに声を出しているし、プレーでも引っ張るし。いわば『オラオラ』というか、ついてこいというタイプのキャプテンでした。彼を見てそれってやっぱり大事だなって思いましたね。キャプテンがみんなの一歩前に出て先陣を切って走るとか。そういう背中を見て下がついてくるわけです。
意見を言う時は「お前やってねえじゃん」って言われないようにしてやってました。竜馬さんみたいなタイプのキャプテンを見ることができたのは僕にとってすごいプラスだと思います。
社会人で入った時は竹内譲次(アルバルク東京)さんがキャプテンだったんですよ。譲次さんは口では言わずに、プレーで引っ張るタイプでした。酒井泰滋(チームアンバサダー)さんもいたんですけど、泰滋さんは2人を足して2で割った感じのキャプテンでした。その3タイプを見れたのが僕に取ってプラスになったと思いますし、これからも生きていくのだと思います。
──最後になりますが選手やヘッドコーチが変わり、一概に比較することはできないかと思いますが、昨シーズンと今シーズンの違いはどんなところにあると思いますか?
今年はスローガンとして『Together』を挙げています。それをジェフ(勝久ジェフリー)さんはすごい大事にしていて、どんな時でもみんなでやろうといいます。ジェフさんはすごい真面目な方で、糞真面目なので(笑)、それが僕らに伝わるし、その熱量が良い方向にいってるのかなと思います。やっぱり昨シーズン以上に一体感があるところですね。