膠着状態を打ち破ったA東京の『秘策』
2月11日、アルバルク東京が川崎ブレイブサンダースと対戦。前日94失点を献上する大敗を喫した中、今日は開始直後から持ち味の激しいディフェンスを発揮し、相手の大エースであるニック・ファジーカスを10得点に抑えるなど、堅守復活によって86-54と圧勝。アリーナ立川立飛での最多記録となる3091人の観客の前で雪辱を果たした。
昨日の試合、A東京は第1クォーターで大量35失点と出だしで大きくつまづいてしまったのが最大の敗因だった。しかし、今日はルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチが「選手たちは昨日の大差で負けた試合からカムバックして、強い気持ちでハイレベルなプレーをしてくれました」と語るように、序盤から本来のディフェンスを披露。このクォーターを16-13で終える。
そして迎えた第2クォーター、引き続き僅差で推移する膠着状態が続くが、中盤になってA東京が仕掛ける。ポイントガードの故障という側面はあるが、田中大貴が司令塔役となり、菊地祥平、ザック・バランスキー、ジャワッド・ウィリアムス、ブレンダン・レーンというこれまでに見られないビッグラインアップを組んだ。
「基本的に、高さがありリーチの長いラインアップは強いディフェンスがやりやすいです。大貴は純粋なポイントガードではないですが、プレーメーカーのマインドを持ち、チームをリードできる力を持っている選手です。強く、激しいプレースタイルにフィットする布陣でした」
「練習でもやったことがなかった」勝負の布陣
このように指揮官が意図を語ってくれた策が見事にはまることで、A東京は流れを自分たちに一気に引き寄せ、37-24と突き放して前半を終える。第3クォーターに入ってもこの流れをキープするA東京は、後半開始早々にバランスキーが2本の3ポイントシュートを決めるなど、残り約6分でリードを21点にまで広げ、そのまま楽々と逃げ切った。
この日、14得点7リバウンドと勝利の立役者になったバランスキーは、チームに勢いをもたらすきっかけとなったビッグラインアップについて「練習でもやったことがなかったです」と言う。ただ、「お互いの好きなプレーなど癖は分かります。そして大貴もポイントガードの練習をしたりしていますし、チームの中で2番と3番、4番と5番でやることはそんなに変わらないのでやりにくさはなかったです。驚きはなく、このラインアップはでかくて良いんじゃないかと思ったくらいです」と、違和感なくスムーズにプレーできたと振り返った。
A東京と言えばリーグ屈指のタレント集団であるが、それは各々が高い個人能力に加え、状況判断にも優れているからこそ。バスケットボールIQ、組織力の高さをあらためて示したぶっつけ本番でのビッグライアップ成功だった。馬場雄大が復帰すれば、この布陣はより脅威のオプションとなるはずだ。
東地区強豪対決は一方的な展開での1勝1敗
一方、昨日とは真逆の完敗となった川崎の北卓也ヘッドコーチは、「ディフェンスのプレッシャーに対して、オフェンスが停滞してしまいました。オフェンスがあまり良くなくて、そうするとディフェンスにも影響してしまう」と、攻撃がうまく行かない時に守備で我慢しきれなかったことを敗因に挙げる。
今日のような展開の時、ベンチメンバーによるセカンドユニットが思い切りの良いプレーで流れを変えられるか、どうかが反撃できるかの分かれ目となったりするもの。しかし、この日の川崎は、北ヘッドコーチが次のように語ったように消極的なプレーが目立ったのも痛かった。
「控えはこういう状況になった時、いかに強気でいけるか。タフショットではない、チームでノーマークを作ったシュートを逃げないで打つことを求めていきたいです。シュートが入る入らないではなく、しっかり打てるかどうかが強さであり、チームのためになる。そういうところをもっと徹底させてチームの底上げをしていきたいです」
昨日は川崎が29点差、本日はA東京が32点差で勝利と、一方的な展開での1勝1敗となった東地区のライバル対決。あらためて両チームは実力伯仲であることが分かった2日間となった。