課題だった『接戦を勝ち切る強さ』を得た2連勝
シーホース三河はここまで26勝8敗。リーグ全体トップのアルバルク東京(27勝7敗)を1差で追っているのだから好調ではある。ただ、チームには手応えではなく危機感があった。
前年王者である栃木ブレックスとの開幕シリーズを1勝1敗で終えた後、15連勝を記録したものの、その8つの対戦相手に優勝候補と呼ばれるチームはなかった。12月に入るとA東京、川崎に1勝1敗。その後も中堅クラブに1勝1敗と連戦を勝ち切れない。三河にとって先週末の栃木戦は、今シーズン初めてと言ってもいい『会心の2連勝』だった。
今シーズンの栃木は苦しんでいるが、そうは言っても昨シーズンのチャンピオンシップ準決勝で三河を敗り、優勝したチーム。その栃木に2試合とも接戦になりながら勝ち切った。金丸晃輔はこれに大きな手応えを感じていた。
「前半に良いスタートが切れて、このまま行くとは正直思っていなかったんですけど、案の定、第3クォーターにすごく追い上げてきて。そこで集中力を切らさずに僕たちのバスケットをして粘ることができたのはすごく良かったです。最終的にはしっかりやって勝てたので、非常に収穫のあるゲームでした」
ここで言う『収穫』とは接戦を勝ちきる強さのことだ。「ここ数試合は接戦を落とすのが結構ありました。それは集中力が切れたとか粘りができなかったとか。今日はその点を克服できました」と金丸は言う。「戦術もそうですけど、それ以外のことをしっかりやるかやらないかで、接戦の勝敗にかかわってきます。その点は持続していかないといけないです」
大爆発した第1戦を終え「明日はこうは行かない」
土曜の第1戦ではシーズンハイの32得点をマークして勝利の立役者となった。試合後の取材対応では「久々に点を取ったなあ」と笑っていたが、その後には「明日はこうは行かない」と第2戦に向けて気を引き締めていた。
「昨日あれだけできたからって今日も30点取れるとは全く思ってなかったし、逆に昨日の時点で『明日は来るだろうな』とは思ってました」と金丸は言う。事実、第2戦で栃木はスタメンを変更し、セドリック・ボーズマンをマークに付けることで金丸の爆発力を止めにきた。
ただ、ここからが金丸の、そして昨日の三河の真骨頂である。「予想はしていました。そこで昨日の感覚でやるとチームに迷惑がかかります。相手がそこに絞ってくれると周りが空くので、今日はそういう展開にしました」
つまり栃木の対策を逆手に取り、金丸は相手の注意を引き付ける役に回ったのだ。第1クォーター、橋本竜馬やダニエル・オルトンがうまくオープンになり、彼らが3ポイントシュートを高確率で決めて大量28得点を奪った。「僕と比江島(慎)だけじゃないことを今日は証明できました。みんな得点能力はあります。チームでやっている以上、ボールをシェアしないといけない。今日はこの人、また別の日はあの人、という感じで点が取れたほうが良いです」
「我慢して我慢して来た1本をしっかり打つ」
第2戦の金丸は12得点と、15.3得点という自身の平均を下回ったが、大爆発した第1戦にも劣らない充実感とともに試合を終えている。12得点の中には「これぞ金丸」という一撃もあった。第4クォーター残り4分半、桜木とのコンビネーションで作った一瞬の隙を見逃さずに決めた3ポイントシュートだ。
このシーンを金丸は満足気に振り返る。「ずっとボールを触ることもできずマークされて、あそこで無理に行くとやっぱりダメなんです。チームとしてのバランスも崩れます。あそこで我慢して我慢して来た1本をしっかり打つことが大事です」
32得点という分かりやすいスタッツを残したゲーム1はもちろん、ゲーム2でも我慢に我慢を重ね、自己犠牲を払いながらチームバスケットを機能させた。金丸の得点能力とバスケIQ、そして勝利への執念はこのリーグでトップクラスだ。今日発表された日本代表候補18名に金丸は入っていないが、日本代表のスコアラーとして、これほど頼りになる男はいない。